7日目(2)
僕がお新香を頼むと、マスターは冷蔵庫から小皿を出し、ラップを取ってテーブルに置いた。
「呪いの装置。」
「えっ?」
「実はね、あの30日のシステムは一種の呪いなんだ。よくよく考えたらおかしいと思わないか?無限にあるはずの寿命がある時急に30日と決められてしまうんだ。そこで重要になるのが呪いを解く方法。知りたい?」
「…もしかして、また注文?」
「わかってるね。」僕は仕方なく角切りチャーシューを頼む。しかし、マスターはまだ納得しないのか、
「あれ、ウーロン茶がなくなってる。」と言う。
「…じゃあお代わり。」すると今度は冷蔵庫からスライスオニオンとチャーシューの入った皿を取り出し、爪楊枝を添えてテーブルに置く。そしてまた冷蔵庫からペットボトルを取り出し、ウーロンをテーブルの上のグラスに直接注ぐ。マスターはまた喋り始める。
「簡単だよ。壊せばいい。」
「…えっ?」
「これを壊せばいいんだ。」そう言うとマスターは装置を直接僕に渡してくる。
「ほら、壊してみ?」そうマスターが言ったので僕は壊そうと装置を持ち上げる。見た目に反して装置は軽くひんやりとしていて、僕はそれに少し驚いた。そしてまた、あの声が聞こえる。
君は地面にこれを落とし、壊す。すると寿命は元通りだ。君はもう迫り来る寿命に怯えることはない。
装置はもう頭の上にある。あとは言葉どおり手を離すだけである。しかしあの声はまだ続く。
しかしそうすると今度はどこまでも追いかけて来る記憶に怯えなければならない。厄介だよ、記憶というのは。忘れたい、苦しめるものほどずっとしぶとく追いかけて来る。君にもあるだろう?ほら、目をつぶってごらん。
僕は必死にまぶたを開けようとする。目をつぶってはならない。直感的にそう感じたのだ。しかし、まぶたの重みは徐々に増していき、僕はそれに負けてしまう。
目をつぶってしまった僕を、記憶たちが牙を剥いて襲ってくる。