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蒼き竜の継承者  作者: みなと劉


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第11話:新しい絆の誓い

氷の洞窟に温かな光が満ちる中、セレスと家族の再会は続いていた。

 長い間離ればなれだった親子、兄弟姉妹が、ついに心から抱き合うことができたのだ。

 その光景は、忘却の霧がもたらした長い悲しみを一瞬で消し去るほど美しく、神々しいものだった。


『セレス...本当に立派になったね』


 母親のルナが、涙を浮かべながら娘を見つめている。

 治癒竜である彼女の鱗は真珠のように白く輝き、その優しい瞳には母親としての深い愛情が宿っていた。


『お母さん...私、とても寂しかった。でも、アルトが助けてくれたの』


 セレスがアルトの方を振り返る。


『彼は最高の竜語りよ。お父さんのトーマスさんにそっくり』


 父親のサイラスが、威厳のある雷竜らしい堂々とした姿でアルトに近づいてきた。

 その鱗は深い紫色に金の縁取りがあり、雷の魔法使いとしての力強さを表している。


『アルト・ウィンドブレイカー...汝の父トーマスとは古い友人じゃった』


「父をご存知なんですか?」


『もちろんじゃ。彼は我々竜族にとって、最も信頼できる竜語りの一人だった。そして汝も、父に負けぬ素晴らしい竜語りに成長しておる』


 姉のオーラも、美しい氷の魔法で周囲に花びらのような氷の結晶を舞い散らせながら近づいてきた。

 その鱗は水色から白へのグラデーションが美しく、グラシアの教えを受けた氷竜らしい優雅さを持っている。


『セレス、あなたがこんなに勇敢に成長しているなんて...姉として誇らしいわ』


『お姉さん...』


 家族の再会を見守っていたグラシアが、深い満足を込めて微笑んだ。


『これで良い。家族の絆が再び結ばれた』


 古代竜王も、本来の優しい表情を取り戻して一行を見つめていた。

 忘却の霧から解放された彼は、かつての暗黒の存在とは全く違う、慈悲深い古老の姿を見せている。


『我の名はドラコニウス。古代竜族の王として、汝らに心からの謝罪と感謝を捧げたい』


「謝罪なんて...あなたも忘却の霧の被害者だったんです」


『そうじゃ。しかし、我が力が悪用されて多くの悲しみを生んでしまった。その責任は重い』


 ドラコニウスが深々と頭を下げる。


『これからは、真の平和のために尽力することで、その罪を償いたい』


 ガルムが感慨深げに一同を見回していた。


「素晴らしい...まさに奇跡じゃな。竜族と人間の絆が、これほど美しく結ばれるとは」


 その時、洞窟の奥から新たな光が差し込んできた。

 それは外の世界からの自然光で、忘却の霧が完全に消えたことを示している。


『外の世界も変わっているはずじゃ』


 ゼファーが窓口の方を見上げる。


『霧に閉ざされていた場所が、再び光を取り戻している』


「確認してみましょう」


 一行は洞窟の外に出た。

 そこで目にしたのは、まさに奇跡の光景だった。

 山々の頂上に浮かんでいたのは、美しい島々だった。

 雲の上の天空の島々、セレスの故郷が再び姿を現したのだ。


『天空の島が...戻ってきた!』


 セレスが興奮して羽をばたつかせる。


『本当よ!私たちの故郷が戻ってきたの!』


 島々は宙に浮かんでおり、その美しさは言葉では表現できないほどだった。

 緑豊かな草原、美しい建物、そして虹色の滝が雲間を流れ落ちている。


『あそこには、まだ多くの竜族が眠っているはずじゃ』


 サイラスが島々を見上げる。


『彼らも、もうすぐ目覚めるじゃろう』


 実際に、島々からは様々な色の竜たちが飛び立っているのが見えた。

 赤い火竜、青い水竜、茶色の地竜、白い光竜。

 多種多様な竜族が、長い眠りから目覚めて空を舞っている。


『見て、アルト!みんな生きていた!』


 セレスの声は喜びに震えていた。

 しかし、アルトの心には複雑な気持ちもあった。

 セレスの家族が戻り、故郷も復活した。ということは、セレスはもう自分のそばにいる必要がないかもしれない。


『アルト、どうしたの?浮かない顔をして』


 セレスがアルトの表情を心配そうに見つめる。


「いや...君の家族が戻って、故郷も復活して、本当に良かったと思ってる」


『でも?』


「でも...君はもう僕と一緒にいる必要がないのかなって」


 セレスは驚いたような表情を見せた後、くすりと笑った。


『アルト、あなたって時々とても鈍感ね』


