その4
後書きにて報告あり。
一体何が起きたんだ……
僕は、確か【レミナ】と一緒にパレードを見た後、あの丘の上から星を眺めながら会話をしていた……
その時、突然大きな地震が起きた後、丘が滑るように崩れて、僕と【レミナ】はそのまま落ちていって………
「痛!・・・・此所は・・」
どうやら僕は、気を失っていたようだ。瓦礫の奥から赤い光が漏れ、騒ぎ立てる人々の声で、僕は目を覚ました。
「【レミナ】無事か?【レミナ】!」
僕は、俯せたまま【レミナ】を呼んだ。絶妙なバランスで瓦礫が覆かぶさっていて、少しでも動けば、瓦礫が崩れ落ちそうだった。
「クソ!・・・無事でいてくれよ・・」
僕は【レミナ】の無事を祈りつつ、瓦礫の奥にある光に向って、ゆっくり這っていった。
この瓦礫は、丘の前にあった刃物屋の建物だった。あちらこちらに、売り物の包丁やナイフが瓦礫に潰されいた。辺りには鉄屑とかした刃物の欠片があり、その中を、痛む体に鞭を打ち、慎重に進んだ。
「よし・・・このまま・・慎重に行けば・・」
漏れてくる光は、とても赤かった。多分、近くでは火事が起きていて、人々は火を消しながら人命共助をしているはずだ。
ようやく、光が漏れる瓦礫の隙間に到達した僕は、腹に力を入れて助けを呼んだ。向こうでは、火が立ち上がり、人々が人命共助を行っているはずだった。
しかし、僕は知らなかった。
向こうより、今、僕がいる所の方が最も安全だと……
そして、【レミナ】も僕と同じ所にいるとは、限らない事も………
◆◇◆
それは、地獄絵図のようだった。突然現われた【巨大な牛人間】。
牛人間の後ろを追うよに現われた、上下の鋭い牙を光らせた【醜い人間】、銀色の毛並みで真っ赤な目をむき出しにする【狼】は、逃げ惑う人々を襲い……
殺し、その肉をむさぼるように食べていた。
辺りには、【人間だった物の肉片】が散らばり、血が飛び散り、悲痛な叫び声が聞こえてきていた。
その中、兵士達は槍や剣を持ち、その【化け物】を追い払おうと立ち向かっていた。鎧は血に染まり、槍は【化け物】を突き刺し、剣は【化け物】を切り倒していた。
しかし、兵士達よりも圧倒的に【化け物】の数は凄まじく、取り囲まれた兵士も、同じように【肉塊】になっていった。
徐々に、兵士の数が少なくなる中、ある一画だけ、他とは状況が違う場所があった。
そこは、商業区と工業区の間にある飲食店街。
一人の男の持つ、大きく赤い大剣の横一閃の一払いで、数体の【化け物】は血渋きを流し、死んでいた。
「何なんだよ、こいつらはよ!」
男の着ていた鎧は、血で染まり、周りには【化け物だった物】が転がり、それを数十人の兵士達は呆然と見ていた。
「おい、お前ら!」
男は、大剣を肩に抱え、兵士達を睨み付けた。
「何、ボーとしてんだ?俺は腹が減ってイライラしてんだよ!手伝え!」
そう言った男は、後ろに続く路上を指差した。
そこには、雄叫びをあげる【醜い人間】と唸り声をはなつ【狼】が徐々に近付いてきていた。その【化け物達】は血で赤く染まり、牙や体には、何かの肉が付着していた。
「行くぞぉ!殺らなきゃ殺られるんだからな!」
男は、抱えた大剣を掲げ上げると、【化け物達】に突撃し、大きく切りかかった。
男の隙を突こうと、【醜い人間】は鋭い爪を振り上げたが、それよりも速く、男の大剣の一振りが【化け物】を肉塊に変えていった。
襲いかかる【化け物達】を大剣で、切り倒すその姿に感銘を受けたのか、お互い頷きながら、【化け物達】に向って行った。
「我々も手伝います!」
一人の兵士が、男の攻撃を避けた【狼】の頭部に槍を突き刺した。
