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ウォークスルー テリトリー  作者: 傘の下


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083 セツキテリトリー攻略4

ガッコッーーーン!!!

セツキの城の頂上から辺り一面に響き渡る音がした。

「ギャーーーーーー」

そのほとんど同時に、プテラノドンの叫び声も響き渡った。

「なっ?何の音?」

「わかりませんが、何かが無理やり叩き壊されたような音です!」

「後の声って、一緒に来てたプテラノドンじゃないの?」

あまりの音の大きさとプテラノドンの悲痛な叫びに、チャナ、ハトバ、アンズと周りにいたウサギモンスターたちは、反射的に耳をふさいで、隠れていた砂山に体を低くして蹲った。


城の真下近くにいるチャナたちや、城の壁に張り付いているエンジには見えないが、城の頂上の出入り口のハッチが、白馬の前足で蹴り上げられた音が響き渡ったのだ。

ヒューーーーーーーンッ、ドコッ!「ゲッ!?」ヒュッ!

城の中から駆け上がる勢いのまま分厚いハッチを前足で蹴り上げたペガサスは、留め具の壊れたハッチが空高く舞い上がるのを眺めた。

「案外軟だったな、ちょっと蹴っただけであんなに飛ぶなんて。

ププププ。

それになんだ、あれ?

でかい鳥のモンスターのくせにハッチの飛ぶ勢いより遅すぎて、ぶつかられてやんの。」

ハッチに当たられたプテラノドンは城の荒野側にヒョロヒョロとと落ちて行った。


城から離れた位置で足蹴にされているセツキには、城の唯一の出入り口である頂上の潜水艦のハッチ同様に分厚い鉄の塊が壊され天高く飛んだかと思うと、そこからペガサスが出てくるところまで見えていた。

「頂上のハッチが何故飛ぶんだ。

しかもその後にペガサスが出てくるとは、あいつがやったのか?」


蹴りあげられた分厚いハッチがプテラノドンに当たったことで、上がるスピードが落ちると、当然ながら今度は落ちてくる。

ガッ、ガタッ ガキンッ!

城のドーム状の鉄の壁に当たって、激しく跳ねて落ちてくる鉄の塊。

ドーーーンッ!!! 

城にぶつかって跳ね飛んだハッチはセツキの十数メートル先に落ち、衝撃で起きた砂の飛沫(しぶき)はセツキやブランたちのもとまで届いた。


「ブラン、大丈夫か?」

とっさに背中からヒヨコの体の何倍もの大きさの天使の羽根を出したタクトがブランとブランが抱くシキを包み込み、砂しぶきから守っていたが足元には及ばず、セツキが砂で埋もれている。

「大丈夫だけど、下にいるおじさんは大丈夫かな?」

「セツキ兄さんは大丈夫だと思う。」


両手を前について体を起こしたセツキは、口に入った砂を吐きだした。

「うー、何が起こったんだ。

いや、それより、さっきシキの声がしたような?

こんなところいる訳が無いな、気のせいか?」

立ち上がって体の砂を掃きながら辺りを見回しているセツキの目には、ブランが胸に抱えている黒メガネをかけたサソリには目もくれない。

セツキからシキの名前が出たことで、ブランは教えてもいいものかとタクトを見たが、首を振っている。


「やっほー!ボス。

こんな所にいたんだね、ギルドに置いてけぼりにされちゃったから、ボク追いかけてきちゃったよ。」

白々しく城の頂上から羽を広げて飛んできたペガサスは、自分が壊して蹴り飛ばしたハッチの上に降りた。

そんなペガサスとは裏腹に、セツキは肩を震わせてペガサスに近づいた。

「見てたぞ!お前が城のドアを壊すところを!

謝るでもなく、反省するそぶりもなく、能天気もいいところだ。

ダメじゃないか、いくら駄馬だといっても、程がある!」

顔を赤くするセツキにペガサスは殊勝に頭を下げているが、口元が笑みで揺れそうになるのを必死て抑えている。

「壊すつもりは無かったんだよー?

ほら、俺って人みたいな手が無いから、ちょっとだけ勢い付けたら壊れちゃって。

ボスってば、もう少し丈夫な扉をつけた方がいいみたいだよ?」

睫毛の長い揺れる瞳で瞬きをし下げた頭からセツキを見上げるペガサスの行動はすべて計算されている。


「むっ、そうか、丈夫な扉だな?

いや違う、手が無いなら、そもそもお前はどうやって入ったんだ。」

「あれ?ボス、そこ気にしちゃう?

プププププ。」


「もういい、それよりもいいところに来た。

何か武器を持ってきてくれ、この子どもより、かっこよくて大きな剣がいい。」

「ヘッ?あれ?主人公じゃん。

いつの間に来てたの?」

ブランに気がついたペガサスは、先ほどからのヘラヘラとした表情を一変させた。

「ボクのボスを虐めちゃだめだよ。」

ペガサスは、後ろ脚で立ち、前足を高くあげると、足を置いていたハッチをダンッと踏みつぶした。

「おい、ペガサス、威嚇はいいから早く武器を持ってこい。」

「イエス、ボス!

こんなのどう!」

ペガサスがまた高く前足を上げて、下敷きにしていたハッチを勢い良く踏むと、砂が舞い上がった。

「うわっ、ぺっぺっぺっ

また、砂を被せやがって、って、おおお!素晴らしい。」

舞い上がった砂が落ちると、セツキの目の前に刀身の太い、重そうな鉄の剣が姿を現していた。

太い使を柄を握って3mはあるだろう巨大な剣を片手で右に左にと振り回したセツキは、白い刃を光らせた。

「さあ、今度はこの剣で勝負だ。

今度は俺が勝たせてもらおうか、そして真のラスボスになるのだ。」


「おじさん、またやるの?

