46 街の書店
「では参りましょうー!」
書店に行くことが決まったことで、調子づいた私は意気揚々と歩く速度を上げて、街のメイン通りに突っ込んだ。
「……ところでキミは書店の場所は分かるのか? 迷いなく突き進んでいるように見えるのだが」
そんな私を後ろから追ってきたアルフォンス様が、控えめにそんな言葉を掛けてくる。
おおっ問題なく私の歩行速度に着いてきてますね? 早すぎるようだったら速度を落とそうと思ったけど、ではではこの早足を続行しますねー!!
おっとー、それはそうとアルフォンス様に返事をしないと。
「いえ、分かりませんよー。ですが、まぁ大丈夫です!!」
「いや、分からないのになんで大丈夫なんだ……?」
隣を歩く彼は不思議そうな顔でそう問いかけてくる。
ええ、まぁそうも思うでしょうね……ならばしっかり理由を答えましょう。
「なんとなくカンでっ!!」
私は一切歩く速度を緩めず堂々とそう答えた。
そう、私のカンが告げてるのだ書店はコチラだと……!!
「か、カン……?」
「はい、カンです!!」
それ以上でもそれ以下でもないっ!!
実は今まで見てきた街の構造とか人の流れを考慮して……という部分もないわけでもないけど、その比率の大部分を占めるのはカンなのでカンという他ない。
「カン……」
なんだか彼の私を見る目が急に残念そうになった気がする……。
ねぇ、なんでです?
「大丈夫です、いけますこっちです!!」
「そうか……」
いや、なんでそんなに微妙な返事なんですか……。
むうーっ、こうなったら絶対に書店を見つけてみせますとも!!
「ほら、書店がありましたよー!」
私の先導によって無事辿り着いた書店をビシッと示し『どうですか!!』という意思を込めた眼でアルフォンス様を見る。
はいはい、やりましたー!!
私は見事、書店を探し当てましたー!!
すごーい!! さっすがー!!
「ああ、本当に見つかったな……」
ねぇ、なんで若干信じられないみたいな反応なんですか……? ねぇ?
そう思うものの問い詰めたい気持ちがぐっと堪えて、私は彼に声をかけた。
「とりあえず入りましょうか、アルさん?」
そう今は何より本だ……!!
「あ、ああ……」
扉を開き店内に入って、ざっと辺りを見回す。
うーん、入る前から思ってたけど、ここの書店って街の規模の割に小さいなぁ……。
「これが書店か……」
そんなことを考えていると、アルフォンス様のそんな呟きが耳に届いた。
はい?
これが書店というか、これは書店以外の何物でもないのですが……。
えっ、もしかして書店にいらっしゃること自体が初めてで……!!
ならば、自称書店マイスターである私が正しい書店の見方をお教えするしかっっ!?
あっ、いや、しかし今の私にはそれよりもするべきことがある……。
悪いけれど、そわそわと店内を見ている彼はあえて放置して、私は私の用を済ませることにしよう……。
呼吸を抑え気配を希薄にして、動いたこと悟られないように行動する……実は魔術で全部カバー出来るけど、それがあったとしても私は他の面についても一切妥協しないのです!! ……まぁ基本的にはね。
さて教本、教本、ダンスの教本はどこかなー?
それぞれの棚の配置と内容をざっと確認、教本という本の種類的には実用書に近い配置になっているはず……。
…………っ!! 見つけた、確保っ!!
周りの気配に気を払いつつ、私は素早く本を手にとった。
まぁ気配どうこう以前にそもそも、人がいないんですけどね!!
あとは本命を誤魔化す為に、テキトーな本も一緒に買っておいてっと……ん、この本は?
それを見つけたのは、児童書が並ぶ棚の中でも特に民話伝説系の本が揃ってる場所。その端にひっそりと置かれていた。
…………うん、なかなか面白そうだしこれも買おう。それから後もう二冊くらいテキトーに選んで、買っちゃおっとー。
チラッとアルフォンス様の様子を伺う。すると私が迅速に行動したお陰で、そんなに時間も経過してないこともあり、先程と変わらない様子で店内を見ていた。
うん、なら気づかれない内に会計も済まして置こう……。
そう考えて私は、入口付近にいるアルフォンス様を尻目に店の奥へと一人進んでいったのだった。
書籍の会計を済ませて入口の方まで戻ってくると、相変わらずそこにいたアルフォンス様とちょうど目があった。
「もう買ってきたのか?」
彼は私が手に持っている本の入った包みをちらりと見ていった。
「はい」
「早いな……それで陳列や品揃えを見たいというのももういいのか?」
「ええ、そちらももう大丈夫です。あっ、でもアルさんがお望みとあらば、私の考察をお話いたしますが?」
ふふふっ、あまりじっくり見たわけではないけれど、それでも私レベルになるとそれだけでも十分書店の分析は出来ている。
なぜならば魔術師兼、書店マイスターなので……!!
まず、入る前にみた書店の外観で、街の規模との相対的な書店利用者の割合について当たりを付ける。そして店内に入った時点で実際にどの程度書店が利用されているか、一番最初に目に入る書籍の種類でどういう層が利用してるかを割り出したりするのだ。
いやー、どうしよっかなー、どこから説明しようかなー。
私は説明をしたくてうずうずしながら彼を見つめていたのだが、彼は何故か急に身震いをしさっと目をそらした。
「……いや、それはいい。では用事が済んだのならば店を出よう」
そう口にすると彼は私の返事を待たずに店の外へ出て行ってしまう。
もう、中々せっかちですね!?
せっかく人が説明をしようと色々と考えていたというのに!!
一人で店内に残るわけにもいかないので、私もアルフォンス様を後を追うように書店を後にしたのだった。




