一幕「紫鈴」
それは、依月が那月の夢を見て約一週間。
部屋で闇に染まる不登校の依月がいた。
今なら救えると思ったものの、やはり仲間集めがうまくいかない。
コミュニケーションが苦手な依月は、絶望に染まりつつ引き籠っていた。
「・・・ミャアアオッ」
どこからかそんな猫の鳴き声が聞こえる。
・・・家の近くの木にいるのだろう。
「ミャアアッ」
黒猫は不安そうに首についている紫色の鈴を触った。
・・・野良猫ではないようだ。
「・・・飼い猫か
飼い主はどこいった―――?」
黒猫は不思議そうに依月を見つめる。
「ニャアアア。ニャー」
依月の膝に降りると、毛づくろいをはじめた。
「こらこら。
さ、飼い主んとこ帰りな。
・・・って言っても無理か・・・
迷子なんだろうな―――
お前、私の悩み、聞いてくれるか?
・・・狂い者の、さ。
那月の話。」
「・・・ニャア?ニャ」
え?いいよ。
というように、黒猫は不思議そうに頷く。
―――その直後。
「こら、紫鈴」
思わず聞き惚れてしまいそうな声が、木の上から声が降り注いだ。
「ミャアア!」
黒猫は嬉しそうに、その飼い主の頭の上に乗った。
「―――ほーら、紫鈴・・・なでなで、っと」
その黒猫――――紫鈴は、
飼い主に撫でられ気持ちよさそうだ。
「・・・よかったな、黒猫。
飼い主が見つかって」
―――それだけ言って、窓を閉めようとしたその時。
「おい―――待て
お前―――さっき狂い者とか言ってただろ」
「・・・そうだけど、お前も知ってんのか?」
「・・・まぁな。
お前なら嫌われ者の化け者を知ってそうだが、俺はその知り合いでな。
それ以外の狂い者とも結構仲が良くてな・・・
今丁度絶望して、不登校になってたとこだよ。
・・・お前ももしかして、不登校か?」
「・・・そうだよ
私の、妹が、狂い者になったんだ―――
それで絶望に暮れて」
「・・・まぁ、助けたいとか思うのか?お前は」
「勿論―――
妹の夢を見て、今なら救える、仲間を見つけたい―――そう思ったけれど、
結局できなくてさ」
「・・・なら、俺とお前の目的は―――同じだ。
協力しないか?
仲間になるし、仲間集めだってする。
―――どうだ?」
「・・・いい、よ
よろしく・・・名前は?」
「俺は―――
胡埜鼠次 枯炉眞だ。」
「私は来咲依月だ。
よろしくな・・・枯炉眞」
「―――ああ」