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賞金稼ぎは子守唄を歌う

あぁもう! 昨日出会った占い師がこの場にいたら、わたし全力でそいつのことを殴っていると思うわ! だって、友達にムリヤリ連れていかれた先で出会ったオカマ口調の占い師は「あらん、あなたに明日素敵な出会いが待っているわ! それも運命を変えちゃうほどの、ね」なんて、調子のいいことを言っていたのに、この状況は何なの。


「おらおらあっ、このガキの命が惜しかったらさっさと有り金全部出しやがれぇ!」

「ひゃっはー! アニキかっけぇ! まさに悪人の鑑! いよっ色男!!」


小脇に抱えているわたしのコメカミに銃口を押し当てながら、毛糸で出来た覆面をかぶったデブ男がテンション高めに叫びだす。その横にいる小さな男もテンション高めにデブ男を褒め称えては手をパチパチと叩く。銀行内にいたお客さんや店員さんは、あたしを哀れみの目で見つめながらブルブルと小動物みたいに震えていたわ。

何故こんなことになったかと言うと。

銀行に用事があったわたしが店内に一歩足を踏み入れたとたん、後ろからぬっと現れた大男にひっ捕らえられてしまったの。わたしがえっ? と疑問を感じる暇もなく、しんと静まり返った銀行内で大男が一発銃をうならせれば皆静まり返って、とどめにさっきの一言を発すれば、銀行の人は大男たちの要求をあっさり飲み込んだのだ。小さな村の銀行なので、預けられている額なんてたかがしれているんだけど、大きな街を狙おうとしないあたり、この人たちの小物っぷりが伺える気がするわ。あぁ、そんなやつらに捕まっちゃうわたしもバカなんだけど!


「(運命を変えちゃうほどの出会い、ね。確かに変わるわね、死ぬという方向に)」


あの占い師が悪いわけじゃないんだけど、八つ当たりの対象が彼(?)しか思い浮かばないので、わたしは脳内の彼に思い切り石をぶつけてやることにした。


「しっかしこのガキ、泣き喚きもしねーなぁ」


ぐりっと銃口をあたしの頬に押し当てて、大男は呆れたようにそう呟いた。


「フツーは『ママぁ、パパぁ、助けてしんじゃうよぉ~~~!!』なんて喚きながら暴れてよ、『うっせぇガキ死にてぇのか!!』なんて俺様が怒鳴るパターンだろ?」

「……悪かったわね、冷めてて」


わたしの真似でもしているのだろうか、気持ちの悪い裏声でそう囁く大男に、わたしは鼻を鳴らして大男を見上げた。

そもそもわたしには親がいないの。わたしと同じ年頃の女の子だったら確かにワンワン泣きながら助けを求めるんだろうけど、わたしは物心ついた時からずっと独りだったので、こうやってドライな性格に育ってしまった。というか、10をようやく数えたばかりの子供がたった一人で銀行に来るはずないでしょう。こいつら、アホだわ。


「あのぅ、言われたとおり金を全部バッグに詰めましたが……」


そうこうしているうちにお金をバッグに詰め終えたらしい店員さんが、恐る恐るといった様子で大男に話しかけてきた。


「おお、ご苦労。わが弟よ、中身を確認してこい」

「合点承知でぃっ!」


大男が持つものよりも一回り小さな銃を片手にした小男が、お金の詰まったバッグに飛んでいき、中身をゴソゴソと漁りだした。しかし、バッグを漁る手の動きは数秒で止まってしまう。そして、プルプルと震えながらキィーッと奇声を上げた。


「なんでぇ、こりゃあ! これっぽっちしか入ってねぇって、ナメてるのか!!?」


小男はバッグの中身を床にばら撒いて、泥のついた靴で紙幣を踏み潰した。確かに、金額はあたしから見える場所にあるものを数えても少なかった。ひぃ、ふぅ……ん? 30セクト? これってちょっと小じゃれたホテル1泊ぶんのお値段じゃなかったかしら。


「やいやいっ、アニキは銀行にある金全部詰めろって言ったんだぞ! それを、こんなはした金でゴマかそうだなんてふてぇ野郎だ!」

「ひっ、お、お許しください! 本当に村にある金はそれだけなんですよ! 昨日王国の税収でほとんど巻き上げられてしまって―――」

「貴様、よっぽど命が惜しくないらしいな!!」

「っぎゃあああ!!」


弁明を繰り返す店員にぶちきれたらしい大男が、あたしに突きつけていた銃口を店員に向け、発砲したじゃない!

