27 圧倒
強風が吹き荒れ、木々から葉や枝をもぎ取り、舞い上がっては地面へと叩きつける。横殴りの雨から逃げる様に、玄関へ駆け込もうとしたルネは、いきなり後ろから肩を掴まれた。肩越しにゾクリとした寒気が、伝わってくるようだった。嫌な予感がして振り返れば、モーリスが笑顔でルネを見つめていた。
全てを見透かすような青い瞳に見つめられると、縫い留められたように動けなくなってしまう。そこへダンが割って入り、モーリスから守るように、ルネに背中を向けた。
「どういうこと?この男は何なの?」
ルネを諫めるように話しかけるモーリスに代わって、ダンが返事をする。
「俺はダン、辺境の万事屋だ。フェヴァン伯爵家モーリス様ともあろう御方が、先触れも無しに何の御用で?」
「…へぇ、ただの御用聞きじゃなさそうだ。…ルネとの距離が近すぎる…気に食わないな」
モーリスが右手を天に向けると、辺りに舞っていた木の葉や枝が、吸い込まれていく。掌へと一気に大気が集まり、黒い球体が浮かびながら、不規則に回転している。そうする間も周りを取り込み、どんどん大きくなっていく。
バリバリと音がして、更に風が強くなる。ルネは立っている事もままならず、その場にしゃがみ込んだ。以前とは様子が変わってしまった、モーリスに向かって懇願する。
「お願い、止めて…」
「ルネ以外は、いらないから消えろ」
「ダン、逃げてーー!」
人の背丈ほどに膨れ上がった黒い渦を、ダン目掛けて投げつけた。唸るような低い音を纏い、螺旋状にダンを包み込んだ。
「いやぁぁぁぁぁぁ」
ダンに駆け寄ろうとしたルネの、手首を掴んでモーリスが引き寄せる。
真っ黒に濁った気の塊は、ゴゴゴゴと地響きがして大地を揺るがしていた。
次回も、また見て欲しいです!




