22 友人
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ダンと共にヴェルレーヌ領へと戻ったルネは、急いで今後の対策について思案した。いつ何時、モーリスがやって来てもおかしくない。だからこそ、一人で行動しないように必ず誰かと一緒に居るようにして、外出も控えた。けれど予想に反して、拍子抜けするほど穏やかな日々が続いた。
そんな中、今しばらくの間は警戒を怠らないようにと、釘を刺したのはダンだった。
「あんな事を計画する奴が、簡単に諦める訳ない」
そう力説して、至る所に魔法具の罠を仕掛けた。この魔法具が優れ物で、モーリスの魔力だけ感知して発動するという。どうしてこんな代物をダンが持っているのか、不思議に思い問いただしてみれば、
「俺にとってレーヌ様が大事な人だからだ」
と照れた様子もなく言ってのける。言われたルネは、不意打ちを食らったようで、たまったものではなかった。耳の先まで熱くなっているルネは、恐らく顔中が真っ赤に違いない。ダンはフードに隠れて見えないというのに、自分の恥ずかしい表情を見られているかと思うと、居た堪れない気分になった。
「ありがとう、ダン」
伏し目がちに、そう言えば、ダンの大きな手がルネの髪を優しく梳いた。
「守るから、命に代えても」
僅かに見える唇から、安らぐ声が甘く響いた。
「全てが落ち着いたら」
ルネが唐突に口を開けば、ダンが手を止めた。
「ダンの気持ちを受け入れたいの。でもその前に、伝えなければならない事があるわ。…それでもダンの気持ちが変わらないなら、私と共に生きてくれないかしら?」
「…何があっても、俺の気持ちは変わらない」
ルネの手を取り、握り締めるダンは少し震えているようだった。空いている手を上に重ねて、頷いた。
「えぇ、きっとそうね。けれど、もし気持ちに変化があっても、ダンを責めたりはしないわ。ただ、そうなった後も、友人として仲良くして欲しいかしら。依頼も、お願いしたいもの」
「…分かった。覚えておく」
ルネはチクリと痛む心に気付かないように、微笑んで見せた。
生命力溢れる大地に春の日差しが優しく降り注ぎ、芽吹き始める頃、辺境の地は活気に満ちていた。仕込んでおいた堆肥を使い、畑を耕し作物を植える作業に追われていた。
そんな慌ただしさの中、レーヌ宛に手紙が届く。送り主はジャクリーヌだった。
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