っだん! という大きな音が響いたかと思えば、グチョリという生々しい音がその後に続いたわ。店員さんが立っていた場所は、まるでトマトをぶちまけたように赤く染まっていた。頭を撃ち抜かれた店員さんの身体が数度身じろぎして、グチャっと音を立てて地面に転がった。


「キャアアアアーーー!!」


恐怖のあまり金切り声を上げた若い女の人が、われ先にと銀行の出口へ駆け出した。しかしそれを逃がすまいと小男の銃が女の人の腹を撃ち抜き、彼女はそのまま床に沈んでいった。いつも柔らかな日差しを受けていた大きな窓が、彼女の返り血を浴びて赤黒く染まっていく。


「っひ、ひどい――― あの店員さん、うそなんかついていないのに……」


胃の底から酸っぱいものがこみ上げてきた私は、口を押さえてうめくようにそう呟いた。こいつらは知らないんでしょうけど、ここいらの税金は異常なまでに高価なのよ。ごうつくばりの貴族が規定の税率を守らなくてムチャな要求を平民にかぶせるあまり、この一帯では貧富の差がそれはそれは激しい。と知り合いの叔父さんがいつも愚痴っていたわ。それでも、たくましく生きていこうとする人々は底抜けに明るくて優しくて―――


「面倒くせぇ! おい全員ぶっ殺して村中の金巻き上げるぞ!」

「いいですぜ、アニキ! 男や子供は真っ先にぶっ殺して、女はそれなりに陵辱してから殺してやりましょうや!」

「きゃあ!」


逃げ惑う人々の頭をぶち抜きながら、大男はわたしを乱暴に床にたたきつけた。骨がミシリといやな音を立てて、口を切ってしまったらしく錆びた鉄の味が口に広がっていった。ゲホゲホとえづくわたしの背後、カチリといういやな音が小さく鳴り響いた。恐る恐る振り向けば、覆面から除く口元をこれでもかと言うほど愉悦に染めた大男が、わたしの頭に向けて銃口の照準を合わせていた。


「いいねぇその顔! やぁっとビビった表情見せてくれたなぁ」

「あ……あぁ……」


生理的にこみ上げる涙をぬぐうこともできず、わたしは歯をガチガチと鳴らす。黒光りする銃口は一寸たりともあたしの頭からずれることなく、焦げたような匂いが鼻先を掠めていった。


「残念だなぁ、お嬢ちゃんあと5~6年もすりゃあいいオンナになってたろうになぁ。恨むんなら、自分の不運さを恨むこった」

「―――ッ」


今すぐここから逃げ出したいのに、足が、身体が言うことを聞いてくれない。

誰か助けてって、思った。

ずっとずーっと独りで暮らしてきて、わたしは心の底から初めてそう感じた。お料理もお掃除も、お洗濯だって何でもひとりでやってきた。他の子が楽しそうにパパやママと手をつないでいるのを見ても嫉妬しないってガマンしてた。わたしはパパやママがいなくたってひとりで何でも出来る、素晴らしく良い子なのよって胸を張っていた、のに……

こんなところで、わたしは死んじゃうの?

小さな子供がたった一人で銀行に来る理由も分からないバカに、殺されちゃうの?


「じゃあな、お嬢ちゃん」


―――たすけて……

誰か、たすけて!!


ッドォオオオオン!!


