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花園王子と薔薇の騎士  作者: さいべり屋


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2

ガシャン、ガシャン、ガシャン。


ガシャン、ガシャン、ガシャン。


背後をぴたりと付き従う鎧の音が、リュシアンの神経を逆撫でした。


「……ねえ、どこまでついてくるつもり?」


「どこまででも」


鎧の返答には取り付く島もない。


「困るよ。こんな重装鎧を従えてたら女の子が怯えちゃうし。それに──」

「リュシアン、様」


囁くような震え声にリュシアンはハッとした。見れば、小柄な少女が回廊の隅に佇んでいた。


「お話中、申し訳ございません。でもわたくし、どうしても今日お伝えしたいことがございまして……。花を、つけてまいりましたの」


リュシアンは少女に駆け寄った。髪に挿された小さな花に、キスするように顔を近づけると、大きな瞳に涙が浮かんでいるのがわかる。


「そうなんだ、ごめんね。この鎧がうるさくて、気づかなくってさ。──リモネラちゃん。花をつけてきてくれて、ありがとう」


爽やかな花の香を胸に吸い込みながら、少女の肩を抱いて鎧から隠し、視線だけで強く牽制した。


そのまま少女──リモネラと少し話してから別れ、再び歩き始めてからも、リュシアンはイライラを止められなかった。


「……先ほどのご令嬢は、リュシアン様の恋人ですか」


「まさか! 婚約者とすれ違いがあってね。相談に乗っていただけだよ」


リュシアンはギリリと鎧を睨みつけた。


「お前のせいだよ。その鎧が、そんなにうるさい音を立てて、鉄の臭いで僕をいっぱいにするから。──彼女に気付いてあげられなかった。ちゃんと花をつけててくれたのに」


「しかし、この装備は王太子殿下が──」重装騎士は言いかけて、


「善処、します」とだけ言い直した。


そこでリュシアンはやっと語気を緩めた。


「君、名前なんだっけ」


「ハッ、ローゼンステインと申します」


「固い名前だなぁ。ローゼン…じゃあ、ローズね。君は今からローズ。僕の花園にまだ男は入れたことないけど」


リュシアンは自分の泣きぼくろに手をやると、悪戯っぽく微笑んだ。


なんてことのない仕草なのに、絞れば滴るほどの色気を湛えている。


「君は特別。ね」


第二王子の花園に、異色の鎧が加わった。


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