表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花園王子と薔薇の騎士  作者: さいべり屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/15

11

「──もう、気付いてるんでしょ」


長い沈黙の後、口火を切ったのはリュシアンだった。


ローズはそれに答えなかったが、思い当たることがいくつもあった。


  赤色過多の華美な装い。


  粗末な照明の下に並んだ赤と緑の扉。


  「そういえば、君もピンク髪だって言ってたよね」目の前に見えているのに、伝聞のような話し方。


  大きな音と鉄の臭いのする鎧を過剰なまでに忌避したこと。


  「女の子の顔なんて、いちいち覚えちゃいられないよ」突き放したような言い方と、花を飾る乙女たち──。


「僕の見えてる世界は、ほかの人とは違うみたいだ。僕にはあの扉が同じに見えていた」


ローズは頷いた。リュシアンは恐怖に竦んでいたのではない。どちらが赤い扉なのか判らなかったのだ。


「視力も弱い代わりに、鼻と耳だけは鋭くてね。あの花は、僕にとっては名札代わりだった」


ローズはまた頷いた。頷くしかできなかった。


「君の傷も、君の髪色も、僕にとっては何の意味もない。……分かるだろう? 王統を繋ぐのは、僕の血であってはならない」


「──医者に、掛かったりなどは」


堪らず問うたローズにリュシアンは首を横に振った。


「下手な者に王家の弱みを握られる訳にはいかないよ。……でも」


泣き出しそうな笑顔が一瞬だけ雲間月に照らされ、またすぐに見えなくなった。


「学園時代に、なんでも治すって噂の女の子がいてね。何度か通ってみたことがあったよ。


本当のことなんて言えるわけもないから、ただ手を握ってみただけだけど。


……でも、だめだった。生まれつきの特徴は病気じゃないから、治癒魔法では治らないみたい」


「……リュシアン様」


言葉を失ったローズの陶器のように硬質な指先を、リュシアンはぎゅっと握った。


「でも、見る力と引き換えに"リュート"を手に入れたと思えば、悪くはないって思ってるよ」


月が雲間から顔を出す度、ちらちら照らされるその姿は、太陽神のような美貌の王子とはまるで別人のようだった。


ローズは力を入れたら壊れてしまいそうな華奢な青年の手を、いつまでもそっと包んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