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蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


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第32話 天空竜と継承者の使命

翠嶺の館の朝は、いつもと違う神聖な空気に包まれていた。

 天空竜アイテールが館の上空を優雅に旋回し、その翼から散る光の粒子が朝露のように輝いている。

 アルト・ウィンドブレイカーは訓練場で剣を振るっていたが、集中できずにいた。

  昨夜の天空竜の言葉が頭から離れない。


「真の試練とは、一体何なんだ」


 そこへセレス・サファイアウィングが現れた。


「おはよう、アルト。 眠れなかったのね」


「セレス...君もか」


「ええ。 アイテール様の言葉が気になって」セレスが空を見上げた。「でも、答えはすぐに分かりそうよ」


 その時、空から天空竜が降下してきた。

 着地と共に、訓練場が神々しい光に包まれる。


『継承者たちよ、時が来た』


 アイテールの声が響いた。


『真の使命について話そう』


「使命...ですか?」アルトが前に出た。


『そうだ。 お前たちが選ばれた理由、そして今後背負うべき責任について』


 アイテールの瞳が深い金色に輝いた。


『千年前、三大竜は人間と盟約を結んだ。 しかし、それは単なる平和協定ではない。 この世界に迫る大いなる脅威に対抗するためだった』


「大いなる脅威?」


 セレスが尋ねた。


『闇の竜、ヴォルガリムだ』


 その名前を聞いた瞬間、アルトとセレスの体に戦慄が走った。


『ヴォルガリムは破壊と混沌を愛する古代竜だ。 千年前、我々三大竜と人間の勇者たちが力を合わせ、遥か彼方の次元に封印した』


「それが今、脅威になるというのですか?」アルトが緊張した声で聞いた。


『封印が弱くなっている。 あと数ヶ月で完全に解けるだろう』


 皇帝マクシミリアン三世とグスタフ元帥が急いで訓練場に駆けつけてきた。


「天空竜様、一体何が」


 皇帝が息を切らして尋ねた。


『皇帝よ、そしてグスタフよ。 お前たちにも聞いてもらいたい』


 アイテールは四人を見回した。


『ヴォルガリムが復活すれば、この世界は再び混沌に陥る。 都市は灰燼に帰し、生命は絶望に支配される。 それを防ぐためには、新たな封印術が必要だ』


「新たな封印術...」


 グスタフ元帥が眉をひそめた。


「我々にできることなのですか?」


『できる。 だが、簡単ではない』


 アイテールが翼を広げた。


『蒼竜、金竜、天空竜の力を一つに束ね、人間の継承者たちと完全に同調する必要がある』


 セレスがアルトの手を握った。


「つまり、私たちが鍵になるということですね」


『その通りだ。 しかし、同調には大きな危険が伴う。 失敗すれば、継承者たちの命に関わる』


 皇帝が一歩前に出た。


「危険を承知でも、我々は挑戦しなければなりません。 帝国の、いえ、世界の未来がかかっているのですから」


『マクシミリアン、お前の覚悟は理解した。 だが、決断するのは継承者たちだ』


 アルトは深く息を吸った。


「僕は挑戦します。 これが継承者としての使命なら、逃げるわけにはいかない」


「私も同じ気持ちです」


 セレスが力強く答えた。


「アルトと一緒なら、どんな困難も乗り越えられます」


 グスタフ元帥が膝をついた。


「では、私にも手伝わせてください。 贖罪の意味も込めて」


『グスタフ、お前の父エルンストもかつて同じことを言った。 血は争えないものだな』


 アイテールの表情が少し和らいだ。


『では、修行を始めよう。 まず、お前たちは他の二大竜と正式に対面する必要がある』


「ガルム爺さんのゴールデンクロウ以外にも?」


 アルトが聞いた。


『ゴールデンクロウ、そして氷の大地に住む青氷竜イヴェルナだ。 三大竜の力を理解し、それぞれと絆を深めなければならない』


 その時、空の彼方から美しい鳴き声が聞こえてきた。

 金色の光が近づき、ゴールデンクロウが姿を現した。


『アイテール、久しいな』


 ゴールデンクロウの威厳ある声が響いた。


『ゴールデンクロウ、よく来てくれた』


 二大竜が空中で挨拶を交わす光景は、まさに神話の世界のようだった。


『孫よ』


 ゴールデンクロウがアルトに声をかけた。


『覚悟はできているか?』


「はい、ガルム爺さん」


『ならば良い。 だが、イヴェルナに会うのは容易ではない。 氷の大地は過酷で、普通の人間では近づくことすらできない』


 皇帝が口を開いた。


「帝国の秘宝庫に、耐寒の護符があります。 それがあれば...」


『それでも足りない』


 アイテールが首を振った。


『氷の大地は物理的な寒さだけではない。 精神的な試練の場でもあるのだ』


 セレスが決意を込めて言った。


「それでも行きます。 世界の未来のために」


『その意気だ』


 ゴールデンクロウが満足そうに頷いた。


『では、明日の夜明けに出発する。 準備を整えよ』


 夕刻、アルトとセレスは館の図書室で氷の大地について調べていた。

 古い文献には、イヴェルナの試練について断片的な記述があった。


「『氷の心を溶かす者のみが、真の青氷竜と対話できる』...謎めいた表現ね」


 セレスが本を読み上げた。


「心を溶かす...愛情や友情のことかな」


 アルトが考え込んだ。

 グスタフ元帥が部屋に入ってきた。


「準備はいかがですか? 私も同行させていただきたいのですが」


「元帥も? 危険な旅になりますよ」


 アルトが心配そうに言った。


「だからこそです。 私の過去の過ちを償う機会をください」


 皇帝も現れた。


「グスタフの気持ちは分かる。 しかし、帝国にも彼の力が必要だ」


「陛下...」


「代わりに、私が同行しよう。 皇帝として、この使命に責任を持ちたい」


 その夜、四人は最終準備を進めた。

  耐寒具、食料、そして古い魔法の道具を用意する。

 アイテールが窓の外から声をかけた。


『明日からは、今までとは比べものにならない試練が待っている。 だが、お前たちなら乗り越えられる』


 アルトは星空を見上げながらつぶやいた。


「ヴォルガリム...一体どれほど強大な存在なんだろう」


 セレスが隣に立った。


「分からないけれど、私たちには仲間がいる。 きっと道は開けるわ」


『その通りだ』


 アイテールの声が夜風に乗って響いた。


『明日、新たな章が始まる』


 翌朝、朝靄の中を四人と二大竜が氷の大地へと向かった。

 遥か北方に広がる白銀の世界で、青氷竜イヴェルナとの対面が待っている。

 アルトは旅立ちながら心に誓った。

 どんな試練が待ち受けていようとも、継承者としての使命を全うすると。


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第32話 完

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