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蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


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第16話:時空の記憶

アルトとセレスが時空制御装置の中核に触れた瞬間、世界が白い光に包まれた。

 意識が遠のいていく感覚の中で、二人は千年分の記憶の渦に引き込まれていく。

 気がつくと、アルトは見知らぬ場所に立っていた。しかし、その場所には見覚えがある。

 王都アルデンの大通りだったが、建物の様式や街並みが現在とは全く違っていた。


『ここは...古代のアルデンね』


 セレスがアルトの肩に止まりながら周囲を見回す。

 街には多くの人々が行き交い、その中には様々な竜族の姿も見える。人間と竜が当たり前のように共存している、まさに調和の時代の光景だった。


「すごい...本当に人間と竜族が一緒に暮らしていたんだ」


 空中では竜たちが優雅に飛行し、地上では人間の商人と竜の商人が取引をしている。

 子供たちは人間も竜族も一緒になって遊んでいて、その光景は平和そのものだった。


『これが私たちの目指すべき未来の姿ね』


 しかし、記憶の風景は突然変化した。空が暗くなり、人々の表情に不安の色が浮かぶ。


『何かが起ころうとしている』


 記憶の中の人々が空を見上げると、北の空から黒い雲が迫ってきていた。忘却の霧の前兆だった。


「これが霧の最初の出現なんだ」


 街の中央広場に、美しい竜王が降り立った。

 全身が金色に輝く威厳ある竜で、その周りに多くの人々と竜族が集まってくる。


『あれが古代竜王オーラムス』


古代の守護者の幻影が説明してくれる。


『彼が忘却の霧と最初に戦った英雄だ』


 竜王オーラムスが人々に向かって語りかける光景が記憶に刻まれている。


「民よ、竜族よ。暗黒の力が我らの世界を脅かそうとしている。しかし、恐れることはない。人間と竜族の絆があれば、いかなる困難も乗り越えられる」


 人々から勇気ある声援が上がる。

 その中に、若い竜語りの姿も見えた。


『あの人...』


 セレスが一人の青年を指す。


『アルトにそっくりよ』


 確かに、その青年はアルトと瓜二つだった。古代の竜語りの血筋の先祖なのだろう。

 記憶はさらに進み、忘却の霧との激しい戦いの場面が展開された。竜王オーラムスと竜語りたちが協力して霧に立ち向かうが、敵の力はあまりにも強大だった。


『見て、アルト』


 戦いの中で、時空制御装置が起動される場面が映し出された。

 古代の魔法使いたちが装置を操作して、霧の侵攻を食い止めようとしている。


「装置は霧を封じるためのものだったんですね」


『そうだ』


 古代の守護者が説明する。


『しかし、完全に霧を消すことはできなかった。封印するのが精一杯だった』


 記憶の中で、竜王オーラムスが最後の力を振り絞って霧と相討ちになる光景が映される。

 その時、彼が残した言葉が装置に刻まれた。


「いつの日か、真の調和者が現れるであろう。その時こそ、完全なる平和が訪れん」


 記憶の風景が再び変化すると、今度は装置が封印された後の時代が映し出された。

 人間と竜族は離れ離れになり、互いを忘れていく悲しい歴史だった。


『長い間、この記憶が装置の中で保存されていたのね』


「そして今、僕たちがその記憶を見ている」


 記憶の最後に、現在の時空制御装置の暴走の原因が明かされた。忘却の霧の封印が解けた時、装置の安定機構も同時に崩れたのだ。


『つまり、霧を完全に消去するには、装置を新しい力で安定させる必要があるということか』


 古代の守護者が現れて説明する。


『その通りだ。そして、その力こそが真の調和者の力なのだ』


「僕が調和者だというのは本当なんですか?」


『竜心石の反応と、蒼竜との絆を見れば明らかだ。お前こそが預言の子だ』


 しかし、その時、記憶の世界に異変が起きた。暗い影が記憶を侵食し始めたのだ。


『これは...』


『忘却の霧の残滓だ!完全に消えていなかったのか!』


 記憶の中に霧の意識が残っていて、アルトたちを永遠に記憶の世界に閉じ込めようとしているのだった。


『アルト、危険よ!』


セレスが警告する。


 霧の影響で、記憶の風景が歪み始める。

 美しい古代の街並みが崩壊し、人々の顔が暗闇に飲み込まれていく。


「記憶が破壊されている」


『このままでは、お前たちも記憶と共に消えてしまう』


 古代の守護者が必死に魔法で防御するが、霧の力は強大だった。


「どうすれば...」


その時、アルトは直感した。


「セレス、僕たちの記憶で対抗しよう」


『私たちの記憶?』


「そうだ。僕たちが作り上げた新しい絆の記憶で、古い霧の記憶を上書きするんだ」


 アルトは竜心石を握りしめ、セレスとの出会いから今まで の全ての記憶を思い起こした。初めて森で出会った時、家族との再会、仲間たちとの冒険。


『私も一緒に』


 セレスも同じように、アルトとの大切な記憶を思い出す。

 二人の記憶が光となって、霧の暗闇に対抗していく。

 愛と友情と希望に満ちた記憶は、絶望と忘却の記憶よりも強かった。


『素晴らしい...これが真の調和の力か』


 古代の守護者が感嘆の声を上げる。

 霧の残滓は完全に消散し、記憶の世界が美しい光に包まれた。そして、時空制御装置の本来の姿が現れる。


『装置が正常な状態に戻った』


「これで王都も安全になりますね」


『そうだ。しかし、これで終わりではない』


 古代の守護者が重要なことを告げる。


『お前たちは真の調和者として、新しい時代を築く責任がある』


「新しい時代?」


『人間と竜族が再び手を取り合い、より良い世界を作る時代だ』


 記憶の世界から現実に戻ると、時空制御装置は穏やかな青い光を放っていた。

 暴走は完全に収まり、周囲の時空の歪みも消えている。


『成功したな』


 ガーディアン・マグナスが安堵の声を上げる。

 マーカス院長とガルムも駆け寄ってくる。


「よくやった、アルト。君たちのおかげで王都が救われた」


「でも、これはまだ始まりです」


 アルトが決意を込めて言う。


「僕たちの本当の使命は、人間と竜族の調和を取り戻すことです」


『その通りよ』


 セレスも同じ気持ちだった。

 地上に戻ると、王都の異常現象は全て収まっていた。

 浮遊していた建物は元の位置に戻り、魔法の暴走も停止している。

 人々が建物から出てきて、平和が戻ったことを喜んでいる。


「竜語りさま、ありがとうございました!」


「王都を救ってくださって!」


 しかし、アルトの心は次の目標に向いていた。真の調和者として、まだまだやるべきことがたくさんあるのだ。


第16話 完


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