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温泉ツーリング同好会へようこそ  作者: 秋山如雪
第7章 赤富士の湯と下部温泉
28/41

28湯目 富士川沿いの快走路

 20分くらいで、足湯から上がった私たち。


 続いて、宣言したまどか先輩が先導して、本格的な「ツーリング」らしいことをやることになった。


 その道とは。


(気持ちいい!)

 

 下部温泉から一旦、国道300号に戻り、富士川の橋を渡る手前で左折。

 その後は、ひたすら真っ直ぐ伸びる道。


 山梨県道9号。


 まどか先輩によれば、県道とはいえ、道幅が広く、整備もされている上に、川向うにある国道52号よりも交通量が少ないから、走りやすい快適な道だという話だった。


 まさにその通りで、県道ということもあり、国道より交通量は少ないし、信号機も少ない。適度なアップダウンはあるが、国道300号のような極端な急カーブもない。


 まさに「バイクにとってもっとも走りやすい」快適な道だった。


 道は片側1車線だが、日曜日とは思えないくらい、交通量が少ないため、スピードが出せるし、何よりもバイクにとって、ストップアンドゴーを繰り返す必要がない道は、快適なのだった。


 そのまましばらく県道9号が続く。


 ところが、身延駅を越えた辺りから、いつの間にか道の名前が「県道10号」に変わっていた。


 私たちは、誰もインカムを持っていないため、どこに行くのかもわからないまま、先頭を走るまどか先輩に着いて行くことになる。


 まどか先輩、フィオ、私、琴葉先輩の順に連なり、この快適な道を走り続ける。


 道の両脇には、民家があり、あるいは田畑、山林などもあったが、たまに右手に顔を見せる富士川の流れが、陽光に照らされてキラキラと輝き、とても美しく思えた。


 また、真夏の時期に比べて、今の時期は、そこまで暑くもなく、ライダースジャケットも着れるし、バイクで走る分には、いかにも「爽快」な道だった。


 やがて、30分近く走っただろうか。


 まどか先輩のSR400は、県道10号をそのまま走って、富士川に架かる橋を渡り、今度は国道52号に合流して右折。


 つまり、今度も富士川を右側に見ながら北上するコースに入った。


 もっとも、この国道52号は、元々トラックが多い。つまり、遅い車に巻き込まれて、その上、追い越し禁止区間だから、快適さとは程遠い道だった。


 しばらく行くと、彼女は道端の道の駅に入って、バイクを停めた。


 道の駅とみざわという場所で、不思議なことに、「竹の子」のような、丸い尖塔が建っているのが特徴的だった。


 ここで、私たちは、ツーリングをするライダーの定番の行動を取ることになる。

 ソフトクリームだ。


 まどか先輩が言い出しっぺで、もちろん誰も反対はしなかったが。


 炎天下の夏に食べるアイスも美味しいが、今の少し涼しくなった秋の時期に食べるアイスクリームも美味しいものだった。


 その真っ白なソフトクリームを舐めながら、

「まどか先輩。今の道はすごく良かったです」


「だろ? 知る人ぞ知る、山梨県の穴場ツーリングコースだ」

 得意気に笑みを見せるまどか先輩に、琴葉先輩は、


「何が、()()()()()()、よ。山梨県民ならみんな知ってるわ」

 と、いつも通り辛辣だったが。


「でも、いいネ! 次は、県外に行こうヨ!」

 フィオは、もう次のことを考えて乗り気だった。


「そうだなあ」

 考え込んだまどか先輩。


 同好会の会長でもある彼女は、部員、いや会員を楽しませるのが目的の一つでもあるようだったから、なんだかんだで彼女が発案者になることが多かった。


「よし」

 小さく頷く様子を見ると、彼女は何か思いついたのだろう。


「次は長野県に行くか」

「長野県? いいですね。どこの温泉に行くんですか?」

 私としても、行き先は気になるし、色々な温泉に行けるのも、色々なツーリングコースに行けるのも楽しみになってきていた。


「それは秘密だが」

 含み笑いを浮かべながら、まどか先輩はフィオを見た。


「フィオ。お前が喜びそうなところ、とだけ言っておこう」

「えっ? ワタシが喜びそう?」


「ああ。きっと気に入るぞ」

「うーん。どこだろ? でも、どこでもいいヨ!」

 次は、どんな目的地を選び、どんな温泉に連れて行ってくれるのだろうか。


 私の中で、「温泉ツーリング同好会」の存在意義が大きくなり、同時に「ツーリング」自体に楽しみを見出せるようになってきていた。


 季節は、秋本番に向けて動き出す。


 そして、次の目的地もまた、「意外な」場所だったのだ。

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