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幼女豚姫

豚その1の驚くほど退屈で長い説明に耐えただけあって、多くのことがわかった。

私が伝説級のレアモンスターであるオークプリンセスであること。オークプリンセスは生まれながらにしてオークキング並みの力を持ち、さらに成長する可能性があること。

豚その1は知恵の神に仕えているため豚にしてはそこそこの知能があること。その他の豚はごく普通のオークであり、流暢に喋ることもままならないこと。


私が産まれたときは月が天頂にあったというのに、今いる場所がヤーファン島と呼ばれる小島のオークの森であることを知る頃には、空が明るくなりはじめていた。

長い時間耐えたせいか豚その1の顔も随分と見慣れて嫌悪感が薄れてきた。

「と、いうわけで、姫様は我らオークの希望の星なのです!」


語り合えた豚その1の目はキラキラと輝き、ひたすら黙って跪いていたオークどもは顔を上げて何やら嬉しそうにフゴフゴしている。

「さぁ、姫様!我らに眷属として侍る栄誉を!そしてかの小鬼どもに目に物を見せてくれましょう!」

豚その1が声を張り上げると、その他大勢の豚どもがブゴー、ブギィと大はしゃぎする。


地獄のような絵面と騒音だ。耐えられない。

あまりの光景に意識が飛びかけたのを必死に繋ぎとめ、私は威圧を込めて声を張り上げた。

「黙れ!私の眷属には美少年しか要らないぞ!!豚は死ね!!」


一瞬で豚どもが雷に打たれたかのような表情で静かになった。

やればできるじゃあないか。ずっとそうしていろ。

とりあえず黙った豚どもに満足する。

まったく、産まれてこのかた汚いものしか見ていない。


まだまだ知識は足りないが、とりあえずの指針として手に入れたいものはたくさんある。

まだ見ぬ美少年、美少女、美食に宝石。特に長い歴史の中でかつてはオークに隷属していた時期もあるというエルフ。

種族としての本能か、産まれた環境の悪さゆえか、私は美しいものに飢えていた。

別に世界の全てを手に入れようなどと神話の時代の悪神じみたことを言うつもりはないが、とりあえず美しいものが欲しい。


目を瞑って情報の整理に専念していると、ふと気がついた。あるじゃあないか、美しいものが。


「鏡だ」

端的に命ずると、跪いていた豚のうち1匹が素早く欠けた手鏡を差し出してきた。大方冒険者の遺品だろうが出自はどうでもいい。大事なのは映っている私の姿だ。


くりくりと大きな瞳、腰まで届く長髪は燃えるような赤。それも鉄を鍛える炎のような、荒々しい赤だ。

小ぶりの鼻は少し上を向いているが、鼻筋が通っていて違和感はない。唇はぷっくりと艶やかで、色気を感じさせる。

肌は雪のように白いが、頬ははっきりと紅が乗り、愛らしさを引き立てる。


我ながら素晴らしい美貌だ。

素晴らしい美貌だが、思っていた以上に幼い。人間でいえば年の頃は7歳か8歳程度だろうか。

今ひとつ納得がいかないが、種族がオークプリンセスであることを考えれば当然なのかもしれない。


何にせよ、美しいものを見て荒れていた心が落ち着いた。やはり美しいものは良い。

鏡を差し出した豚を見ると、私の役に立てたことを喜ぶあまり震えている。騒がしくならないように必死に堪えているのだろう。

目端が利くのは良いことだ。コイツは豚その2だな。


機嫌よく豚その2に声をかけようと立ち上がりかけたところで、豚その2は突然光り出した。

喜びを抑えるあまり発光する豚。それを見ていた周りのその他豚が声を堪えつつも羨望の眼差しを注いでいる。


いったい、何が起こった?

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