20 強要
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「丸二日も寝ていたんだ、お腹が空いているだろう?今、持ってくるから、待っていて」
モーリスは、ゆっくりとルネの頬を撫で、そのまま手を握ると口づけを一つ落とした。そして彼に誘導されるまま、窓際のテーブルへと着いた。大人しく従うルネを見ると、満足そうな笑みを浮かべて、モーリスは部屋を出ていった。
自分の意思と反して、何一つ抵抗出来なかった事に改めて驚く。恐らくモーリスの持つ、魔法属性によるものだろうが、どんな効果なのか見当もつかない。辺境で過ごした時に見た彼の魔法は、光属性を帯びていた。暗闇を照らしたり、傷や病気の痛みを和らげるといった、とても温かみのあるものだったはずなのに。
「お待たせ、ルネ」
モーリスは皿を並べた大きな盆を手に持ち、ルネの隣の席に座る。ベーコンの入ったミルクベースのスープ、柔らかな白パンとバター、ドライフルーツの入ったヨーグルトまであった。
「まずはスープからかな、はい」
スプーンで一匙掬うと、ルネの口の前に差し出す。
「…えぇと、自分で食べられます」
「これは私の役目だから、いくらルネでも譲る訳には、いかないな。さぁ、あーん」
気が付けば、モーリスに勧められるまま食事を終えていた。
「ここには私しか入れないから、ずっと二人きりで居られる。…約束した結婚の話を進めよう?一日でも早い方がいいんだけど、ルネはどうかな」
「やくそく…」
「したよね、大きくなったらお嫁さんにって求婚した時、ありがとうって言ってくれた…それを糧に、今日まで生きてきたんだ」
静かに立ち上がり、座っているルネを後ろから、腕の中に閉じ込める。
「今更違うなんて言わない…で?もしそうだとしても、諦めるなんて無理な相談だよ」
そう耳元で囁かれれば、吐息がかかり身悶える。
「二人の結婚を受け入れて?そうしたら、自由にしてあげる。決心が付くまで、此処でゆっくり過ごすといい。全ては、ルネ次第だよ」
それから何日も、モーリスは食事の度に自ら運んできて、手ずから食べさせた。流石に湯浴みは、準備だけ整えただけだったが、寝る時も寝台の横で椅子に座り、ルネが寝るまで見守っていた。
「早く『はい』と言えば、楽になれるのに」
と耳元で囁きながら。
ルネが閉じ込められてから二週間ほど経ったある日、眠りの浅くなっていたルネが夜更け頃に目を覚ました。
突然、ガタリと窓が音を立てる。その後はスゥと窓が開き、暗闇の中を人影が過った。
宜しければ次回もご覧ください。




