アサルト//データサーバー
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──アサルト//データサーバー
『本部より全部隊へ。現在、ハンター・インターナショナルの部隊がビルに急行中。それまで現状を維持せよ』
『テキサス・ゼロ・ワンより本部! 了解した!』
ALESSの無線が飛び交う。
『東雲。セクター9/1に停泊中のイギリス海軍空母アーク・ロイヤルからハンター・インターナショナル・ネイバル・システムズの陸戦部隊が輸送機で向かってきてる。元特殊舟艇部隊の生体機械化兵』
「クソ。次から次に」
『それから無人攻撃ヘリの空母からの離陸も確認してる。全部ぶっ飛ばすつもりなのかもしれないね』
「あーあ。やってられねえ」
東雲がぼやきながら前方のアーマードスーツ4体を睨みつける。
「俺が突っ込んでアーマードスーツを無力化する。後はそっちも突っ込んで残りの連中を始末してくれ」
「分かった、東雲」
東雲が言うのに八重野が頷く。
『全機、統制射撃を実施』
『了解。リンク接続コンプリート』
そして、東雲に対して4体のアーマードスーツが一斉に射撃する。
40ミリ電磁機関砲、空中炸裂型グレネード弾、70ミリフレシェット弾。
フロアの廊下に殺戮と破壊の嵐が吹き抜け、辺り一面を破壊する。
『やったか?』
『いや、まだだ! 突っ込んでくるぞ!』
東雲は左腕と右足と両脇腹を肉片に変えられたが瞬時に身体能力強化でそれらを回復させ、アーマードスーツに襲い掛かった。
「くたばれ、おらっ!」
『近接防御兵器使用。周辺の部隊は警戒せよ』
東雲がアーマードスーツに肉薄したときドイツ製の地雷であるS-マインに似た構造の爆発物がアーマードスーツから射出され、周囲に殺意に満ちた鉄球をぶちまけた。
「やってくれたな! このクソ野郎! お返しだ!」
東雲が叫びながら“月光”の刃を同時に4体のアーマードスーツに突き立てる。
4体のアーマードスーツが制御系と搭乗者を撃破されて機能不全に陥り、そのままフロアの床に高圧電流の火花を散らしながら崩れ落ちる。
「今だ! 突っ込め、八重野、呉!」
「おう!」
東雲が開いた突破口から呉と八重野が後方のALESSの警備チームに襲い掛かった。
「畜生! 撃て、撃て──」
八重野と呉は超電磁抜刀でALESSのコントラクターを強化外骨格ごと切り裂き、そのまま瞬く間に撃滅した。
『テキサス・ゼロ・ワンより本部! オフィスの外で戦闘が起きている! これでも要人を脱出させるのか!?』
『本部よりテキサス・ゼロ・ワン。ヘリは屋上で待機している。直ちに行え。増援の到着予定時刻は0012』
『クソッタレ。マジかよ』
廊下に面しているオフィスのドアから無人地上車両が出てくる。バックパックで運べるサイズで5.56ミリ機関銃が装備された小型のボットだ。
今回の目的は攻撃ではなく、偵察。オフィスに立て籠もるALESSの警備チームがオフィスの外の様子を機能停止したアトランティス・ユナイテッド・タワーの監視システムの代わりに把握しようとしたのだ。
「敵のボットだ。見られたぞ」
「知ったことか。乗り込むぞ。俺が突破する」
東雲はボットに“月光”を投射して破壊するとオフィスの扉の前に立った。オフィスの入り口は軍艦にある隔壁のように固い扉によって守られており、各種スキャナーが設置されている。
「行くぞ」
扉はボットを展開させたために半開きになっており、東雲はそれを身体能力強化を使って思いっきり蹴り開ける。
「撃て! 撃て! 集中射撃! 叩きのめせ!」
「敵を要人に近づかせるな!」
