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蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


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第23話:新たなる絆の証

ダーククロウ事件から一ヶ月が過ぎた。

 王都アルデンでは、人間と竜族の協力関係が飛躍的に発展していた。

 街角では竜族が商人として店を構え、人間の子供たちが竜の子供たちと一緒に遊ぶ光景が当たり前になっている。

 調和事務局にも、今では協力要請の案件ばかりが寄せられるようになっていた。


「アルト様、素晴らしいニュースです」


 エミリーが興奮した様子で報告書を持参した。


「各地の協力プロジェクトが軒並み大成功を収めています。グリーンヴァレー村の収穫量は前年比三倍、ストーンブリッジ町の新建築技術は王国中の注目を集めています」


「それは良かった」


 アルトが微笑む。


「でも、これは僕一人の成果ではありません。みんなが協力してくれたからです」


『そうよ。でも、アルトの調整能力があってこそよ』


 セレスがアルトの肩で誇らしげに羽を震わせる。

 その時、マーカス院長が重要そうな表情で事務局に入ってきた。


「アルト君、王から特別な任務を頂いた」


「特別な任務ですか?」


「隣国フェルナンド王国からの使者が到着する。彼らも竜族との調和政策について学びたいということだ」


 アルトの表情が引き締まる。

 これまでは国内の問題だったが、ついに国際的な場面に調和の理念が広がろうとしているのだ。


「いつ到着されるのですか?」


「明日の午後だ。使節団の中には、フェルナンド王国の第一王女、エリザベス・フェルナンドも含まれている」


『王女様?』


 セレスが興味深そうに首をかしげる。


「はい。彼女は魔法学に造詣が深く、特に古代魔法の研究で有名な方です」


 翌日、王都の正門には盛大な歓迎の準備が整えられていた。

 エルドラン王国とフェルナンド王国の国旗が風になびき、楽隊が荘厳な音楽を奏でている。


「緊張しますね」


 アルトが正装に身を包みながら呟く。

 調和者としての正式な礼服は、青と白を基調とした美しいデザインで、胸元には竜心石が誇らしげに輝いている。


『大丈夫よ、アルト』


 セレスも特別な装飾品を身に着けている。

 蒼い鱗を際立たせる銀のアクセサリーで、竜族の正装として作られたものだった。

 午後二時、フェルナンド王国の使節団が到着した。

 先頭を行く馬車から降りてきたのは、二十代前半と思われる美しい女性だった。

 金色の髪を上品にまとめ、深緑のドレスを着た彼女こそ、エリザベス王女だった。


「ようこそ、エルドラン王国へ」


 アルバート王が正式な挨拶を述べる。


「お招きいただき、ありがとうございます」


 エリザベス王女の声は清楚で上品だが、その瞳には強い意志の光が宿っている。


「こちらが調和者のアルト・ウィンドブレイカーです」


 王がアルトを紹介すると、エリザベス王女の視線がアルトとセレスに注がれた。


「噂に聞く竜語りですね。そして、美しい蒼竜も」


「光栄です、王女殿下」


 アルトが丁寧に礼をする。


『お会いできて嬉しいです』


 セレスがテレパシーで挨拶すると、エリザベス王女の目が驚きで大きく開かれた。


「まあ...本当にテレパシーで会話を」


「驚かれましたか?」


「いえ、感動しています。古代の文献でしか読んだことがなかった竜語りの力を、実際に目にするとは」


 その日の夕方、王宮の迎賓館でエリザベス王女との詳しい会談が行われた。


「実は、我がフェルナンド王国でも竜族の目撃情報が増えているのです」


 王女が説明する。


「しかし、残念ながら良好な関係を築けずにいます」


「どのような問題が?」


「恐怖と偏見です。長い間竜族を伝説の存在として恐れてきたため、実際に現れると人々は混乱し、時には攻撃的になってしまいます」


 アルトは頷いた。

 エルドラン王国でも最初は同じような問題があった。


「具体的にはどのような事例が?」


「先月、山間部の村に水竜が現れました。彼は干ばつに苦しむ村に雨をもたらそうとしたのですが、村人たちは魔物の攻撃だと思い込んで...」


