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その3

やっと戦いらしき物が始まりました。此所まで、呼んでくださいました読者の皆様。


本当に有り難うございます。m(_ _)m

男の目の前に広がる光景は、想像を絶するものだった。



男の足元で、胸を刺され絶命する兵士。



壁に寄り掛かるようにして、死んでいる首のない死体。



槍を体に突き刺さった状態で白目をむき出しで死んでいる死体。



血が廊下中に広がり、生臭い匂いがして男は口を隠した。



「なんだよこれは・・・残虐過ぎる・・隠れよう・・・・」



「この・・・化け物が!」



部屋の中に戻ろうとした時、廊下の向こう側で叫び声がした。どうやら賊は向こう側で兵士達と戦っているようだった。金属のぶつかる音が、響き渡っていた。



「頑張ってくれ諸君・・・俺は隠れさせてもらう。」



「なんだこいつ!不死身か!」



「人間じゃねぇ!何で【砂】が出てくるんだ!」



奥の方から聞こえてくる言葉に男は耳を疑った。



「・・・砂?兵士は、頭が混乱してるのか・・いや、待てよ・・・確か・・」



男は急いで、部屋に戻ると先程読んでいた本のページを戻した。“ペラペラ”と素早く戻していき、ある内容のページで男は止めた。



タイトルは【神界物語】。



この世界に伝わる【古代時代の歴史】を基づいて書かれたその本には、度々【神】や【魔物】【精霊】が出てきている。その多くが【妄想】と【想像】の渦の物だが、調査により【魔物】は実在していた。



そして、男が止めたページにはこんな事が書かれていた。




【作られし、神王の影は、一つは全てを食べつくし、一つは輝く岩となり、一つは水になり、一つは影になり、一つは化粧をし、一つは火炎となり、一つは砂となる。その不死身の影は・・・】



「まさかな・・・何馬鹿な事を考えてるんだ、俺は?・・・」



既に兵士の声は聞こえてこなかった。男は閉めた扉をジッと見つめると、歩み寄り、鍵を閉めた。



その時、男はある気配を感じた。ドス黒く、無限の闇が続きそうな視線を背中から感じた。


男は後ろを振り返らず、横に素早く転がった。



“ドス!”と目の前で、銀色の装飾が施されたナイフが扉に深々と刺さっていた。



「いつの間に!この賊が!」



ナイフを扉に刺した【血だらけのボロボロの布を被った男】に銃を向けると、いきよいよく引き金を引いた。



硝煙を上げ、弾丸は男の頭に命中し、後ろにのけ反り倒れた。


「こいつ・・・何処から現れたんだ?扉を開ける音さえしなかったぞ・・・」



尚も銃を突き付けたまま、き付けたまま、男は立ち上がると【倒れている男】に近付き茶色の布を剥した。



「これは・・・」



布の下には、男の死体はなく、あるのは“サラサラ”とこぼれ落ちる【砂】だった。



そして、その砂は盛り上がると、いきよいよく【爆発】し、撒き上がった砂が、男の首に巻き付いた。



砂とは思えない力で締め上げて、男は苦しみながらも、首に巻き付く砂を払おうとした。しかし、幾ら払っても砂はなくならず、残りの砂は男の目の前で【別の物】に変わっていた。