悔しくて、悲しくて、辛くて。一心に助けを祈るわたしの耳に、大男が放った銃声よりもはるかに大きな音が鳴り響いた。


「な、なんだァ!?」

「あ、アニキ! 奥の壁が!!」


この爆発音は覆面男たちの仕業じゃないみたい。あたふたと周囲を見回しながら、一瞬大男の構える銃がわたしから狙いがそれる。それをチャンスと踏んだわたしは急いで大きな椅子の下に身体をねじ込ませた。隠れるときにガタンって大きな音がしたけれど、彼らはわたしが隠れたことにさえ気づかないくらい動揺している。


「―――ジン、けむい。息が出来ない」

「ゲホゲホッ! ワリィ、ちっと火薬の量間違えたわ! はは、やっぱテキトーに調合するもんじゃねーな、爆弾なんて」

「それに、潜入するという目的だったはずなのでは? これでは相手にもバレてしまって本末転倒だ……」

「いや、こんっなちいせぇ村おそって満足してるよーなバカだから意外と気がついてねーかもよ?」


ややあって、銀行の奥からこの場に似つかわしくないくらいのノーテンキな声がふたつやってきた。もうもうと立ち込める煙から姿を現したのは、二人の若い男。


「(あいつらの仲間―――じゃ、なさそう)」


椅子のしたからそうっと様子を伺うと、ようやくその姿を確認することができたわ。一人はツンツンした赤毛に紫色の瞳をした青年。黄色のスカーフを首に巻いていて、腰には大きな銃とバッグを提げていた。アハハハ、と何がおかしいのか笑い続ける彼は、隣にいる男の人の肩をバシバシ叩いている。その隣の人というのが―――うわぁ、すごい、長い金髪と青い瞳をさせた、まるで王子様のような男だわ。濃紺のスーツを着こなしていて、武器は持っていないっぽいけど……友達のリサが見たら鼻血出してコーフンしそうなくらいのイケメンさんだ。背も隣の赤毛さんより高いし。でも、何だか喋りかたといいい雰囲気といい、若干冷たい印象をわたしは受けた。

二人は惨劇と化した銀行内をぐるりと見回すと、心底嫌そうな顔でため息をついた。


「あーあー、こんなに散らかしやがってよぉ。後で片付けるヤツが大変だろうが!」

「といいつつ蹴るのはどうかと思う」


忌々しそうに足元に転がった死体を蹴った赤毛さんは、隣の金髪さんの言葉を無視してビシリと大男に人差し指をつきつけてニヤリと笑った。


「お前ら、手配書のゲーティスとガルタだな? その首貰ったぜ!」

「ちっ、賞金稼ぎか―――! おいガルタ、こんなヒヨッコさっさと片付けてズラかるぞ!」


舌打ちした大男が一歩踏み出すと、その前に立ちはだかるように金髪さんが立ちはだかった。金髪さんも相当背が高いほうだけど、大男の前に立つと小さく見える。大男はニヤリと意地汚い笑みを浮かべて銃を構えた。


「あんだ、ずいぶんひょろいな。キレーなお顔が傷つく前に、さっさと命乞いしたらどうだ? いや、命乞いの代わりに『アッチ』でご奉仕して貰ってもいいかもなぁ」

「まぁ、それでもいいが」

「(いいのかいっ!)」


大男の言う『アッチ』が何かは分からないけれど、下品な笑いを見てロクでもないことなのは間違いない。金髪さんは小鳥のように首を傾げてそんなことを言ってのけるけれど、彼は大男の頭の先から足元までをジッと見つめた後、ふぅとため息をついた。


「お前は内臓が綺麗じゃないから嫌だ」

「っぐぁあああ!!?」


ばちん、と何かがはじけたような音が響き渡ったかと思えば、次の瞬間金髪さんの手の中には大きな槍が生まれていた。え、槍なんて持っていたのかしらとわたしが疑問に感じるまもなく、金髪さんの槍は大男の右肩付け根に刺さっていた。


「おい、ネクロ! 殺すなよ、生け捕りじゃねーと賞金でねーからな!」

「心得ている」


赤毛さんは、小男をヒネりあげながら(いつの間に倒したのかしら)ネクロという名前らしい金髪さんに忠告した。ネクロさんは痛みで床を転げまわる大男の右肩から槍を引き抜く。槍がネクロさんの手の中に戻ると、それはパチンと音を立てて3つほどに折りたたまれた。どうやら折りたたみ式だったみたいで、槍はネクロさんの腰のベルトあたりに納まった。


「ふぃーっ、楽勝! これで100セクトはチョロすぎんだろ!