 王女の表情が暗くなる。


「騎士団が出動し、水竜を追い払ってしまいました。その後、その地域は更なる干ばつに見舞われています」


『それは悲しい話ね』


 セレスが同情するように鳴く。


『きっとその水竜は、人間を助けたかっただけなのに』


「おそらくそうでしょう。だからこそ、あなた方の成功例を学びたいのです」


 エリザベス王女がアルトを見つめる。


「どのようにして人々の心を変えることができたのですか?」


アルトは慎重に答えた。


「まず、お互いを理解することから始めました。人間の恐怖も、竜族の誇りも、どちらも正当な感情です」


「正当な感情?」


「はい。長い間離ればなれだった者同士が再び出会うとき、戸惑いや不安があるのは自然なことです。それを否定するのではなく、認めた上で解決策を見つけるのです」


 王女が興味深そうに身を乗り出す。


「具体的な方法を教えていただけますか?」


「まず、小さな成功例を作ることです。一つの村、一つの問題から始めて、徐々に信頼関係を築いていく」


 アルトがグリーンヴァレー村での経験を詳しく話すと、王女は熱心にメモを取った。


「素晴らしいアプローチですね。段階的に進めることで、人々の心の準備も整うということですね」


「そうです。そして最も重要なのは...」


 アルトがセレスを見つめる。


「竜語りが仲介役として、両者の架け橋になることです」


『でも、竜語りがいなくても大丈夫よ』


 セレスが補足する。


『心を開いて話し合えば、きっと理解し合えるもの』


 翌日、エリザベス王女は王都の各協力現場を視察した。

 レッドクローがグリーンヴァレー村で農業指導をする様子、ロックハンマーがストーンブリッジ町で建築技術を教える光景を実際に目にして、深い感銘を受けていた。


「信じられません...これほど自然に協力し合っているとは」


「最初から順調だったわけではありません」


 アルトが正直に説明する。


「数多くの問題や衝突もありました。でも、諦めずに話し合い続けた結果です」


 視察の最終日、エリザベス王女から提案があった。


「アルトさん、お願いがあります」


「何でしょうか?」


「フェルナンド王国に来て、調和の取り組みを指導していただけませんか?」


 アルトは驚いた。

 他国での調和活動など、考えたこともなかった。


「僕でよろしいのでしょうか?」


「あなた以外に適任者はいません」


 王女の瞳に真剣な光が宿る。


「我が国の人々と竜族を救ってください」


『アルト、行きましょう』


 セレスが励ますように言う。


『困っている人たちがいるなら、助けなければ』


 その夜、王宮でアルバート王との相談が行われた。


「フェルナンド王国への派遣ですか」


「はい。国際的に調和の理念を広める良い機会かもしれません」


 王は慎重に考えた後、頷いた。


「分かりました。ただし、十分な護衛をつけましょう」


「ガーディアン・マグナスとゼファーに同行してもらえれば十分です」


 こうして、アルトの新たな使命が決まった。

 フェルナンド王国での調和活動という、国際的な挑戦の始まりだった。

 出発の前日、仲間たちとの送別会が開かれた。


「気をつけてな、アルト」


 ガルムが孫を抱きしめる。


「必ず無事に帰ってくるのじゃぞ」


「はい、じいちゃん」


『我々も応援しているぞ』


 レッドクローをはじめとする竜族たちも見送りに来ている。


『新しい土地でも、きっとうまくいく』


「みんな、ありがとうございます」


 アルトが仲間たちを見回す。


「ここで学んだことを、フェルナンド王国でも活かします」


 翌朝、アルト、セレス、ガーディアン・マグナス、ゼファー、そしてエリザベス王女一行は、フェルナンド王国へと向かった。


『新しい冒険の始まりね』


 セレスが空を見上げる。


「そうですね。でも、僕たちなら大丈夫」


 アルトが竜心石を握りしめる。

 石は温かく光って、新たな挑戦への励ましを送っているようだった。

 調和の理念を世界に広める、新たな物語の幕が上がろうとしていた。


第23話 完

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