1発目
そこで俺は、見張り役をしていたんだ。1日1回被験者の前に現れて銃を見せびらかし、今度お前を殺す。そう伝えて決行する役だった。これは人間世界で遊べる。そう思っていたよ。しかし現実はそんなに甘くなかった。1人目は小竹っていう犯罪者の男だったよ。殺人、強盗、婦女暴行、ホントにやりたい放題だった。しかしあと何日だったかな、警察に捕まってしまってね…
25日目 p.m.11;00
「悪かったな、小竹。遅くなってしまった。」
「おう。助けに来てくれたのか。」
「はあ?何を言っているんだ?私はお前の行動には干渉しない。そういう約束のはずだ。」
「なぁ、お願いだよ。ここから出してくれよ。お前なら出来るだろ。」
「出来る。確かにそうだ。」
「本当か?」
「ああ、本当さ。ただ、やらないけどな。」
「何でだよ。約束を忘れたのか?」
「約束を忘れたのはお前の方ではないのか?」
「はあ?」
「確かにあの時私は、何をしてもいい、思うままに過ごせ、と言った。しかしお前に何かしてやるとは一言も言ってない。出たいなら出ればいいじゃないか。自分の力で。」
「わかったよ。自分の力で、だろ。」
「そうだ。」
「何をしてもいいんだ。」
「おう。」
「じゃあこうするしかないな。」
そう言うと小竹は私が持っている銃を奪い、突きつけた。
「そんなのでいいのか?」
「ああ、いいんだ。お前も殺されたくないだろう。だったらわかるよな。外へ連れ出してくれ。」
「ダメだ。」
「じゃあ、残念だな。」
小竹は至近距離で私に5発も発砲した。弾は全部当たったよ。痣を見るかい?まだ残っているんだ。
「どうだ。従わないからこうなるんだよ。」
「そうだな。もう気が済んだかい?」
「えっ⁉︎」
「私も痛いのはあまり好きではない。次の実験の時は従うようにするよ。」
「くっ…!」
「お前はここで5発も発砲した。ただじゃすまないだろうな。おそらく殺さなくても一生元の生活には戻れないだろう。まあ、あと1発残っている。時期が来たら撃つよ。」
「そうか。」そう言うと小竹はさらに残りの1発を発砲した。そして得意そうに「これでどうかな?」と言う。
「参ったよ。スペアの銃を使わせるなんて。」
「えっ?」
「実は、もう一つ銃を持っているんだ。現物はこれなんだけど、さっきの銃より小さいだろ?だから威力が弱い。つまり、どういうことかわかるよな。より苦しんで死ぬんだ。」
「…クソっ!」
「なんならこの銃を奪ってもいい。ただ、決行の日に苦しむ時間と頭にめり込む弾丸が増えるだけだ。」
そう言い残すと、私はその場から素早く消えた。
その日の警察署では、小竹の叫び声が響いた、らしい。