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少々短めですが、内容的にここで切ります。
――鳥さんが帰ってこない。
あれだけ強くここから出るなというくらいだから、きっと何かあったんだと思う。多分鳥さんは結構強い。大型の鹿みたいな生き物だって、ほとんど傷つけずに仕留めてきた。その鳥さんが警戒するだけのことが、起こっているのだ。
私はいてもたってもいられずに、洞窟内をぐるぐるした。もう、かなりの時間が過ぎたように感じる。
とうとう私は、始めに着ていた上着に鳥さんの赤っぽい羽を縫い込んだあったか上着を羽織って、洞窟の外に飛び出した。
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失敗した。そもそも鳥さんに巣に連れてこられてから、まともに外に出たことなどほとんどなかったのだ。それなのに心配だからと無計画に飛び出したら迷うに決まっている。一応なんとなく鳥さんの気配のようなものを感じる方向に進んではいるが、それがあっているのかも全く分からない。
それでも息を切らせながら歩き続けると、急にぱっと視界が開けた。そこには、予想もしていなかった光景が広がっていた。
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そこは、尾根から見て切り立った崖の下にある、開けた場所だった。地面には数十人もの人影があり、空へ向かって火の玉や氷の矢を放っている。中には地上で刃物のような何かを携えて待ち構えているものや、盾を構えて攻撃に備えているものもいる。
そして、上空には、ボロボロになった鳥さんが、飛んでいた。
真っ白な体は攻撃を受けてしまったのか、左下の青っぽい翼の付け根が赤く染まり、力が入らない様子でだらんと脱力している。頭の癒しの羽は、すでに使ってしまったのか数えるほどしか残っておらず、上空へ舞い上がって逃げようとするたびに集中的な攻撃を受けて逃げられないようだった。
私は、出そうになった悲鳴を無理矢理飲み込んだ。ここで騒いだら、鳥さんを攻撃する、危ない人たちに見つかってしまう。その代わり、上着から赤みを帯びた羽を十枚ほど抜き取って握りしめた。敵が、高台にいる私に背を向けたタイミングでこれを投げつけるのだ。鳥さんが見せてくれた魔法には及ばないかもしれないが、この羽があれば私でもある程度の魔法が使えることは教えてもらった。これを使って、鳥さんが逃げる隙を作るのだ。
爆発音や怒号の響く戦場を、注意深くうかがう。鳥さんがこちら側から離れて、敵がそちらを向く。――今だ!
私は羽に、爆発して!と念じながら敵のほうに投げつけた。羽は見事に敵の背後に突き刺さり、派手に爆発する。威力はさほどないが、かなり大きな音が出たので、敵は動揺して攻撃がわずかに揺らいだ。その隙を逃さず、鳥さんは大きく羽ばたいて崖の上に飛び上がる。
その時だった。逃げられると思ったのか、大きな剣を持った一つの人影が、思い切り振りかぶって持っていた剣を、投げた。
剣はきれいな放物線を描いて、鳥さんの背中に突き刺さる。あたりに絶叫が響き渡った。