龍族の国に向かいます
「カミナ!」
「師匠!」
カミナが俺の胸に飛び込もうとしてきたので、
「『麻痺蜂』。」
「え?」
俺は『麻痺蜂』というスキルを使い、カミナの体の動きを封じた。
「あ、あの、師匠?」
「お前のことを話してもらおうか。」
騎士風の男をカミナの前に投げ捨てると、カミナは小さな声で、
「はい…」
そう言った。
カミナの話を聞いた結果、カミナというのは偽名で本名はセリアル・バハム
ートという名前だった。この名前には驚かされた。バハムートという家名と
言えば龍族の王族に当たるからだ。なんでも、城の外に出たのはいいが、城
下町で誘拐され、ここまで連れてこられたということみたいだ。そして現在
に至るというわけなのだが、
「師匠!お願いします!家には帰りたくありません!」
「いや、ダメだ。帰れ。そこに倒れている騎士?がいるだろう?そいつとと
もに帰れ。面倒ごとは御免だ。」
そういうと、カミナは、
「嫌です!こんな変態と帰りたくもありません!」
「変態?どういうことだ?」
「この騎士の目的は、単独で僕を連れて帰り、僕と結婚し、権力を得ること
が目的なんです!」
「どうしてそう言い切れるんだ?」
「自分で言ってました。」
「はぁ~仕方がない。俺がお前を連れて行く。バハムートという国に何度も
行ったことがあるから転移魔法で行けば簡単に行くことができる。」
「嫌です!帰りたくはありません!」
「ダメだ。帰れ。というより、お前には選択肢が最初から無い。お前の体は
麻痺して動けない。ということは、俺がお前を抱えていつでも連れて帰るこ
とができるというわけだ。それに、お前の親は心配していると思う。なら、
帰ったほうがいい。これ以上親に迷惑をかけるな。」
「うぅぅぅ………はい…」
カミナ、いや、セリアルは頷いてくれた。しかし、
「もう師匠とは会えないのですか…」
そのような言葉で、俺の心を抉ってくる。
「そうだ!お父様に師匠にはもう身も心も捧げました。そう言ってみよう!」
「やめろ!冗談でもそういうことは言うな!分かった。こうしよう、転移魔
法のスクロールをお前にやる。そのスクロールは一度見ただけで転移魔法が
覚えられるスクロールだ。転移魔法を使えるようになればいつでもここに来
れるだろう?」
そう言って俺はセリアルにスクロールを渡した。
「な、成程!では、ありがたくもらいます。では、早速帰りましょう。」
「変わり身が早いな。じゃあ、行くぞ。」
俺は転移魔法を使い、セリアルを連れて、龍族の王国、バハムート王国に向
かった。ついでに、騎士(変態)も連れて。




