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リク王と愉快な仲間達

「リク王」


 名を呼ばれて、サイカ王国の第23代目の王であるリク・サイカ・シャルガンは傾いた頭の王冠を被り直した。


「な、なんだい」


 似合っていない王冠は、またずるりと傾いた。ずるずると長い、金糸銀糸の美しい真っ赤なマントに、絹で出来た上等の服。王様が召すには十分な衣装であるが、リクにはあまり似合っていなかった。


 あーかったりい。


 だりい。


 眠い。


 昼寝してー。


 だらけたその表情を、パンと、近衛騎士であるリンドウが、リクの頬を両手で音がなるくらいに挟みこんで一喝する。


「リク王!しっかりせえやこらあ!」


 ばしっと、ついでに頭をはたかれて、リクの頭からエメラルドが際立った王冠が床に転げ落ちた。


「何をするリンドウ!」


 リク王は、転がった王冠を追って走り出す。

 ああ、いつ見ても情けない姿。


 これで、今年で27になるなんて信じられないと、同い年であるリンドウは溜息を零した。


 コロコロコロ。


「もげあああ!!」


 その王冠に躓いて、涼しい顔をしてリク王に近づいていた美しい魔法士のサレイが、床に頭から見事につっぷして、でっかいたんこぶを作っていた。


 むぎゅ。

 細い、その魔法士の体を踏んで、リク王はやっと王冠を手にとると、頭に被らずに玉座に置いた。


 ぽいっ。


 この王朝700年目を迎える、サイカ王国の代々王が被る立派な王冠を投げ捨てる。


 その行動に、近衛騎士のリンドウが片眉をあげるが、特に何も言わない。


 むぎゅ、もぎゅ!


 サイカ王国の政務を取り仕切る者たちの中でも、際立って美しいと評判の魔法士サレイの体を踏んで、リンドウもリク王の側にやってきた。


 腰に立派な王家の紋章が施された銀色に輝く剣の、帯剣を許されているのは騎士の証。その中でもリンドウは、リク王を守る近衛騎士である。貴族出身で、身分も高い。


 一介の平民出身であるサレイとは、ことあるごとに衝突している。

 ようは性格が折り合わないのだろう。


「お前ら・・・わざとだろ、ええ、わざとだろ!くそう、私をばかにしよってからに!」


 サレイは、痛む背中に眉を寄せて、リク王の側にいるリンドウに指をつきつけた。


「バーカバーカ!ははん、バアアアカ!私の美貌にかなわないからと、暴力に訴えでるこの蛮人が!バアアアアカ!!」


 あっかんべーをして、殊更バカと強調するサレイに、リク王は玉座の隣に垂れていた白い紐を引っ張った。


 ゴン、ガン!


 天井からタライが降ってきた。


 見事サレイの金髪の頭に直撃する。サレイは目を回して、バタリと倒れこむ。


「お見事やん、リク」


 幼馴染でもあるリンドウは、リク王を愛称のリクで呼ぶことが多い。無論、公の場ではリク王陛下とかしこまるが。


 関西弁の、サレイと同じ金の髪に、瞳の色だけ違うリンドウ。竜胆リンドウという花の名のように、薄紫の瞳。


 サレイの瞳の色は空の紺碧だ。


「うむ、このタライの落ちる音。すばらしい」


 リク王はもう一回白い紐をひっぱった。


「あ」


 リンドウが、遅まきに声をあげる。


 ゴン、ガン!


 リク王の頭の上に、極大のタライが降ってきた。


「ぽっぽー。ぽっぽー・・・バタ」


 リク王は、頭の周囲に星を回して、鳩の鳴きまねをしてから、サレイの上に重なるようにして倒れた。


「アホや。王がアホやと、家臣までアホになりよる」


 その家臣とは、魔法士サレイのことをさしているのだろう。

 二人が邪魔だとばかりに、他の騎士を呼んで、とりあえずリク王は玉座に座らせて、サレイはぱんつ一丁にして、首にネクタイだけ絞めさせて、中庭に放置しておいた。


「いっやああああああ!!!」


通り過ぎる侍女の、悲鳴が、心地いい。


「サレイ様の変態!!」


 サレイの人気もこれで少しは落ちるだろうか。そんなことを思いながら、リンドウは自室に引き上げて、リク王の第一王女であるリリエルと、優雅にお茶の時間を楽しんでいた。



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