女の子と犬
不思議だ。本当に不思議だ。なぜ、こんなところに人間の女の子が
いるんだ?
そう思った俺は女の子に近づこうとするが、嫌な気配を感じ取り、
その場から飛びのいた。その瞬間、
地面が抉れた。
そして、地面が抉れるのと同時に現れたのは、
グルルルルルルルル!!
「ケルベロスか。」
『ケルベロス:三つの頭を持ち地獄の業火で敵を薙ぎ払う神話級の
魔物』
「面倒な奴が相手になったな。だが、ギリギリ勝てるかな。」
俺は戦闘態勢を取り、ケルベロスに攻撃を仕掛けようとしたその時
「やめてください!」
女の子が大声でそう言うと、ケルベロスは動きを止めた。
そのことを不思議に思った俺は『超解析』を女の子に対して使用す
るとあることが分かった。それは、
「おい、そこの子供。お前、ダンジョンマスターだな?」
「な、何故そのことを!?」
「そんなことはどうでもいいが、はぁ~こんな女の子がダンジョン
マスターだとは、殺すにも殺せないぞ。仕方がない、ダンジョンの
攻略はやめるとするか。」
俺はそう言い、帰ろうとしたが、
「ま、待ってください!」
ケルベロスに押さえつけられてしまい、動けない。
「おい、どういうつもりだ?」
「あ、あの!わ、私も外に連れて行ってくれませんか?」
「ダメだ。それより、何故外に行きたい?いつでも出れたはずだろ
う?」
「そ、その、私、この世界に転移させられたばかりで、外に一度も
出たことがないんです。」
俺はある言葉に首をかしげてしまった。
「おい、この世界とはどういうことだ?」
「え、そ、それは………し、信じてもらえないかもしれませんが、」
「どうせ地球から転移させられ、この世界でダンジョンマスターとし
て生きろとか何とか、神様的な存在に言われたんだろう?」
「ど、どうしてそれを!?」
「いや、ラノベとか読んでいるとこんな知識は無駄につくぞ。」
「ま、まさか、あなたも地球から転移させられたのですか?」
「少しおしいが、お前に教える義理もない。それより、この馬鹿でか
い犬をどけてくれ。」
「す、すみません。ケルちゃん、その人を離してあげて。」
そういうと、ケルベロスは俺の体から足を離してくれた。
「さて、俺は早く帰りたいのだが、」
女の子は目をウルウルさせて此方を見ている。
「はぁ~仕方ない。ダンジョンコアはどこだ?」
「え、わ、私の体の中ですが。」
「それなら手っ取り早い。そこの犬と一緒に外に連れて行ってやる。」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
俺はこうして、女の子と犬を連れて、俺の家まで転移
することとなった。
さすがに小さな女の子にあんな目をされては、断れない。




