16 庇護
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ダニエルは今日も、ルネを質問攻めにする。
ルネは薬やハーブティーの調合を、ある程度の精密さで開示した。そもそもルネが創り出す薬が高い効能を持っているのは、代々受け継がれたレシピに加え、豊かな辺境で育った素材で作られている事が大きな理由だ。痩せた土地での収穫物や、誤った方法で下処理された材料では同じ物は作れない。
それでも、ある程度の結果は望めるし、各地で新しく改良されるかもしれない。これを切っ掛けに、苦しむ人が少しでも減ればいい、そう思っての事だった。
こうして、みっちり三日間の視察が幕を閉じようとしていた。漸く解放される、と心躍っていたルネにダニエルが微笑み掛ける。
「レーヌ嬢、ここでの最後の食事を、ご一緒しては頂けないだろうか?」
(断れないのを知っているくせに、尋ねてくるなんて…本当に酷い人)
「えぇ、是非ご一緒させて下さいませ」
「良かった、楽しみにしている」
ダニエルとルネは、テーブルに向かい合わせで席に着く。用意された料理は、皮がカリっと香ばしいチキンの香草焼きをメインにジャガイモのポタージュ、胡桃の入ったパンとバター、デザートにはシロップ漬けの洋梨が載ったタルトも用意されていた。
ダニエルは料理が気に入ったようで、舌鼓を打ちながら全ての料理を平らげた。
「ここで食べた食事は、どれもとても素晴らしい物だった。味は勿論、こちらの薬と同様に有益な効果を与えてくれる事をレーヌ嬢は、ご存じだろうか?この数日で私は、魔力の総量が若干増えた。あと半年足らずで19歳になる、既に成人した人間の魔力量が増えるなんて、本来あり得ない。これまでの常識が覆る、とても凄い事なんだと理解しておいた方がいい。噂が広まれば、独占しようとする輩が出て来るに違いない」
「えぇ、存じ上げております。辺境で収穫したものを、丁寧に調理した、ここでしか提供出来ない物です。辺境伯領ですから、余程の事が無い限り、圧力には屈さずに対応できると思います」
こめかみに指を添えながら、ダニエルは「うーん」と小さく唸る。
「国として庇護するのは、どうだろうか。あぁ、心配は無用だ。何か不測の事態が起これば護衛はするが、日々の管理や経営に口を出すつもりは無い。ただ、今回の流行り病の様に、必要な薬を依頼した場合、迅速に用立ててくれれば、それでいい。どうだろうか…?」
「願ってもない、ご提案に感謝致します」
フッと安心したように微笑むと、ダニエルは更に続けた。
「そうか、では王都に戻り次第、正式な書面を作成し、写しをこちらにも送らせて頂く」
ダニエルと極力視線を合わせないように、深々と礼をする。
来た時と同じように、白い光を振り撒きながら、ダニエルは王都に向けて一直線に消えて行った。
ルネは光の先を見つめ、深く長いため息を一つ吐いた。
良かったら次回もご覧ください。




