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ウォークスルー テリトリー  作者: 傘の下


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084 消えるキャラ

赤い霧が発生しはじめ、伸ばした手の先が見えなくなるほど覆われると、剣のぶつかる音が鳴り響き、姿の見えない多くの人たちの話し声が聞こえてきた。

そんな騒がしさの中、15歳のとき、白い柄にグレーの丸い石が埋め込まれた剣を携えて迎えに来た、髪の長さだけが違う金髪碧眼の双子の男性たちが、再びブランの前に姿を現した。

そして16歳、17歳、18歳と記憶が蘇る。


ある国に暴君と呼ばれた王がいた。

暴君になったきっかけは、まだ王子だった頃に出会った最愛の女性に逃げられたこと。

将来一国を背負う男性と生涯を共にすることが、平民の女性にはとても難しかったからだ。

そして、逃げた女性と言うのが、暴君の国の隣の国でブランを生んだ人だった。


要するにブランは、暴君の息子だったということだ。

「そうか、俺は、金髪碧眼の男性たちから、白い柄にグレーの丸い石が埋め込まれた王家の剣を受け取ったんだ。

代々王家に受け継がれてきた、グレーの瞳と同じ色の石。

今俺が持ってる剣よりシンプル。」

クスクスと笑うブランの手には、在りし日に受け取った王家の剣が握られていた。

片手に王家の剣を、片手にドロップしたアイテムカードの飾りや宝石をつけた立派な剣を持ち、高く掲げた後に振り回す。


「そうか、金髪碧眼の双子から王家の剣を受け取ってから、3年間母さんのもとを離れて、父さんを討伐するために仲間たちと準備をしてたのは、ゲームの流れだったのか。」

振り回した剣で起こした風で赤い霧が飛ばされて、見晴らしがよくなってくると、幼馴染のスカイが木刀を振り降ろしてきた。

「ブラン!何考えごとしてるんだ!

余裕かましてんのか?」

両手に持つ剣を交差して木刀を受けると、スカイは剣を横から叩いて、下に抑え込んできた。


「このシーンは何だか覚えがあるな。

ダメな王の息子だと改めて自覚したときに、スカイとひたすら打ち合ったんだっけ。」


ーーーーー


ブランが赤い霧に飲まれて消えてしまうと、ペガサスが入っていた籠は宙に残され、砂の上に落ちた。

食べると死ぬキノコを食べた後、魂状態で生き返るキノコを食べた上機嫌なペガサスは、籠が落ち切る前に抜け出すと、満面の笑顔で空に向かって駆けだした。

小さかった体を大人の馬サイズに戻し、翼を大きく広げて砂漠の上を飛び跳ね、何ならタップまで踏み出した。

「空の上でタップ音を出せるのなんて、ボクくらいだ。

プププププ

キノコをくれた新ボスが消えちゃったけど、このままここでタップでも踏みながら待ってみようかな。」


「ぺ、ペガサス。」

セツキは何とか片膝を立て、名を呼びながら手を空に伸ばすが、自分には目もくれなくなったペガサスは、セツキの頭上高くで鼻歌交じりにタップを踏み続けている。


「遠目だったけど、ブラン君かっこよかった。」

何かが叩き壊された音とプテラノドンの叫びに、耳をふさぎ砂山に蹲ったAIチャナたちだが、プテラノドンの「ゲッ」という無様で悲痛な声に、今度は顔をあげずにはいられなかった。

AIチャナたちが見たときにはプテラノドンは城の反対側に力なく落ちて行き、それからすぐにセツキの城から飛び立つペガサスの姿を目撃した。

AIチャナたちはブランとセツキの戦いと、ペガサスがブランに篭絡されるまでの一部始終を目撃して、今に至っている。


「もう、セツキさんと戦うブラン君に大声で声援をあげようとするチャナにはヒヤヒヤしたわ。」

大剣を手にしたセツキの攻撃を、軽々と交わすブランの様を見たAIチャナは、当然とばかりに黄色い悲鳴をあげようとしたところ、アンズとハトバによっ止められていた。

「本当です。

戦いに水を差しちゃだめですよ。」

「う、水を差すつもりは、水と言えば。」

違和感に気づいたチャナは辺りを見回す。

「ねえ、なんだかサソリの数が減っていない?」

「あ、それは私も気になっていた。

気のせいかもと思ったけど、少なくともさっきまで壁に張り付いていたサソリたち、一部を残してほとんどいなくなってるのよね。」

「そうですね、僕たちがいるウサギが掘った穴だらけの場所から、セツキさんたちのいる場所まで、所狭しとサソリが群れていたのに。」


「私たち、墨が切れると消えちゃうのよ。」

膝に抱えていたサソリが白目の中で弧にした黒目をアンズに向けて、事も無げに答えた。

「え、どういうこと?」

「だって、私たち所詮アイテムだもの。

イベント発生後は目的を終えたら消えちゃうのよ。」

カードから出てきたのだから、動くキャラとは言えアイテム。

当然と言えば当然なのだが、アンズはやるせない気持ちで腕の中にいるサソリを抱きしめた。


「そういえば、そんな仕様でしたね。」

認識阻害を継続中のエンジは誰にも察知されずに、城の壁にもたれて成り行きを傍観していた。

「これは由々しき問題ですね。

せっかく懐いてくれたキャラが、目的を達成すると消えてしまうなんて。

何かとどめておく方法を考案した方がよいかもしれませんね。」

腕に抱いた数匹のサソリに頬ずりをして、エンジは考えこみ始めた。


「ブラン君も消えちゃったし、また時間がかかるかも知れないから、一旦テリトリーまで戻ろうか?