それを、かわきりに兵士達は男の逃した【化け物】に槍で突き刺し、剣で切り倒した。
♪
頭部を突き刺され、真っ赤な目玉を飛び出し、痙攣しながら生き絶えた【狼】に、覆かぶさるように【醜い人間】の胴体が倒れ落ちた。
「ハァ・・ハァ・・」
男と兵士達の周りには、無数の死体が転がっていた。空は、赤く燃え上がるように星が輝き、邪悪で揚々とした光が降り注いでいた。
「おい・・・こいつらは一体何なんだ・・こんな奴等、見た事がない・・・」
「我々にもわかりません、只・・・」
一人の兵士は、飲食街の一本道を指差した。そこには、半円型の建物が遠くに建ち、周りには、赤淡く光に照らされた建物が建ち並んでいた。
「巨大な・・牛のような人間の後ろからこいつらは、現れました・・・」
「そうか、ならその【牛人間】を倒せばいいんだな・・・」
「し、しかし・・我々ではあんな・・巨大な奴に打ち勝つ事は、到底・・・・」
「それでもお前らは、国を守る兵士か?」
「な、なんだと!」
男の一言に、一人の兵士は顔を真っ赤にし怒鳴った。
「たかが流れものの傭兵風情が!」
「傭兵?・・俺は賞金首ハンターだ。」
「はぁ?・・・」
男は真直ぐ前を見据えた。炎は一切上がっていないのにもかかわらず赤く、生臭い匂いが漂っていた。
「こりゃ・・・国王からたんまりと御礼が・・・・・行くぞ、兵士諸君!」
男は腕を高々と上げ、叫んだ。
♪
噴水の水は赤く濁り、傍らには内臓が飛び出した人間の下半身が横たわっていた。既にそこは憩いの場とは思えない、その公園に血に染まった鎧を上下に揺らし、槍を突き刺し払いのける女性がいた。その一刺しは的確に【化け物】の頭部を刺し、【化け物】は死んでいった。
「これで・・・最後か・・」
最後の一刺しを【醜い人間】の頭部を貫通するとそのまま振り上げた。ピンク色の脳が飛び散り、【醜い人間】は後ろに倒れてピクリともしなかった。
「何者なんだ?私はこんな【人間】や【狼】を見た事がない・・」
先程死んだ【化け物】の体を女性はなぞるように触れた。無造作に生える小さな毛は、固く鋭く尖んがっていた。皮は分厚くいくえいにも皺が広がっていた。
「これは生き物なのか・・・しかし、こんな生き物を知らない・・」
女性の背後には、等間隔に木が植え付けられていて、その影から真っ赤な目玉を女性に向ける【狼】がいた。
唸り声を上げて、女性の首筋に狙いを定めた【狼】は女性が立ち上がった瞬間に物凄いスピードで背後から襲いかかった。
飛び上がり、女性の首筋に鋭い牙を突き立てようとした時、女性は振り向かずに、槍を後ろから突上げた。
“グシャ”と刺さり、目玉が飛び出た【狼】はその瞬間、動かなくなった。
「殺気が物凄いな・・・と言う事は、この【化け物達】には【意思】があり、考える事が出来るんだな。」
女性は、後ろを振り向き睨み付けた。木々の間から数十体の【化け物】が唸り声を上げ、迫って来ていた。
しかし、一つだけ違うところがあった。
【狼】は木の影から、こちらを伺っていた。そして、【醜い人間】は兵士が使っていた槍や剣を持ち、構えていたのだ。
「【知識】を得たか・・・だが負けない。」
槍を思い切り振り落とし、突き刺さっていた【狼】を一人の【醜い人間】の顔面にぶつけた。
【醜い人間】の顔面に当たった直後、女性の鋭い槍は既に【死んだ狼】と【醜い人間】の頭部を突き刺していた。
今回から【3ページ】から【2ページ】にする事にしました。理由は特にないですが……
後、選手から自動車学校に通っていますので、更新多分遅れます。ご了承くださいm(_ _)m