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蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


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第26話:古代の秘密

フェルナンド王都クリスタルハートに戻ると、ゴールデンクロウの同行は街中に大きな騒動を巻き起こした。

 金竜という伝説級の存在が調和者と共に現れたことで、人々の反応は恐怖と驚異が入り混じったものだった。


「信じられません...本物の金竜が」


「調和者は本当にすごい力をお持ちなのですね」


「でも、あんな巨大な竜が街にいて大丈夫なのでしょうか?」


 街角で囁かれる声を聞きながら、アルトは責任の重さを改めて感じていた。


『人間たちの反応は様々だな』


 ゴールデンクロウが空中を飛行しながらテレパシーで話しかけてくる。


『恐怖、好奇心、畏敬...複雑な感情が渦巻いている』


「最初はそういうものです」


 アルトが馬車の中から応答する。


「大切なのは、時間をかけてお互いを理解することです」


 王宮に到着すると、ロバート王と重臣たちが緊張した面持ちで待っていた。

 金竜の来訪は、フェルナンド王国始まって以来の出来事だった。


「ゴールデンクロウ殿」


 ロバート王が王宮の中庭で金竜を迎える。


「我が国への訪問を歓迎いたします」


『ロバート王よ』


 ゴールデンクロウが優雅に着地して、王に向き直る。


『汝の歓迎に感謝する。我は敵として来たのではない』


「承知しております。調和者から事情は伺いました」


 王の表情に安堵が浮かぶ。


「古代の契約書について、我が国の魔法学院で全面的に協力させていただきます」


 エリザベス王女が前に出る。


「父上、すぐに学院の古代文書庫を調査しましょう」


「そうだな。ゼノン学院長を呼んでくれ」


 しばらくして、フェルナンド魔法学院の学院長ゼノン・クリスタルマインドが到着した。

 七十代の老魔法使いで、古代魔法学の権威として知られている。


「陛下、お呼びでしょうか?」


「ゼノン、重要な調査を依頼したい」


 王が古代契約書の件を説明すると、ゼノンの目が興味深く輝いた。


「千年前の竜族との契約書ですか...確かに、そのような文書の断片的な記録は残っています」


『本当か?』


 ゴールデンクロウが身を乗り出す。


「はい。ただし、完全な形ではなく、様々な文書に分散して記録されているようです」


「すぐに調査を開始しましょう」


 アルトが提案する。


「時間をかければ、必ず手がかりが見つかるはずです」


 魔法学院の古代文書庫は、王宮の地下深くにある巨大な施設だった。

 数千年分の魔法的記録が保管され、その規模はエルドラン王国の図書館を遥かに上回る。


「すごい蔵書数ですね」


 アルトが感嘆の声を上げる。


「我が国の魔法学の歴史が全て詰まっています」


 エリザベス王女が誇らしげに説明する。


『これだけあれば、契約書の手がかりも見つかるだろう』


 セレスが期待を込めて呟く。

 ゼノン学院長が古い索引を調べながら、関連文書を探し始めた。


「まず、千年前の時代区分から...ああ、ありました」


「何が見つかったのですか?」


「『黄金の盟約』という記録です。内容は断片的ですが、金竜族に関する記述があります」


 ゼノンが古い羊皮紙を慎重に広げる。


「『金の翼を持つ守護者たちとの誓約により、我らの土地に平和と繁栄がもたらされた』...このような記述があります」


『これだ』


 ゴールデンクロウが興奮している。


『間違いない。我が先祖との契約に関する記録だ』


「他にも関連文書があるか調べてみましょう」


 調査チームが分かれて文書庫を徹底的に調べると、次々と関連する記録が発見された。


「こちらに『天災防御の儀式』についての記録があります」


「こっちには『竜族への献上品リスト』が」


「災害記録にも金竜の活動が記されています」


 数時間の調査の結果、古代契約の全貌が少しずつ明らかになってきた。


「整理すると」


 エリザベス王女が調査結果をまとめる。


「千年前、フェルナンド王国は度重なる自然災害に苦しんでいた」


