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仁科老はそのまま歩き続け、公園のトイレの前を通過しようとしました。


ところがどうしたことかトイレの前を通り過ぎたあたりで突然立ち止まり、すこし振り返ってトイレをじっと見ているではありませんか。


私が何事かと観察していると、じいさんはそのまま駆け込むようにトイレの中に入って行きました。


その動きは、右足が悪い七十代後半の男性のものとはとても思えないほどの、素早い動きでした。


テレビではちょうど私の好きな歌が流れていたのですが、その瞬間からその歌は私の耳に入ってこなくなりました。


私はトイレを凝視しました。


そのまま時は過ぎてゆきます。


時間の流れは常に一律のはずですが、その時の私は一分が十分にも二十分にも感じられました。


途中から私はトイレに集中していたかと思うと、壁にかかっているアナログ時計を睨みつけ、またトイレに視線を移すということを何度も繰り返していました。


そして三十分ほどの時が過ぎてゆきました。


仁科老はまだトイレから出てきません。


私はこれまで一時間は待っていました。


しかし三十分が何時間にも感じていた私は、それ以上待つことが出来ませんでした。

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