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蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


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第20話:広がる調和の輪

グリーンヴァレー村での成功は、瞬く間に王国中に広まった。

 人間と竜族の共生契約という前例のない取り組みが、各地で話題となったのだ。

 王都の調和事務局には、連日のように各地からの相談や協力要請が寄せられるようになった。


「アルト様、今日だけで十五件の新しい案件が...」


 エミリーが山のような書類を抱えて事務局に駆け込んできた。


「どのような内容ですか?」


「水竜との水利権争い、風竜による竜巻被害、地竜の穴掘り騒動...様々です」


 アルトは頭を抱えた。

 成功例ができたことで、かえって問題が表面化してきたのだ。


『でも、これは良いことよ』


 セレスが励ますように言う。


『今まで隠れていた問題が明らかになったということは、解決への第一歩』


「そうですね。一つずつ丁寧に対応していきましょう」


 その時、マーカス院長が慌てた様子で事務局に入ってきた。


「アルト君、大変だ。西部のストーンブリッジ町で大きな問題が発生している」


「どのような?」


「地竜が町の地下に巨大な洞窟を掘って、建物の土台が不安定になっている。住民たちは避難を余儀なくされているが、地竜は工事を止めようとしない」


「地竜との交渉ですね」


 アルトが立ち上がる。


「すぐに向かいましょう」


「しかし、今度の相手は手強いぞ」


 マーカス院長が警告する。


「ロックハンマーという名前の地竜で、非常に頑固で知られている」


『地竜族は一般的に内向的で、他者との交流を好まないのよ』


 セレスが説明する。


『説得するのは難しいかもしれないわ』


 ストーンブリッジ町は王都から西に三日の距離にある、石工の町として有名な場所だった。

 しかし、一行が到着すると、町は大混乱に陥っていた。


「調和者様!」


 町長のマーカス・ストーンが一行を出迎える。


「状況は深刻です。昨日また新しい陥没が発生して...」


 町を案内してもらうと、確かに深刻な状況だった。

 あちこちで地面に穴が開き、建物が傾いている。

 住民たちは不安そうに荷物をまとめている。


「地竜はどこにいるのですか?」


「町の中央広場の下です。巨大な洞窟を掘り続けています」


 広場に行くと、地面から低い唸り声と、土を掘る音が響いてきた。


「ロックハンマー、出てきて話をしませんか?」


 アルトが地面に向かって呼びかける。

 しばらく沈黙があった後、地面が盛り上がり、巨大な地竜が姿を現した。

 ロックハンマーは茶色と灰色の鱗を持つ巨大な竜で、前足には強力な爪が付いている。

 その体格は他の竜族とは一線を画す、まさに地中の王者といった風格だった。


『何の用だ、調和者とやら』


 ロックハンマーの声は低く、地響きのように響く。


『我の作業を邪魔するな』


「作業とは、この洞窟掘りのことですか?」


『そうだ。我は重要な工事をしているのだ』


「どのような工事ですか?住民たちは困っています」


『知らん。人間の都合など我には関係ない』


 ロックハンマーが素っ気なく答える。


『我は古代の約束を果たしているだけだ』


「古代の約束?」


『千年前、我ら地竜族はこの地に地下都市を建設する契約を結んだ。その工事を完成させているのだ』


 町長が驚く。


「千年前の契約など、聞いたことがありません」


『人間が忘れただけだ』


 ロックハンマーが地面を叩く。


『我らは約束を守る。それが地竜族の誇りだ』


 アルトは状況を理解した。

 これもまた、古代の契約と現代の生活との衝突だった。


「ロックハンマー、その地下都市とはどのようなものですか?」


『素晴らしい都市だ』


 ロックハンマーの瞳が輝く。


『地上と地下を結ぶ、人間と地竜が共に暮らす理想の都市』


「人間と地竜が共に?」


『そうだ。人間の建築技術と地竜の掘削技術を合わせれば、世界最高の都市ができる』


 町の石工たちが興味深そうに聞いている。


「それは...素晴らしいアイデアですね」


 石工の棟梁が前に出る。


「我々石工にとって、地竜族の技術は憧れです」


『ほう』


 ロックハンマーが初めて興味を示す。


『人間にも石の心を理解する者がいるのか』


「はい。この町の人々は皆、石を愛し、石と共に生きています」


 アルトは新たな解決策を思いついた。


「ロックハンマー、提案があります」


『何だ』


「地下都市の建設を続けるのは構いません。しかし、地上の町と調和する設計にしませんか?」


『調和する設計?』


「はい。地上の建物を支える支柱として地下構造を使い、地上と地下を結ぶエレベーターや通路を設ける。そして、石工たちと地竜が協力して、両方の技術を活かした建築を行う」


 石工たちの目が輝いた。


「それは革命的なアイデアです!」


「地下に工房を作れば、一年中安定した温度で作業できます」


「地竜族の掘削技術を学べれば、我々の技術も向上します」


 ロックハンマーも興味深そうに聞いている。


『人間の建築技術も学べるということか?』


「もちろんです。お互いの技術を教え合いましょう」


 町長が提案する。


「新しいストーンブリッジ町を、人間と地竜の協力で作り上げませんか?」


 ロックハンマーが長い間考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。


『面白い。やってみよう』


 こうして、ストーンブリッジ町では人間と地竜の合同建築プロジェクトが始まった。

 数ヶ月後、新しいストーンブリッジ町は観光名所となっていた。

 地上と地下が美しく調和した建築は、王国中から見学者が訪れるほどの話題となった。


「素晴らしい成果ですね」


 マーカス院長が感心している。


「地竜族の技術と人間の技術が見事に融合している」


『ロックハンマーも楽しそうよ』


 セレスが地下工房で石工たちと作業をしている地竜を見ながら言う。


『やっぱり、みんな心の底では協力したがっているのね』


 しかし、アルトの仕事はまだ終わらない。

 調和事務局には今日も新しい案件が山積みになっていた。


第20話 完



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