「そこに金竜族が現れて、人間との契約を提案した」


 アルトが続ける。


『その通りだ』


 ゴールデンクロウが頷く。


『我らは人間を災害から守る代わりに、敬意と感謝、そして定期的な交流を求めた』


「しかし」


 ゼノン学院長が重要な文書を発見する。


「この記録によると、約二百年後に何らかの『大いなる誤解』が発生したようです」


「誤解?」


「詳細は不明ですが、人間側が契約を一方的に破棄し、金竜族を『危険な存在』として封印魔法をかけたと記されています」


『なんと...』


 ゴールデンクロウの声に悲しみが混じる。


『我らは裏切られたのか』


「でも、なぜそんなことが?」


『これを見てください』


 セレスが別の文書を発見した。


『ここに『偽りの預言者』について書かれているわ』


 文書には、当時現れた謎の人物が人々を扇動し、竜族への恐怖を植え付けたという記録があった。


「『偽りの預言者は竜族の恐ろしさを説き、人々の心に疑念の種を蒔いた』」


 アルトが文書を読み上げる。


「『その結果、長く続いた平和の契約は破られ、金竜族は姿を消した』」


『偽りの預言者...』


 ゴールデンクロウが考え込む。


『その者の正体は分からぬか?』


「残念ながら、名前も正体も記録されていません」


 しかし、アルトは別のことが気になっていた。


「この『偽りの預言者』の手法...どこかで聞いたことがあります」


『まさか...』


 セレスがハッとした表情を見せる。


『ダーククロウのやり方と似ているわ』


「そうです。人々の心に恐怖を植え付けて、調和を破綻させる」


 アルトの推測に、一同が緊張する。


「もしかすると、同じような組織が千年前から活動していたのかもしれません」


『だとすれば』


 ゴールデンクロウが立ち上がる。


『我が一族が受けた屈辱の真の原因も、その組織にあるということか』


「可能性は高いと思います」


 その時、文書庫の奥からゼノン学院長の興奮した声が聞こえてきた。


「皆さん、とんでもないものを発見しました!」


 急いで駆けつけると、ゼノンが巨大な石板を発見していた。


「これが...オリジナルの契約書です」


 石板には古代竜語と人間の古代文字で、詳細な契約内容が刻まれている。


『我が探していたものだ』


 ゴールデンクロウが感動している。


『ついに見つかった』


 契約書には、人間と金竜族の詳細な協力内容が記されていた。

 災害防止、農業支援、魔法技術の交換、文化的交流など、まさに理想的な調和関係だった。


「素晴らしい内容ですね」


 エリザベス王女が感嘆する。


「これを参考にすれば、現代でも同様の関係を築けるのではないでしょうか?」


『その通りだ』


 ゴールデンクロウが誇らしげに胸を張る。


『この契約を復活させよう。今度こそ、永続的な調和を』


「でも」


 アルトが慎重に言う。


「まずは人々の理解を得る必要があります。千年の空白は簡単には埋められません」


『もちろんだ。焦りは禁物』


「段階的に進めましょう」


 エリザベス王女が提案する。


「まず王都で小さな協力から始めて、徐々に全国に広げていく」


 こうして、フェルナンド王国での調和活動に重要な指針が生まれた。

 古代の契約書は、人間と竜族が協力できることの証明であり、未来への道しるべでもあった。

 しかし、アルトの心には新たな懸念もあった。千年前の「偽りの預言者」と現代のダーククロウとの関連性。

 もし同じ組織が今も活動しているなら、フェルナンドでも妨害工作が始まるかもしれない。


『アルト、心配しているの?』


 セレスがアルトの不安を察する。


「少し。でも、今度は準備ができています」


 アルトが竜心石を握りしめる。


「ゴールデンクロウという強力な仲間もいますし」


『そうね。きっと大丈夫』


 その夜、王宮の庭園でゴールデンクロウと語り合いながら、アルトは明日からの本格的な調和活動に向けて決意を新たにしていた。

 古代の秘密が明かされた今、真の調和への道筋が見えてきた。

 しかし、それは同時に新たな試練の始まりでもあった。


第26話 完


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