お城の向こうに落ちたプテラノドンも気になるし。」

「おお、そうか、そう言えばあいつ向こうに落っこちてったな。

帰りも飛んでもらわないと困るし。」

「よし、探しに行こう。」

噴水もやみ、お茶飴も食べ終わったウサギたちは、砂ばかりのこのテリトリーに飽きてきたところだった為、率先してプテラノドン探しに協力してくれた。


かなり高い位置から落ちたため怪我をしていないか、プテラノドンを心配していたAIチャナやアンズ、ハトバだが、30匹のウサギモンスターたちは3人の懸念を全く無視して横たわっているプテラノドンを見つけるや否や蹴りを入れて叩き起こした。

叩き起こされたプテラノドンは、ウサギモンスターたちに言われるがまま、皆を乗せて飛び立ったのある。


「案外元気で良かったわね。」

「そうですね、みんなを乗せて飛ぶ元気があってよかったです。」

「こいつ見た目より頑丈なんだよ。」

「岩山で暮らしてるんだから、さっきの高さよりもっと高い位置から落としてやったこともあるしな。」

「な!」×ウサギの数


「豪快ですね。」

ハトバは苦笑して、得意気に声を揃えるウサギたちから視線を外した。

「あ、あれ見てください。

赤いツインテールの女の子が、1人で歩いています。

ギルドの塔への通路から外れてるから、もしかしたらこのテリトリーから出ようとしてるんじゃないですか?」

「ちょっと待って、赤いツインテールの女の子って、センヤよね?」

ハトバが見つけた砂漠の途中で右往左往している女の子を、アンズとチャナも見つけて、眉間に皺を寄せた。

そうすると、あちらも気がついたようで、プテラノドンに驚いた様子を見せたが、背中に人が乗っているのに気がつくと大きくれを振り始めた。

「手を振ってますよ?

どうしますか?」

「うーん、どうしよう。」

「さっき、あれだけひどい目にあったんだから、ちょっとは反省してるんじゃないでしょうか?」

「ハトバはお人よしよね。

あれが、そうそう、反省するとは思えないんだけど。」

「おいおいおい、いいじゃないか、乗せてやれよ。」

プテラノドンの頭の上に座っていたウサギモンスターが、前歯を見せてニヤリと笑っている。

「反省したかどうかは、その膝に抱いているサソリを見せて聞いたらいいんじゃないか?」

ウサギモンスターはアンズが連れてきたサソリに、前歯を出してウィンクを飛ばした。

「うー、分かった。」


セツキの城で自分の発した言葉の文字に貫かれ続けたセンヤは、かなり悲惨な気持ちで逃げ出した。

歩いているうちに方向も分からなくなり、マップをオープンさせたが、いつの間にかテリトリー線が消えている。

「すべてのテリトリー線が消えれば、ゲームクリアでエンディングが始まるはずだけど、はじまらないってことはこのマップ壊れているのか?」

マップも当てにならない、自分がどこにいるのかも分からない、だけどログアウトするのは嫌だ。

そんな情けない気持ちのまま歩いていたところで、空を飛ぶプテラノドンを見つけたのだ。

最初こそ、襲われると思い逃げようとしたが、その頭にウサギが乗っている。

よく見ると背中には人も乗っている。

「助かった、一緒に乗せてもらおう。」

そんな気持ちで、大きく手を振っていたのだが、一向に気づいてくれる様子が無かった。

「気づいてないのか?こんなに大きく手を振っているのに。」


半ば諦めかけたとき、プテラノドンがセンヤの目の前に暴風を起こして急降下してきた。

「風が強すぎたんじゃない?

センヤってば、油断し過ぎてたから10数メートルくらい飛ばされちゃったわ。」

AIチャナが目の上に手のひらで日よけを作り、10数メートル先に飛ばされてあおむけに倒れたセンヤを眺めると、すぐに体を起こして立ち上がっていた。

何か文句を言われるかもと身構えると、センヤは予想に反して遠慮がちな笑顔を作り、プテラノドンに向かって歩いてきた。

「ねえ、あれ、本当にセンヤかしら?」

「やっぱり、自分の言葉に貫かれて、反省したんじゃないでしょうか?」

「そうだと良いんだけど。」

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