いいけど。」

ブランは半分砂に埋まっていた剣を引き抜くと、肩にヒヨコ、胸に黒メガネのサソリを抱いたまま片手で剣を構えた。

「プププ、ボスを馬鹿にしすぎじゃないの?」

ペガサスがブランに小ばかにする笑みを向けると、セツキが両手で持った大剣を横殴りに振り回してきた。

「おおおおりゃーーー。」

ブランは軽く飛び上がって、セツキが振り回す剣の上に足を乗せた。

「お?おお?」

大剣の上にブランが乗ってしまい、剣を支える腕を動かすことができず、困惑したセツキは、自ら剣を砂地に叩きつけた。

しかし、叩きつけられる前にブランは剣の上で跳ね、バク転でまたセツキの後ろに回り込み、背中を蹴ろうとしたが、今度はセツキにその足を掴まれてしまった。

「捕まえたぞ!これでもう背中は蹴れないだろう。」

ブランの肩足首を持ったまま、足元に叩きつけた大剣を取ろうとしたセツキの頭に、ブランはセツキに持たれた足を軸にして、体を素早く捻ると反対の足のかかとを落とした。

セツキが前のめりになり、手が緩んだところでやはり背中を蹴って倒れたセツキの上に乗ると、首元近くの砂に剣を突き刺した。

「おじさん、剣の大きさは関係ないよ?

俺は剣士で小さいころからずっと訓練してたから、体格いいだけのおじさんには負けないんだ。」

「今度こそ勝てると思ったのに、剣士だと?」

セツキが悔しそうに眼を閉じると、肩に乗っていたタクトがブランの頭を押した。

「ブラン!よけろ!」

タクトに頭を押され避けたところを、先ほどまで頭のあった位置でペガサスの前足が空を蹴っていた。


「何しやがる、

ボスをもて遊んでいいのは、ボクだけだ!」

先ほどまでヘラヘラとしていたペガサスが興奮して、鼻息荒く怒っている。


「ペガサス、お前と言うやつは、我がままだし駄馬だとばかり思っていたが、俺を助けるとはさすがサポートキャラだな。」

ブランがペガサスの蹴りを避けて飛びのくと、セツキは不敵な笑みを浮かべた。

「ハハハハハッ。

俺にはこの白馬がいる。

それに比べてお前の方は可愛らしいヒヨコと、よくわからんサソリだけだ。

今度こそ俺の勝ちだな。」

両手を腰に当ててひたすら笑うセツキに、冷ややかな目を向けるペガサスだが、セツキにはツンデレ的な愛情を持っているらしい。


タクトは羽の中をごそごそと動かし、「もういいから、試してみる?」と中から籠を取り出してブランの前に差し出した。

「うん、剣でいくら戦っても無駄だって分からないみたいだし、使ってみるよ。」


「よし、行け!ペガサス、お前の強さを見せて見ろ!」

セツキがペガサスの背中をパンッと叩くと、ペガサスがブランに目で威嚇しながら近づいてくる。


「はい、これってどうかな?

合ってるかな?」

タクトが差し出した籠の中に入っていたのは、遺跡でぼくちゃんにもらったキノコのセットだ。

ブランがキノコを見せるとペガサスの態度が一変した。

「そ、それは、食べると死ぬキノコじゃないか!」

「いる?」

「くれるのか、ありがたい、もちろん生き返るキノコもあるんだろうな。

2種セットだからな。」

「うん。」

ブランはいい笑顔でペガサスの前にだすと、ペガサスは小さくサイズを変えて飛びついてきた。

「おい、ペガサス!どうしたんだ、何でそんな小さくなって籠の中に入ってるんだ!」


「あ、ボス、ごめんね。

ボク、このキノコだけは一番最優先なんだ。

これをくれた人が俺の最愛になっちゃうの。」

「なんで、今までのは何だったんだ。」

全く予想していなかったことに、セツキは頭を抱えて狼狽している。

「おい!ペガサス。

目を覚ませ、俺のサポートキャラだろ?」


「だから、ごめんって。

ボクたちはそんな風に作られてるから、ボスは諦めてくれ。

どれだけ情報があっても、どれだけ選択肢が有っても、最優先を決定されてるから、ダメなんだって。」

(テヘペロ、ウィンク)


「いただきまーす、

あ、生き返るキノコの準備はいいよ、ボクは自分で食べられるから。」

籠の中でキノコをぱくつきだしたペガサスは、やがて白目をむいて横たわり、体から魂が抜けだしてくると、同じく籠に入っている生き返るキノコをパクつきだした。

魂になったペガサスは「天にも昇る気持ちー、だけど体に戻るう。」と呟き、魂が体に引き戻されていった。


「セツキさん、これゲーム何で。

サポートキャラもプログラミングされたデータですから、条件を満たすと、好き嫌いや、従属の有無の値を逆転します。

罪悪感とか、焦燥感とかはプログラミングしてないので、彼らに悩みは無くて、リアルな人の説得は無意味です。

人と違って、本当に罪悪感もなく、条件に合致した正解を選択するだけ。」

ブランの肩からセツキの肩に飛び移ったタクトが、セツキの耳元でささやくとガクンとセツキは足を折った。


「何ということだ。

何て情け容赦のない世界だ。」


タクトとセツキの様子を見ていたブランの周りには、徐々に赤い霧が立ち込めてきていた。

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