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25 暗雲

いつも、ありがとうございます。

大きな音を立て、部屋の扉が開く。フォセットの元へと足早に近づいてきたのは、モーリスだった。遂にこの時が来たのかと、多幸感を胸にモーリスを笑顔で迎え入れた。



モーリスが目の前へ来た途端、パンッと破裂音が聞こえ、左頬に衝撃が走る。気づけば床に倒れていて、頭上にあるモーリスの顔を見ていた。彼の表情は普段の優しいものでなく、憤怒しているのが見て取れた。そこで自分が今、モーリスに叩かれ倒れたのだと気付いた。




「…お兄様……?」




「やめてくれ、もう兄ではない。お前のした事で、フェヴァン伯爵家の信用は地に落ちる寸前だ。責任を取って、西の離島にある修道院で、生涯暮らしてもらう」



縋るように見つめても、鰾膠も無く睨みつけられ、そんな言葉を吐きかけられる。初めて向けられた鋭い視線に、身体が震えた。



「お兄様、なっ何を仰っているのです…?西の離島といえば、国で一番厳格な修道院として有名な場所ですわ。そこで過ごすですって?お兄様と私は、フェヴァン伯爵家を継ぐ者。いい加減、夫婦となる運命を受け入れて下さいまし」



フォセットが全てを話し終えるや否や、モーリスの身体から黒い靄が幾筋も伸び出る。まるで触手のように蠢きながら、フォセット目掛けて発射され、瞬時に吸い込まれ消えていった。ガクンと力が抜け、糸の切れた操り人形のように、フォセットは崩れ落ちた。



モーリスは一瞥もせず、踵を返し部屋を後にした。



「絶対しては、ならない事を…。お前は、もういらない」





数日後、フォセットはフェヴァン伯爵家から籍を外され、船に乗っていた。彼女の付添人や船乗りが話しかけても表情一つ変えず、遠くの空をぼんやりと眺めているだけだった。そうかと思えば、いきなりブツブツと、何かを呟き怯える。その様子を見た者は、まるで廃人だったと口々に語っていたという。







時を同じくして、ヴェルレーヌ領の上空に雲が厚く立ち込めてだしていた。昼間にも関わらず、赤黒い色の禍々しい空を、辺境の人々は不安な様子で見上げていた。





また見て下さい!

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