……おい、何死体をマジマジ見てるんだネクロ」

「―――内臓が破裂している。せっかく、きれいだったのに」

「っははは、お前のそういうトコ、キモくて嫌いだぜ!」


大男と小男をセットにして縄でグルグル巻きにした二人は、ぽんぽんと手をはたきながら周囲をぐるりと見渡した。どうやら終わったみたい。わたしはおずおずと椅子の下から這い出して二人に近づいていった。そこでようやくわたしの存在に気がついたらしい二人は、わたしをマジマジと見下ろした。


「あー、生き残りってヤツか? 悪ィなもうちょっと早かったらこうはならなかったんだが」

「ジンがモタモタしてたせいだ。朝からサカるなんて、動物じゃあるまいし」

「だってあのボインボインだぜ!? 断る理由ねーだろ、常識的に考えて」

「(……な、なんなのこの人たち)」


死体がゴロゴロと転がっている中、談笑交じりに会話をしてのける彼らにわたしは呆けた視線しか向けることができなかった。賞金稼ぎという職業があるのは知っていたけれど、実際会うのは初めて。自分の命を危険にさらして莫大な報酬を得る仕事らしいけど、そういう人たちって彼らみたいにブッ飛んだ性格しているのかしら。わたしが何も言わずにただジッと見上げていると、赤毛の人―――確かジンって名前だったはず―――が、ひょいっと屈みこんでわたしと目線を合わせた。


「顔とか服に血ィついてんぞ」

「!?」


ジンさんの皮手袋のはまった手が、わたしの頬をすいっと撫でた。皮手袋は黒い色をしていたから分かりにくかったけれど、そこにはぬらぬらと光る血がこびりついていた。そこでようやくわたしは現実に戻ってきて、改めて周囲を見回した。おびただしい数の死体は、ほとんどが原形をとどめていなくて。真っ赤に染まったフロアには、昨日まで知り合いだった人々の臓物が散らばっていた。わたしはサァッと血の気が引くのを感じでその場にへたりこんだ。そこも血で濡れていたけれど、構っていられる余裕なんてなかった。


「かわいそーになァ。これトラウマになったりすんのかな、ネクロ?」

「そうだな。最悪人格に悪影響を及ぼす可能性もある」

「てめー、その能面みてぇな顔で絶望的なこと吐いてんじゃねーよ。しょーがねぇなぁ。ネクロ、お前顔だけはイイんだから、絵本とかに出てくる王子様みてーなセリフ吐いてその子慰めてやれよ」

「さり気なく面倒を押し付けようとしていないか?」

「まっさかぁ~。まぁ死体にしか興味ねぇお前じゃあ、気の利いたセリフのひとつも言えねーか」

「………………」


ものすごく面倒くさそうな顔をさせたネクロさんは、さっきまでの無表情な顔をきれいな微笑みを湛えた表情に変え、わたしの手の甲にキスを落としてそっと抱きしめてきた。本当に王子様のような態度だったけれど、本物の王子様は死体が転がってる血の海でキスなんかしないし、返り血を浴びた服を着ていたりしないはずだ。リサあたりだったら泣いて喜びそうだけど、私は妙に冷静になっていった。

けど、こうやって抱きしめられるのは初めてで。

お父さんがいたらこんな風に慰めてくれるのかな、なんて思ったらちょっぴり涙が出てしまった。


「うし、落ち着いたか。んじゃとっととココ出てこいつら引き渡そうぜ」

「この子はどうするんだ? 服が涙と鼻水でベトベトで嫌なんだが」

「出たらテキトーに村の連中に引き渡せよ」

「(……こいつら)」


中々ひたらせてくれない王子様だわ。まぁ、いつまでも赤ちゃんみたいに抱っこされているのはわたしも嫌だし、そろそろおろしてというべきか。わたしはネクロさんのネクタイをくいっと引っ張って「おろしてください」と告げ―――


ズダダダダダダッ!!


