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12 強盗

いつもご覧頂き、ありがとうございます。

未完成のアップしてたので、修正しました。2022年3月7日)

「皆は…無事なの?怪我した人は…?」



血の気が引き青ざめた表情で、ルネが尋ねれば、ユーグが慌てて右手を振る。



「あぁ、すままねぇ。誤解させちまったか。既に、ふん縛ってあるから、心配はいらねえぜ。賊は三人、どいつも痩せこけてヒョロヒョロでな、勝負にもならんかった」




「そう…良かった…」



気が抜けて、椅子に座り込んだルネに、ユーグは続ける。



「どうやら隣領の集落から来たようだが、食い物が底を尽いちまったんだとよ。ほとほと困った時にヴェルレーヌ領の評判が思い浮かんで、餓死する位ならと命がけで盗みに来たようだ。偶々ダンの奴が見つけてくれたお陰で、大事には至らんかった。アイツめっぽう強くてなぁ。それだけじゃない、レーヌ様の美味い飯で、俺らも力付けてたからな」



「まぁ、それではダンにお礼をしなくてはね」



ガシガシと頭をかきながら、ユーグは困ったような顔をする。



「それもなんだが…賊の三人、どうしたらいいもんか」




「…彼らに会えるかしら?」




「そうしてもらえると、ありがてぇ」





ユーグを先頭に、備蓄庫へとやって来たルネとジゼルは、辺境の男達が取り囲む賊の前へと進む。三人纏めて縄でグルグル巻きにされていた男達が一斉に顔を上げる。



「あんたがレーヌ様か。頼む、盗みに入っておきながら虫がいいとは分かっている。俺の命と引き換えと言っちゃぁ何だが…集落に居る奴らに、食い物を分けて貰えないだろうか…このままだと全員死んじまう…何でもする、この通りだ」



中でも身体の大きな男が縛られたまま、額を床に擦りつける。当然ながら一緒に縛られていた他の二人も、つられて無様に倒れ込んだ。大人が、しかも図体の大きな者ばかりであった為、倒れたまま起き上がる事すら出来なかった。だがそのまま、「お願いだ…」と呻くように呟いていた。



「ユーグ親方、彼らの縄を解いて差し上げて」



皆の視線が、一斉にルネに突き刺さる。



「だが、こいつらは…!」「縄解いちまったら、何しでかすか分らんぞ」「レーヌ様、危険です!」



「大丈夫、彼らからは敵意を感じないわ。それに、もし何かあっても、皆が居るから安心だもの」



ルネがフワリと笑えば、組合の男衆が顔を赤く染める。頭をボリボリ掻いたり、目を下に逸らす者もいた。皆を代表するように、ユーグがルネの方へと一歩近づく。



「仕方ねえ、レーヌ様の頼みじゃ断れないからなぁ。おい、早く縄切ってやんな」



自由になった後も、土下座したまま謝り続けている。ルネは彼らの前まで歩いて行き、跪いた。




「顔を上げて下さい、少しお話しましょう」



恐る恐る見上げる三人とルネの間に、するりと黒い影が入り込む。



「もしレーヌ様に何かするような事があれば、どんな手を使っても叩き潰す。忘れるな」



それまで誰も気付かなかったダンが、ゆるりと現れルネを守るように立ちはだかる。



「俺達はもう何もしやしねぇ。…レーヌ様お願いだ、話だけでも…」



「どのくらいなのでしょう?」




床に手を突いたまま、男達がポカンとルネを見つめている。



「…何がですかい」



「集落には何人いるのかしら?」



その場にいた者の視線が、一斉にルネへと向く。三人は顔をくしゃくしゃにして、嗚咽を漏らしていた。



「…ぅっ…ぐ、あ、ありがてぇ」

「すまねぇ…」


僅かな間の後に、中でも身体の大きい男が、もう一度頭を下げる。



「俺の事は好きにしてくれていい、こいつらだけは助けてやっちゃぁくれねえか?」


「…なっ!」「かっこつけてんじゃねぇ!」



パン!とルネが手を鳴らすと、誰もが口を噤んだ。皆の注目を一身に集めたルネが、ジゼルに向かって声を張る。



「とりあえず、お昼の準備を。お腹空いたでしょう?」



「何時まで待てば良いかと、思っておりました。すぐにお持ちします」



ジゼルが速やかに部屋を出ていくと、ルネは膝を突き三人に目線を合わせる。



「お食事の前に、あなた方のお名前を教えて下さらない?」



微笑みながら、一人ずつと目を合わせる。穏やかな笑顔が、キリっとした表情へと一転する。



「それから、感謝は無用です。対等な取引しましょう。こちらは、越冬用の食料と技術を提供します。代わりに、そちらで採れる香草を幾つか分けて頂きたいのです」




「…あぁ、そんな事なら、お安い御用だ。…俺はオーバン、こっちがエミール、シモンだ」



ジゼルが戻って来ると、準備が整った事を告げる。




「さぁ、まずは腹ごしらえしましょう!遠慮はいりませんから」



日が暮れる頃には食料が纏められ、日の出と共に三人は集落へと出発していった。姿が見えなくなるまで見送ったルネは、寒さに身震いし、邸へと戻ろうと歩を進めてハッとする。




「王都からの視察!すっかり忘れて……!」



ルネの叫び声が、朝焼けの空に木霊して消えていった。





数時間もしないうちに予定通り、国の使者が到着した。雪が静かに降る中を、ヴェルレーヌ邸へと一直線の白い光が降り注ぐ。初めて見る光景に目を奪われながらも、光が消え姿が見える前に、最上位の礼をもって使者を出迎える。



「ようこそ、ヴェルレーヌ領へ。お待ちしておりました」



「あぁ、堅苦しい挨拶は抜きにして、まず名前を教えてもらえるだろうか」



名乗る為に顔を上げた途端、ルネは氷の様に固まる。




目の前に居たのは、ダニエル・エルランジェ公爵子息、ルネが一番会いたくない元婚約者だった。







なんてこと!もうストックが無くなってしまいました。


なるべく毎日1話は投稿出来る様にしようと思います!

…といったそばから実行できず…。

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