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送り主の正体

 早速家に帰ったところで自室にこもり、いつものように冬華から覗かれないようカーテンを閉めたところで椅子に座る。

 机の上に先ほど入っていたピンクの封筒をカバンから取り出して置く。

 もう言うまでもないが、当たり前のように送り主の名前は書かれてない。

 次はどんなことが書かれているのだろうかと不安に支配されながらも、封筒の一番端をハサミで丁寧に切っていく。

 そして中身を見ると、一枚の紙が二回に折りたたまれた状態で入っており、それを取り出して広げる。

 すると、手紙には以前と同じ人が書いたであろう筆跡でこう書かれていた。


“一馬くんへ

 どうやら私のことを探しているみたいだね。

 でも、私はそう簡単には見つけられないと思うなぁ。このまま一馬くんたちの様子を見ておきたいっていう気持ちもあるけど、それだけだと面白くないから特別に大ヒントをあげるよ。

私の名前のイニシャルはY・Yだよ。

 ちなみにもう二つヒントをあげるけど、私は女子で学年は一馬くんと一緒だから!

 それじゃ、頑張って探してね!“


「学年が同じ? となれば……」


 かなりの数で絞ることができる。

 が、女子となると、俺にはどうしようもできない。コミュ障ということもあって女子の知り合いがほとんどいないからな。

 ――ここはまた楓に訊いてみるか……。

 女子の知り合いの多い楓ならすぐにイニシャルが「Y・Y」の人を探し出せるかもしれない。


「楓にはいろいろと悪いけどまたメールでも……」


 そう思い、俺は手紙をスマホのカメラ機能を使って撮ると、そのままメールに添付して、「このイニシャルに思い当たるような人物はいるか?」とだけ書いて送信した。

 それから数分後。

 制服から部屋着に着替えている際中に着信音が鳴り響いた。

 俺はすぐに机の上に置いてあったスマホと取り、画面を覗くと、楓からの電話だった。

 すぐさまに繋ぐ。


『あ、もしもし? 僕だけど?』

「どうしたんだ? 急に電話なんかして?」

『一馬のメール見て、それで電話したんだ』

「別に電話じゃなくてもいいのに」


 そんな急用でもないし、メールでも十分だと思うのだが?

 そう思ったのだが、


『僕、今お風呂に入っている途中なんだよね。だから早く伝えた方がいいかな? とは思ったりもしたんだけど……手が離せない状態で』


 楓の微かな苦笑いとシャワーの音が聞こえてくる。

 なんか、ここ最近だけど楓と電話する時いつも風呂に入っている途中のような気がするのだが……?


「楓の家ってたしか旅館だったか?」

『え、うん。まぁ、小さい旅館で人手が足りなくて大変なんだけどね』


 小さい旅館と楓は言っているが、全くもって違う。

 一度楓の両親が経営している旅館に家族で泊まりに行ったことがあるが、めちゃくちゃデカくて創立四百年と老舗旅館だ。

 今は五月中旬とはいえ、平日にも関わらずそんなに忙しいのだろうか? さすが老舗旅館だな。

 そんなことを思いながらも、電話の向こうでは水が跳ねる音だったりと、少し騒がしい。それがまたいろいろと妄想を掻き立ててしまう要素になってしまうものだから本当に……風呂に入っている途中で電話してくるのやめてくれませんかね!?

 そんな俺の思いを知らないであろう楓が再び声を出す。


『あ、それでね、一馬に伝えたいことがあるんだけどいい?』

「ああ」

『イニシャルが「Y・Y」の女子なんだけど、僕が思い当たる中では三人くらいいた』

「三人もいるの?!」


 Y・Yだからあまりいないものかと勝手に思っていたが、予想していたよりも少し多かった。

 楓は俺の反応に苦笑しつつも、『まだ少ない方だと思うよ?』と付け加える。


『その三人なんだけど、それぞれ違うクラスなんだよね』

「なるほど。俺のクラスにもいるのか?」

『うん、一人ね』


 二年のクラスは全部で四クラスある。


『じゃあ、一人ずつ言っていくから、ちゃんとメモしておいてよ?』

「あ、ああ」


 俺は急いで適当な用紙とペンを取り出す。


『まずは一組の山下優香さん、二組の結城結奈さん、三組の吉沢佳乃さん。四組は少し分からなかったから一応全体的にイニシャルが「Y・Y」の女子がいないか、知り合いの子には訊いてあるけど、今のところはこの三人だよ』


 俺は用紙に書いた三人の名前をじっと見つめる。

 少なくともそれぞれ高校では面識がなかったような気がする。

 考えても面識した記憶がないから、たぶん合っていると思うけど……


『まぁ、今考えても分からないよね。相手が僕たちの行動を把握している以上、朝から靴箱を見張る行為も無駄っていうことになるし……明日その三人を教えてあげるよ。名前では分からなくても顔を見たら、分かるかもしれないし』


 楓はまるで俺の考えていることが分かっているかのように言うと、そろそろ手伝いに戻らないといけないからということだけを俺に伝えて、電話を切ってしまった。

 実際に顔を見たら分かるだろうか……?

 ふとそんなことを思ってしまった。

 俺自身あまり他の人と交流などほとんどないから、顔を見ただけでも分からないかもしれないし、名前を聞いただけで分からないとなると、相手は一体……。

 仮に相手が本当に俺のことが好きだった場合を考えると、一目惚れとかになってしまうけど……一目惚れってあり得るの?

 そんなに顔がいいというわけではない俺に一目惚れとか……ははは。自分でも嘲笑してしまう。


「変な奴に絡まれてしまったなぁ……」


 そう呟きながらもスマホで時間を確認すると、もうすぐで六時半を回ろうとしていた。

 早く風呂に入って、夕食をとろうかな。


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