「っわ、なんだよ!!」

「きゃあああっ!?」


突然、銀行の窓という窓がけたたましい音を立てて割れはじめたじゃない!

これにはさすがの二人もびっくりしたようで、ジンさんはカウンターの下へ身を潜ませ、ネクロさんはわたしを抱えたまま大きなソファをひっくり返して盾にした。その間も、ガラスが割れる音は鳴り止まない。どうやら外から銃か何かで攻撃しているみたいだわ。容赦ない攻撃は丈夫にできているはずのソファのふちを易々と削っていった。


「おいネクロと嬢ちゃん、だいじょーぶか!?」

「あぁ、少しかすったが問題ない」

「は、はい、大丈夫です!」


鳴り止まない銃声の中、ジンさんがこちらに声をかけてきた。


「しくったな。こいつら仲間いやがったのか」


振りそそぐ銃弾をかわしながらこちらに走ってきたジンさんは、忌々しそうな顔をさせてさっき捕まえた犯人たちを睨んだ。覆面男たちは、外から打ち込まれる銃弾をまともに浴びてしまったらしく、体中穴だらけになっていた。思わずうっと呻いてしまうわたしに、ジンさんは自分の背中にわたしを押しのけて見えないようにしてくれた。


「小物は小物らしく少数でツルんでりゃあいいものを! さっきチラっと見たら10人くらい外にいたぞ!?」

「そうだな」

「……おい、なんかミョーに落ち着き払っているが、こいつらの他に仲間がいるって知ってたのか?」

「手配書にはきちんと書かれているが」

「あんだとぉ!?」


ネクロさんが懐から取り出した紙を奪い取ったジンさんは、ぷるぷると腕を震わせながら「っだあああ!」と叫んだ。


「知ってたのなら言え! かんっぺき気ィ抜いてたじゃねーか! つか12人で100セクトって割に合わなさすぎだろーが!」

「よく確認もせずにオレに任せきりにしたジンが悪い」

「……今度からぜってぇお前に仕事持ってこさせねぇからな」


ジンさんの背中に隠れているから彼の表情は見えないけれど、きっと額に青筋浮かべて鬼のような形相をしているに違いないわ。はは、と乾いた笑みしか浮かべられず、わたしは外を見やった。二人がケンカを始めた時から銃声は既になりやみ、外からたくさんの怒号とガチャガチャという音が聞こえてきた。わたしは慌ててジンさんの服を掴んで小声で囁いた。


「ねぇっ、その覆面男の仲間がたくさん来たわ!」

「あぁー……どうする、ネクロ? やってもいいけどよ、全員生け捕りにする自信ねぇわ。つか、既に2人死んでるしな」

「割に合わない仕事はしない主義だ」

「お前なー……まぁいいや。んじゃお嬢ちゃん、ちょっと失礼」

「えっ、ひゃあ!?」


突然わたしを小脇に抱えたジンさんは、今しがた銀行の中に入ってきた犯人たちめがけて何か小さなものを投げつけた!

かこん、という音を立てて地面を数度転がるそれに、犯人たちもわたしも思わず目で追ってしまうが、次の瞬間眩いばかりの閃光があふれ出して目を焼いた。それはわたしだけじゃなく犯人たちも同じで、「うぐぉお!」なんて情けない悲鳴をあげていた。目が痛くて瞼を開けることさえできないわたしを抱えたまま、ジンさんとネクロさんはどこかへ向かって駆け出した! 「ま、待て!」と悲鳴じみた声が背後から上がって銃声が響いたけれど、どうやら見当違いの方へ撃ってるみたいで当たりはしない。


「ジン、その子どうするんだ?」

「あの場に放っておくわけにもいかねーだろ! とりあえず連れて行くわ」

「きゃ、ぁああああ、ひた、ひたはんはー!(舌噛んだー!)」


荷物よろしく謎の賞金稼ぎたちに連れ去れたわたし。

ふと脳裏に昨日出会ったオカマ占い師のしたり顔が浮かんできて、もしかして昨日の彼が言っていた「すてきな出会い」って―――

……だとしても、わたしは脳内の彼をサンドバッグにすることをやめないけど。

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