13 再会
1話前の【12 強盗】を途中で投稿してしまいました。
最後の方に話が追加されています。ご注意下さい。
「君は…いや、…そん、な…はず、……すまない。…私はエルランジェ公爵家ダニエル、今回ジョルダン王国を代表して視察に参った。…案内は貴女が?」
どうにかやり過ごせたようだが、疑念が生じていると見て取れる。少しでもおかしな挙動をすれば、怪しまれてしまうに違いない。ここは堂々と振る舞った方が、疑いも晴れるというもの。意を決して、ルネは笑顔を作る。
「…申し訳ありません、ご挨拶が遅れました。ヴェルレーヌ伯爵より命を受け、現在こちらの運営を任されておりますレーヌ・レヴェイヨンでござます。エルランジェ様のご案内も私が務めさせて頂きます」
「…レーヌ嬢…と呼んでも?」
「お心のままに、お呼び下さいませ」
湧き上がる感情を押し殺し、ルネはダニエルへ微笑みを向ける。すると彼は少し照れたように右手で口元を隠し、頬を朱に染める。
「レーヌ嬢は、誰かに似ていると言われた事は無いだろうか?」
ここで否定するのは得策ではない、あえてその話に乗る事にした。
「…えぇ、お嬢様が甦ったようだ…と伯爵ご夫妻が仰られて…。このように管理をさせて頂けているのも、そのお陰もあるのかと思います」
「…なるほど、私もルネが生きていたのかと驚いたよ。私とルネは政略的な婚約者ではあったが、幸いとても想い合っていた……。だからこそ今回、この任務を私が買って出たんだ。彼女の愛した場所を、この目で確かめたくて…な」
ダニエルはルネから視線を逸らさず、眉尻を少し下げて微笑んだ。これまで見た事もない表情に、あぁ、こんな優しい顔も出来るのだと、心の奥がチクリとした。しかも仲が良かったなどと、嘘まで吐いていた。恐らく、人の目を気にしての事だろうが、どれだけルネの気持ちを、掻き乱せば気が済むのだろう。様々な感情にルネの心は、ぐちゃぐちゃになっていく。
「お寒いでしょう、お部屋までご案内いたしますわ。どうぞこちらへ」
「あぁ、そうしよう」
一人になるまでは泣いてはいけない、ルネは客室まで足早に歩を進めて行った。
投稿間隔が開く予感です。




