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二組の結城結奈

 教室に入ると、楓はすでにある一人の女子と立ち話をしていた。

 セミロングくらいの長さで一つにまとめられたポニーテールと小顔効果を期待してなのか分からない触覚。

 容姿は完璧に近いほど整っていて、誰もが二度見してしまいそうな美しさ。

 ――俺はこの子を知っている。

 同じクラスだからという話以前に俺はこの子と出会ったことが……いや、知り合いと表現すべきか。

 楓は俺に気がつくと、手招きをして呼び寄せる。

 その様子を見ていたその女子は一瞬ではあったが、目を大きく見開いた。


「まさか、話があると言っている男子が一馬くんとはね」


 そう言って、にっこりと作り笑いのような笑顔を見せる。

 結城結奈……この名前で間違いないだろう。

 結城さんとはたしか中学校は一緒だったはず。ただ同じクラスになったことはないが、よく冬華と行動を共にしているところを見かけたりもした。

 が、いつからなんだろう?

 結城さんと冬華はいつの間にか、行動を共にすることなく、中学を卒業し、高校に進学した。

 当初は喧嘩か何かで少し仲が悪くなっているだけだろうと俺はそう思っていたのだが、風の噂でもっと複雑な何かが原因らしい。

 これはあくまで噂に過ぎないから本当のところはどうなのかは分からないが、二人の間で何かが起こったということについては、噂に頼らなくてもすでに確定的だ。

 それに結城さんのことをあまりいい印象で聞いたことがない。

 これも風の噂だったり、女子の陰口をたまたま聞いてしまったものなのだが、結城さんは腹黒いとか自己中心的だ、器が小さいと言った悪口に近いようなことをよく聞く。

 見た目は逆に性格が悪そうな感じには見えないんだけどな。


「それで楓くんから話を聞いたんだけど、一馬くんがうちに何の用?」

「用というか……」


 相変わらず、話の振り方が下手である。

 俺に紹介するのであれば、もっと他にあったんじゃないか? 例えば、放課後一緒に遊ばない? とかさ。

 ――いや、例えがなんと言うか……ナンパ師みたいだな。

 まぁ、頼んでいる俺が文句を言える立場でないことは承知の上だけど……果たしてこの後どうすればいい? さっきの山下さんについては、なんとか上手くいったはいいが、結城さん相手となると、そう上手くはいかないだろう。

 なにせ、結城さんは冬華に次ぐ校内で二番目に人気がある美少女だ。

 先ほどみたいなナンパまがいなことをすれば、すぐに断られるだろう。

 となると……


「大した用っていうほどではないんだけどさ、少し相談に乗ってもらえないかなと思ってなんだけど……」


 とっさに思いついたということもあり、若干しどろもどろだったが、結城さんは考える仕草を取る。


「うちもそんなに暇じゃないし、仲のいい楓くんに頼んだら?」

「そ、それができないんだよ。女子にしか分からないような相談なんだ! ほ、ほら! 俺って友達が少ないじゃん? 楓だけだからさ、必然的に女子の知り合いとかいないんだわ……ははは」


 最後に俺は乾いた笑い声を上げた。

 自分で言っておいて、すごく落ち込むというか、悲しくなってくる。

 ほぼぼっち状態だとはいえ、自らの口でここまで言ったことに褒め称えてほしい。

 その気持ちが届いたのか、結城さんは俺の目をじっと見つめる。

 美少女からの目線を受け、目が意思とは反して、勝手に動いてしまう。


「なんか、めっちゃ目が泳いでるけど……?」

「そ、そうかな? たぶん体質だよ。俺は勝手に目が泳いでしまう体質を持っているんだ」


 自分で言っておきながら思った。どんな体質だよ!?

 結城さんはなおも訝しんだような目で見つめていたが、ふと「はぁ」と短いため息をつく。


「いいよ。一馬くんが何を考えてのことなのかは分からないけど、その相談に乗ってあげる」

「あ、ありがとな。それで日程なんだけど……」

「そうだね。今日の放課後とか時間ある?」

「時間はあるけど……」

「じゃあ、学校近くのファミレスに来てくれない? そこで話を聞いてあげる」

「あ、ああ……」


 そう言うと、結城さんは「また後で」と言って、教室を出て行った。

 教室内にある時計を見ると、もうすぐで掃除時間に入る。


「三組の子はまた来週でいいかな?」

「そうだな。もう時間がないしな」


 ということで俺たちもそれぞれの清掃場所に向かうことにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 話を見る限り主人公と幼馴染みが付き合ってるって言うのは学年には知れ渡ってるようですが、手紙の相手を知りたいからと言って他の女子を誘うのは軽率な行動なのでは?話が広まってるなら少なくとも顔も知…
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