23 手紙
投稿遅れました。
楽しんで頂けたら幸いです。
「っ、レーヌ様、何があったんだ」
慌てた様子のダンが、ルネの居る研究室へ駈け込んで来た。ルネは頬杖をついていた手を片方だけ軽く上げた。
「ごめんなさいね、これを一緒に見て貰いたくて」
机の上にある、一通の封書に視線を落とす。
「手紙…か、送り主は…?」
「王都のラシュレー様よ。一度、治療にいらっしゃった、覚えてないかしら?」
腕を組み、フンと鼻を鳴らしたダンは、僅かに怒気を帯びた声をあげた。
「あの非常識な、お貴族様か」
きちんと覚えていたが、あまり良い印象ではないようだ。ルネ自身も、自分に毒を盛ったのがジャクリーヌだと考えられる為、全てを信用しているとは言い難い。ただ、彼女も幼い頃から病を患っており、じわじわと時間を掛けて心をも蝕まれてしまったのだろう。そう思うと、胸が痛む。
「きっと病気の苦しさのあまり、あのような行動を取られただけよ。…手紙を読むから聞いていてね」
「…あぁ、分かった」
渋々といった様子で、ダンが頷いた。
◇◇◇
レーヌ・レヴェイヨン様
あれから病気が再発する事なく、普通の生活が出来ているのは、貴女と辺境の方たちの力添えがあったからだと感謝しているわ。
さて早速だけど、貴女に知らせたい事があるの。フェヴァン伯爵家は、ご存じでしょう?訳あって、伯爵家のモーリス様とフォセット様と親しくさせて頂いているわ。そんな私が言うのも何だけど、二人には気を付けて欲しいの。
モーリス様が少し前に辺境から戻って来て、頗るご機嫌だったのが一転、荒れに荒れてしまって。その原因がヴェルレーヌ領にあるとして、フォセット様が大層お怒りのようだわ。
フォセット様はモーリス様に執着している、これは間違いない事実。以前、仕事でモーリス様と話す機会があった時、彼女から嫉妬の目を向けられたのよ。そのすぐ後にモーリス様を見た時の蕩ける視線、あれは家族愛なんかじゃない、間違いなく一人の男性として見ていたと思う、私には分かるわ。
フォセット様はモーリス様の事になると、箍が外れてしまうから。モーリス様に害を為す者と認識されたら、何をされるか分からないわ。
だから、気を付けて頂戴ね。
今年の夏、そちらに遊びに行くつもりだから、その時は案内して欲しいもの。だから約束よ?
その時を楽しみにしているわ。
ジャクリーヌ・ラシュレー
◇◇◇
手紙を読み終えると、ダンと頷き合った。急いで邸宅周辺の警備を強化しなければ。
次回も見て頂けると嬉しいです。