「な!・・おま・・・えは・・」



それは、漆黒の瞳を右目から覗かしていて、左目は灰色の前髪で隠されているが、ある特徴を体に醸し出していた。



「まさか・・・女・・の化け物とはな・・魔物は・・全滅した・・・筈・・」



その姿は、正しく女性だった。ある程度の膨らみがあり、軽装で、下半身は砂の渦、そして、少女のような女性は無言のまま、腰に携えたもう一本のナイフを取り出した。



「俺が・・魔物に・・殺される・・だと・・・・・舐めるなぁ・・俺は・・・俺は!」



女性がナイフを振り上げた時、男は咄嗟に女性の目の前で手をかざし、その後ろに銃を重ねた。



「俺は!・・ボルクリフ!・・・ボルクリフ教授だ!」


一発の銃撃と共に、【ボルクリフ】の手を弾丸が貫通し、飛び散る血液と共に、女性の左肩を貫通した。



「!!」



女性は驚き、左肩を触った。右手には燃え上がるような真っ赤な血が付着し、それを、苦しみながらも男は笑いながら見ていた。



「どぉ・・だ・・俺の血は・・【濡れて】・・・【固まる】だ・・ろ・・その右手も・・・もう・・」



男は銃を降ろすと、床に落とし、うなだれた。床に落ちるように倒れた男を、見下しながら、女性の下半身は形を変えて、二本の足になった。



「・・・魔物・・じゃない。」



女性は、床に落ちている布を手に取ると、右手に付着した血を拭き、左肩に強く押さえた。



「人間だ・・・」



女性は、左肩から流れる血を押さえながら、男の読んでいた本を手に取った。表紙が所々汚れて、ボロボロだったが、金箔が施されていた。



「何故・・・この男が、重要文化財の本を持っているか知らないが・・・この本も盗ませてもらう。」



その本を手に持ち、女性は男を跨ぎ、扉のノブに手をかけた。




その時、大きな爆音と共に城が揺れた。



何かに突き上げられるような揺れに、天井に小さなヒビが走り、小さな欠片が“パラパラ”と落ちてきた。



女性は体制を低くし、揺れに耐えていた。そして、その揺れは徐々に弱まり、止った。



「なんだ・・・今の揺れは・・」



女性は、急いで扉を開き、向かい側に位置する窓ガラスから、城下を見た。



「あれは・・なん・・・だ・・」



目の前には、華やかに輝く建物が目に入った。しかしその向こう、街を囲むようにして立つ城壁が大きく崩れ、大きな穴が開いていた。



そして、そこから現れたのは、巨大な、豚のような鼻を持ち、片手には大きな棍棒、紫色の体に頭部には二本の大きな角を持つ、牛のような巨人だった。











それは、本当に突然の出来事だった。大きな揺れと共に、私と兵士長、その他数十名の兵士は、床に這いつくばっていた。



目の前には、多数の死体が激しい揺れに踊るように動いていた。



「くっ!・・なんだこの揺れは・・・【ロザミア補佐長】!君は城の内部の被害状況を確認してくれ!」



「しかし!まだ、賊が・・・」



「君は私に指図をするのか!いいから行って来い!君がいなくても、私達で十分だ!」



「・・・わかりました。」



揺れが収まったあと、私は兵士長とは逆の廊下を走った。後ろでは、兵士長の合図と共に私以外の兵士が掛け声を上げていた。



「何が兵士長だ・・・金で今の地位を貰ったくせに・・憎たらしい!」



すれ違う兵士達は、皆私を馬鹿にしているかのように、目を細くして私の後ろ姿を睨み付けていた。



「女の何が悪い・・・私の方が技量が上なのに・・国王からも信頼されているのに・・・」



私は愚痴をこぼしながらも、【命令】として城内をくまなく調べた。



あの大きな地震だったのにもかかわらず、城内は小さなヒビが入る程度で、損傷もなく、怪我人もいなかった。皆、【歌姫】の歌を聞きに行っているのか、何処の部屋にも人はいなかった。



「異常はなしか・・・【ウ"ェルディ王子】の部屋も見に行くか・・」


「僕なら大丈夫だよ。」



既に【ウ"ェルディ王子】は私の後ろで、寝間着姿のまま、大きな欠伸をして立っていた。


「王子・・無事でしたか。」



「あぁ・・・それよりもあれを見てみろ。」


王子が怠そうに、指を指した所は私の隣りにある色とりどりの大きな窓ガラスだった。



「開けて見てみろよ・・・」



私は窓の鍵を外し、身を乗り出すように外を見た。



そして、私は驚愕した。


余りにも巨大な牛のような動物が、街を破壊しながら進み、その後ろを二本足で歩く不気味な人と、銀色の狼が人々を襲っていた。



「なんだこれは!」



「僕にもわからない・・・只、このままだと・・」



私は王子がいい終わる前に、部屋から出て行った。住人を守るために、王子の言葉を聞いている暇など、私にはなかった。











「なんだ今の地震は・・おい!状況確認だ!後、皆の避難をしろ!」



王様は一人の兵士に命令をすると、隣りにいた王妃、王子に避難するように促した。



「なんじゃ今の地震は・・」



「【ルカ様】も早く避難を・・」



「ふむ・・そうじゃな。【レミナ】と【ネロス】も心配じゃ・・」


【ルカ】は王様に一礼をすると、そそくさと階段を降りて入った。


目の前には、混乱しながらも避難をしている貴婦人達。既に【歌姫】はいなく、王様は拳を握り締めた。



「クソ・・何故この【建国祭】の時期に地震など起きるんだ・・・」



王様は歯を噛み締め、悔しがっていると、舞台に立つ女性を見つけた。黒い髪に、胸元を開けた妖艶なドレスを身に付けた女性は、【歌姫】が出て入った右側の舞台裏に行こうとしていた。



「おい!アイツは誰なんだ!早く降ろせ!」


「は、はい!・・おい、そこのお前!舞台に上がるんじゃない!」


二人の兵士に命令をして、同じく舞台に上がると、女性を押さえようと腕を掴んだ。



その時、掴もうとした兵士の腕が空を舞い、血しぶきを上げて、落ちた。



叫び声の中、もう一人は鞘から剣を抜くと女性に向けた。



しかし、既にそこには女性の姿はなく、それを見ていた人々はどよめいた。



「何をしている!賊が入り込んだのだぞ!探せ!」



腕を切られた兵士を他の兵士に預けて、仲間を呼ぶと、二手に分かれて舞台裏に入って行った。



「クソ・・クソ!なんで賊何かが入り込んでるのだ!」



「王様!大変です!」


「今度はなんだ!」



「はい!街に・・街に巨大な化け物が・・・それに、住人が・・」


「なぁにぃぃ・・・」


王様は、顔を赤くして、目をつり上げていた。そして、兵士の後ろを追うように階段を降りると、外に出た。



「な、なんだ・・・これは・・」



王様は顔を青ざめて立ち尽くし、一点を見つめた。



王様の数百メートル先に、あの巨大な牛のような獣が大地を揺らしながら、ゆっくりとこちらに迫って来ていた。



「何なんだあれは・・・・おい!」



「はっ!」



「あの化け物を追い払え。」



「えっ・・・」



王様の一言に兵士達は驚いた。兵士よりも数十倍巨大な化け物を対峙するなんて誰も考えていなかった。



しかし、勝てる見込みがない戦いを王様はやろうとしていた。



「お前達が守らなくてはいけない物はなんだ!・・・忠誠だろ?」


「し、しかし・・・」


「戦わず、逃げる者は忠誠を誓わない【負け犬】又は【反逆者】だ・・そうだと思わないかね?」



「【負け犬】・・・【反逆者】・・」



兵士達はそれぞれ、顔を見合っていた。【負け犬】【反逆者】という言葉に反応し、兵士達は皆、雄叫びを上げて、槍や剣を持ち、化け物に向かって行った。



「そう、君達は【負け犬】【反逆者】という言葉が嫌いなのだ・・・・【昔の過ち】を犯さないためにも・・私は【王】だ、【王】がいなければ国は成り立たない。」



そう言い残すと、王様は建物の中に逃げるようにして、入って行った。

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