銃弾とグレネード弾の暴力と殺意の嵐が吹き荒れ、清潔でシステマチックなオフィスが滅茶苦茶に破壊されていく。
「そうそう何度もミンチにされてたまるか! てめえらがひき肉ハンバーグになっちまえよ! おろし醤油かけてやるからな!」
東雲は残酷な笑みを浮かべて“月光”を回転させながら投射し、ALESSの警備チームを撃破していく。AELSSの警備チームはスタングレネードまで使って抵抗するが、抵抗も虚しく制圧されるまでは5分程度だった。
「よし。制圧した。八重野、呉。支部長は奥に隠れている。叩き切って終わりだ」
「ああ」
八重野が本物のマホガニーのオフィスデスクが並ぶ重役用のオフィスの奥に踏み入る。支部長はオフィスデスクの下に隠れていた。
支部長は50代ほどのアジア系の男だ。
「た、助けてくれ! 金なら渡す!」
「金に用はない」
八重野はそう言って支部長の首を刎ね飛ばした。
「仕事はこれでひとつ完了。よくできました、と」
『東雲。支部長は死んだ?』
「死んだよ」
『頼みたいことがあるんだけど。大丈夫?』
「おい。ハンター・インターナショナルの陸戦部隊がビルに飛んできてて、ヤバい状況なんだろ? それでも追加のお使いかよ」
『いいから。君だってヘレナがどこに連れていかれたのか気になるでしょ? 暁も殺されたんだし』
「そりゃそうだけど。分かるのか?」
『アトランティス・ユナイテッド・タワーにあるデータサーバーにはアトランティス系列企業の日本における活動が記録してある。そして、ヘレナを拉致したのはグローバル・インテリジェンス・サービス』
「記録されているのか?」
『可能性としてはね。それで支部長の死体だけどBCIポートを近くのサイバーデッキに繋げてくれる? 調べたいことがあるから』
「また死体を繋ぐのかよ。どういう神経しているんだ」
『早くして。急がないと本当にハンター・インターナショナルの増援にぶつかるよ』
「はいはい」
ベリアとの連絡を切って、東雲は支部長の八重野によって刎ね飛ばされた首を抱えて、BCIポートを確認する。
「何をしているんだ、東雲?」
「ベリアが調べたいことがあるから支部長をBCI接続しろとさ」
「ふむ。何かあるのだろうか?」
「データサーバーにグローバル・インテリジェンス・サービスが活動した記録があるかもしれないらしい」
東雲は八重野にそう言って支部長の死体を近くにあったサイバーデッキに繋いだ。首は刎ね飛ばされていたが、BCIポートは無傷。
「ベリア。繋いだぞ」
『よしよし。やっぱりね。データサーバーの完全アクセス権限解除の暗号キー。どうして支部長がまだ残っているのか不思議だったんだよね』
「脳埋め込み式デバイスか?」
『そう。これがあればデータサーバーに自由にアクセスできるけど今データサーバーは社内ネットワーク限定になっている。マトリクスに接続されていない』
「やるべきことは?」
『データサーバーをケーブルでマトリクスに繋いで。そして情報を抜き取ってから仕事の依頼通りぶち壊してくれていいよ』
「あいよ」
東雲が八重野とともにオフィスを出る。
「セイレム。そっちはどうだ?」
「ああ? ボスのピンチに急いでやって来たスイス人の傭兵連中を怒れる国民衛兵よろしくぶち殺してやったところだ」
「じゃあ、ビルに瀕死のライオン像でも作ってやらねーとな」
セイレムの周りには惨殺されたALESSのコントラクターの死体が転がっている。
「データサーバーに向かおうぜ。まだ仕事は残ってる」
「そうだな。殺し足りない」
セイレムはそう言って非常階段を東雲の後ろから登り始めた。
次の目標であるデータサーバーはアトランティス・ユナイテッド・タワーの110階。すぐそこだ。
東雲たちは階段を駆け上り、ALESSの抵抗も少なく110階に到達した。
