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1.逃げたい
街がどんどん流れていく。
車内だけが違う空間になったかのようだ。
窓ガラス越しに見る外の世界はとても輝いて見えて、スマホをいじること以外何もやることのない車内はどんより沈んでいる。いや、沈んでいると感じるのは自分の心のせいか。
しかし、窓の外が楽しそうなのは事実だ。青春を思い切り楽しんでる学生にちょっと遅い恋愛を経験しているおばさんもみんな笑顔で誰かとすごしている。
焦り。この車内にしか自分の居場所がないように思えて一生ここから出られないんじゃないかと不安になる。実際今日は予定もないのに電車に乗っていつ終わるのか分からない旅を続けている。周りの視線が自分に向いてて変な奴だと思われているんじゃないかと不安になる。
もういっそ、この電車ごと爆発してしまえばいいのに。そしたら身元不明の遺体としてそのまま消え去ることができるのに。