二枚目の手紙②
風呂に入り、夕食を適当に済ませたところでメールを送る。
その直後で楓から電話がかかってきた。
「もしもし……」
『あ、もしもし、一馬くん? ごめんね? 急に電話したりして』
「いや、それはいいんだけど……なんで電話?」
『僕ね、今お風呂に入っている途中なんだ。だからスマホが濡れるといけないでしょ? 一応防水だけどさ』
そういえば、電話の向こうから水が跳ねるような音がかすかに聞こえてくる。
楓が風呂に入っている……って、何を俺は想像してんだよ! 楓は男だぞ!
一瞬ではあったが、変な妄想劇が頭の中によぎってしまった。
あの容姿だからだろう。やばい。鼻血出てきた。
近くにあったティッシュを一枚取ると、鼻の中に詰め込む。
この鼻血はきっとあれだ。三十分前まで風呂に入ってたから今頃になって逆上せたんだろう。
『それでメール見たけど、話って何?』
シャワーの音が聞こえる。
「え、えーっと、ラブレターのことなんだけど……今日帰るときに二枚目が靴箱の中に入ってたんだ」
『へぇー。それって、封筒も同じやつ?』
「あ、ああ、前回と全く同じで中身の内容だけ違った」
『その手紙の中身ってなんて書いてあった?』
「それが……」
そして俺は手紙の内容を楓に伝えた。
『ふーん。なんかストーカー気質っぽいね』
「まぁ、捉え方にもよるとは思うけどな。そこでここからが本題なんだが、楓にお願いがあるんだ?」
『お願い?』
シャワーの音が鳴り止み、バシャバシャという音が代わりに響く。たぶんお湯に浸かったのだろう。
「ああ、俺の代わりに靴箱を見張っててくれないか?」
この役を頼めるのは親友である楓しかいない。
楓ならもしかしたらバレずに済むかもしれないし、俺としては適任だと思う。
電話口からは水の跳ねる音すら聞こえなくなった。
それくらい考え込んでいるのだろう。
『分かった。靴箱に見張ればいいんだね』
どのくらいかして楓が了承したことに少し安堵を覚える。
「ありがとな。見張る時間なんだけど、できれば朝早くからお願いしたいんだけど……」
『うん、なるべくそうするよ』
やはり持つべきは親友というべきか。
その後少し雑談をした後、楓が風呂から上がるということで電話は終わった。