『東雲。ハンター・インターナショナルの陸戦部隊と無人攻撃ヘリが急速に接近中。どうして大井統合安全保障は飛行許可を出しちゃったかなー』
「愚痴りたいのは俺の方だよ、ロスヴィータ。どれくらいで連中は来る?」
『到着予定時刻は0010。残り5分』
「クソッタレ」
東雲たちはデータサーバーを目指して110階を進む。
「下の連中を皆殺しにした連中が来たぞ!」
「どうして無人警備システムが作動しない! 俺たちだけじゃ阻止できないだろ!」
「戦うしかない」
ALESSのコントラクターたちは東雲たちを銃撃するもかなりの数のコントラクターを失っており、抵抗は軽微なものであった。アーマードスーツもなく、銃火器を使用するも東雲たちに叩きのめされた。
「制圧! データサーバーはこっちだ」
東雲はまたしても軍艦の隔壁のような扉に守られた部屋の前に立つ。
「呉。頼めるか?」
「ああ」
呉が超電磁抜刀で扉を切り裂き、こじ開ける。
「追加の仕事だ。データサーバーをマトリクスに繋ぐ。ケーブルは?」
「これだ。そこの端子に差し込んでこっちに繋げばいい」
「楽な仕事って言っていいのかね」
東雲はデータサーバーにケーブルを接続した。
データサーバーがマトリクス上でオンラインになる。
「ベリア。繋いだぞ。壊していいか?」
『待って。今から情報をダウンロードするから。5、6分で終わるよ』
「おいおい。ハンター・インターナショナルの陸戦部隊が突っ込んでくるぞ」
『どうにかして。多分、どうにかなるから』
「お前、ジェーン・ドウに似てきてるぞ」
『失礼だね』
ベリアが不満そうな顔をする。
『東雲。ハンター・インターナショナルの陸戦部隊が到着。無人攻撃ヘリが周囲を飛行している。迂闊に窓から顔を出さないでね』
「ついに来やがった」
東雲が呻く。
『ネプチューン・ゼロ・ワンより本部。これよりアトランティス・ユナイテッド・タワーに突入する。直近のビル内の情報を送られたし』
『本部よりネプチューン・ゼロ・ワン。現在ビル内の監視ネットワークがダウンしている。敵によるハッキングと思われる。直近の情報では110階で戦闘があったとのこと』
『ネプチューン・ゼロ・ワン、了解。110階に突入する』
ガラスの割れる音がデータサーバー室にまで聞こえてきた。
「来やがったぞ。ここで迎え撃つか?」
「いや。ここじゃ不利だ。室内に爆弾を大量にぶち込まれたらデータサーバーごとミンチにされるぞ。別の場所で迎え撃とう」
「了解」
東雲たちは呉の選んだオフィスのひとつでハンター・インターナショナルの陸戦部隊を迎え撃つことにした。
『東雲。ハンター・インターナショナルの陸戦部隊の正体が判明。ハンター・インターナショナル・ネイバル・システムズのネプチューン海兵作戦群。メティスの特殊執行部隊並みの機械化率』
「嫌になってくる」
『ガウェイン・アーマード・ボディを装備。ヘカトンケイル・コンバット・システムほどの変態さはないけれど、結構厄介な代物だよ。気を付けて』
「はいはい」
東雲たちはベリアたちが掌握してるアトランティス・ユナイテッド・タワー内の監視ネットワークを使って敵であるネプチューン作戦群の姿を確認する。
「敵は全部で10名。その全員が馬鹿デカい電磁ライフルで武装し、たくさん爆薬と銃弾を持ってきていると来た」
「楽しくなってきたな?」
「全然」
セイレムがにやりと笑うのに東雲はげっそりした。
『ネプチューン・ゼロ・ワンより各員。目標を捕捉。射撃開始』
そして、剣呑な命令が下された。
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