表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/39

第17話:調和の宣言

王都の危機が去った翌日、王宮の大広間では緊急会議が開かれていた。

 エルドラン王国の王、アルバート三世をはじめ、各地の領主、魔法学院の幹部、そして軍の指揮官たちが集まっている。


「皆の者、昨日の事件について報告がある」


 アルバート王は五十代の威厳ある男性で、長年の統治で培われた風格を持っていた。

 しかし、今回の魔法暴走事件は、王にとっても前例のない危機だった。


「魔法学院長のマーカス、詳しい説明を」


「はい、陛下」


 マーカス院長が前に出て、昨日の出来事を詳細に報告した。忘却の霧の消失、古代魔法装置の暴走、そして竜語りアルトによる解決まで。


「竜語りが実在していたとは...」


 王の表情に驚きが浮かぶ。


「そして、竜族も復活しているのか」


「はい。既に各地で竜族の目撃報告が相次いでいます」


 報告を聞いていた貴族たちがざわめき始めた。


「竜族が戻ってきたとなると、我々はどう対処すべきでしょうか?」


「彼らは危険な存在なのでは?」


 不安の声が上がる中、アルトが会議室に案内された。

 セレスは彼の肩に止まり、ガルムとガーディアン・マグナスも同行している。


「陛下、竜語りのアルト・ウィンドブレイカーをお連れしました」


「おお...これが伝説の竜語りか」


 王がアルトを見つめる。

 その瞳には興味と、そして少しの警戒心が混じっていた。


「アルト・ウィンドブレイカー、昨日は王都を救ってくれてありがとう」


「恐れ入ります、陛下」


 アルトが丁寧に礼をする。


「ただ、僕は一人で成し遂げたわけではありません。仲間たちの協力があってこそです」


 王の視線がセレスに向けられる。


「これが蒼竜か...美しい存在だな」


『光栄です、陛下』


 セレスがテレパシーで応答すると、会議室がさらにざわめいた。


「竜が...話しているのか?」


「テレパシーです」


 アルトが説明する。


「竜族は高い知性を持っており、人間と同等以上の思考力があります」


 王が興味深そうに身を乗り出す。


「では、竜族との外交も可能ということか?」


「もちろんです。実際、古代においては人間と竜族は協力関係にありました」


 この時、会議室の扉が開いて、一人の老人が入ってきた。

 宮廷魔術師長のゼノビア・ワイズマンだった。


「陛下、失礼いたします」


 ゼノビアは七十歳を超える老女だが、その瞳には鋭い知性の光が宿っている。長年の研究で蓄積された知識は、王国でも随一だった。


「ゼノビア、どうした?」


「竜語りの件で、重要な情報があります」


 ゼノビアがアルトを見つめる。


「あなたが持っている竜心石...それは古代の預言書に記されている『調和の石』ですね」


「調和の石?」


「そうです。『調和の石を持つ者現れし時、人と竜の絆再び結ばれん』という預言があります」


 会議室が静寂に包まれた。


「つまり、アルト君は預言の子だということか?」


 王が確認する。


「その可能性が高いと思われます」


 ゼノビアが古い書物を開く。


「預言によれば、調和者は新しい時代の指導者となり、人間と竜族の平和を築くとされています」


 貴族たちの間で議論が始まった。


「しかし、若すぎるのでは?」


「本当に信頼できるのか?」


「竜族を制御できるのか?」


 様々な意見が飛び交う中、アルトが静かに立ち上がった。


「皆さん」


 会議室が静まり返る。


「僕は確かに竜語りですが、竜族を制御するつもりはありません」


「何?」


「竜族は制御される存在ではなく、対等なパートナーです。僕たちが目指すのは、支配ではなく調和です」


 アルトの言葉に、セレスが嬉しそうに鳴く。


『その通りよ、アルト』


「では、具体的にはどのような関係を?」


 王が質問する。


「人間と竜族が協力し合い、それぞれの長所を活かして共に発展していく関係です」


 アルトが熱意を込めて説明する。


「竜族は魔法と知恵に長けています。人間は技術と創造力に優れています。両者が力を合わせれば、今までにない素晴らしい世界を作れるはずです」


『私たちも同じ気持ちです』


 その時、窓の外から美しい鳴き声が聞こえてきた。

 ゼファーが他の竜族と共に王宮上空を飛行している。


「あれは...」


 王と貴族たちが窓に駆け寄る。

 空には十数頭の様々な竜族が飛んでいた。

 火竜、水竜、風竜、地竜。

 それぞれが美しい鱗を輝かせながら、優雅に舞っている。


『皆さんも話し合いに参加したがっています』


セレスが説明する。


「竜族と直接交渉を?」


 王が驚く。


「可能です。僕が通訳いたします」


 アルトが申し出ると、王は少し迷った後、頷いた。


「分かった。史上初の人竜外交を行おう」


 大広間のテラスで、人間側と竜族側の代表者会議が開かれた。

 人間側は王、マーカス院長、ゼノビア、そして数名の重臣。竜族側はゼファー、サイラス、ルナ、オーラ、そして他の竜族の長老たち。

 アルトが両者の通訳を務めながら、歴史的な交渉が始まった。


『我々竜族は、人間との平和的な関係を望んでいます』


 サイラスが代表して挨拶する。


「我々も同様です。しかし、お互いのことをよく知らないのが現状です」


 王が率直に答える。


『それでは、まずお互いを理解することから始めましょう』


 ルナが提案する。


『私たちは治癒の魔法で人々を助けることができます』


「我々は技術や知識を提供できます」


 交渉は順調に進み、基本的な協力協定が結ばれることになった。


「では、正式な同盟条約を作成しましょう」


 王が宣言する。


「アルト君、君にはその仲裁者として活動してもらいたい」


「僕でよろしいのでしょうか?」


「君以外にはできない役割だ」


 その日の夕方、王都の中央広場で歴史的な宣言が行われた。

 何千人もの市民が集まり、空には竜族たちが飛行している。


「国民よ!」


 王が高台から声を上げる。


「今日、我がエルドラン王国は新しい時代を迎えた!人間と竜族の調和の時代である!」


 民衆から大きな歓声が上がる。


「この新時代の調和者として、竜語りアルト・ウィンドブレイカーを任命する!」


 アルトが王の隣に立つと、さらに大きな歓声が響いた。


「皆さん!」


 アルトが群衆に向かって語りかける。


「僕たちは今、歴史の転換点に立っています。人間と竜族が手を取り合い、より良い未来を作る時代の始まりです!」


『一緒に頑張りましょう!』


 セレスも美しい声で鳴く。

 空を飛ぶ竜族たちも、それぞれの声で応答した。人間と竜族が一つになった瞬間だった。

 その夜、アルトは王宮の庭園でセレスと共に星空を見上げていた。


「すごい一日だったね」


『本当に。まるで夢みたい』


「でも、これからが本当の始まりだ」


『そうね。調和者として、まだまだやることがたくさんある』


「君がいてくれるから頑張れる」


『私もよ。アルトがいるから勇気が出る』


 北の空で青い星が特に明るく輝いていた。それは新しい時代の始まりを祝福しているようだった。

 調和の使者としての新たな冒険が、今始まろうとしていた。


第17話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