「え?」


『私はあなたと一緒にいたいから一緒にいるの。必要があるからじゃないわ』


 セレスがアルトの手に自分の小さな前足を重ねる。


『あなたは私の家族になったのよ。血のつながりはなくても、心のつながりがある』


『その通りじゃ』


 サイラスが二人の会話に割り込んできた。


『竜語りと竜族の絆は、家族の絆と同じかそれ以上に深いものじゃ。セレスがアルトを選んだのなら、それが彼女の運命じゃ』


『私たちも賛成よ』


 ルナとオーラも頷く。


『セレスが幸せなら、それが一番大切なことよ』


 ゼファーも同意した。


『アルト、君はセレスにとって、そして我々家族にとっても大切な存在じゃ。これからもよろしく頼む』


 アルトは胸の奥が温かくなった。

 セレスとの絆が、家族に認められたのだ。


「ありがとうございます。僕もセレスを、そして皆さんを大切にします」


 その時、ドラコニウスが一同に向かって荘厳な声で呼びかけた。


『竜語りアルト、蒼竜セレス、そして勇敢なる仲間たちよ』


 全員がドラコニウスの方を向く。


『汝らは忘却の霧を打ち破り、失われた絆を取り戻した。この功績を称え、新たなる契約を結ばせてもらいたい』


「契約?」


『そうじゃ。人間と竜族の新しい時代の始まりを告げる、神聖なる契約を』


 ドラコニウスが古い魔法を唱えると、空中に美しい光の文字が浮かび上がった。

 それは古代竜語で書かれた契約書だった。


『この契約により、人間と竜族は再び手を取り合い、共に平和な世界を築いていく』


 セレスが契約の内容を翻訳してくれる。


『「竜語りと竜族は心を一つにし、互いを守り合う。人間と竜族は対等なパートナーとして、知恵と力を分かち合う。この絆は永遠に続き、どんな困難にも屈しない」』


「素晴らしい契約ですね」


『アルト、君がこの契約の最初の証人になってくれるか?』


「もちろんです」


 アルトが竜心石に手を当てると、石が眩しく光った。

 その光は契約書に触れ、文字を黄金色に変える。


『セレス、君も』


『喜んで』


 セレスも自分の魔力を契約書に注ぎ込む。すると、契約書は美しい蒼い光に包まれた。


『契約成立じゃ』


 ドラコニウスが満足そうに頷く。


『これで、新しい時代の始まりが正式に宣言された』


 契約が成立すると、天空の島々から多くの竜たちが降りてきた。

 そして、山の麓からは人間たちも現れた。

 忘却の霧に苦しんでいた村々の人々が、霧の消失によって解放されて集まってきたのだ。

 人間と竜族が、数十年ぶりに同じ場所に集まる歴史的な瞬間だった。


『皆の者よ』


 ドラコニウスが全員に向かって宣言する。


『今日から新しい時代が始まる。人間と竜族が再び協力し合い、より良い世界を作り上げる時代が』


 人々と竜たちから、大きな歓声が上がった。

 その夜は、山の麓で大きな祭りが開かれた。

 人間と竜族が一緒に歌い、踊り、語り合う。まさに調和の象徴のような美しい光景だった。

 アルトとセレスは、祭りの会場から少し離れた丘の上で、満点の星空を見上げていた。


「すごい一日だったね」


『本当に。まるで夢みたい』


「でも、これが現実なんだ。君と出会えて、こんな素晴らしい冒険ができて」


『私もよ。あの森で倒れていた時は、まさかこんな未来が待っているなんて思わなかった』


 二人は静かに星を見つめた。

 北の空には、いつもの青い星が一際明るく輝いている。


『アルト、これからどうする?』


「故郷に帰って、みんなに報告しよう。そして...」


「そして?」


『新しい冒険を始めよう。人間と竜族の架け橋として、まだまだやることがたくさんあるはずだ』


『素敵ね。私も一緒に行くわ』


「もちろん。僕たちはパートナーだからね」


『永遠のパートナーよ』


 翌朝、アルトたちは風の谷への帰路についた。

 しかし、行きの時とは全く違う気持ちだった。

 大きな使命を果たした達成感と、新しい未来への希望に満ちていた。

 そして何より、セレスとの絆が以前にも増して深くなっていることを実感していた。


『アルト』


『何?』


『ありがとう。私を助けてくれて、家族を取り戻してくれて、そして...私の人生を変えてくれて』


「僕の方こそ、ありがとう。君が僕の人生に意味を与えてくれた」


 風の谷に向かう道のりは、もはや試練ではなく、希望への道だった。

 そして、二人の新しい物語の始まりでもあった。


第11話 完




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