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ウォークスルー テリトリー  作者: 傘の下


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041 虹色の飴、光る石

「然るべき時までこのケースに入れていると良いよ。」


ブランが赤いバラの飴細工をケースごと受け取ると、青いAI文字のキャラは、次はこの先の谷間を登る予定で、また大傑作ができたらいいんだけど、とブランが通ってきた谷間に向かって去って行った。


「飴細工の赤い薔薇、これって前言ってたテリトリーボスのサポートキャラに使えるやつだよね。

タクト、見て!

俺一人でちゃんと手に入れたよ。」

飴細工の入ったケースを頭の上に掲げてタクトに走り寄ってきたブランは、飴細工を作る前までのブランから、バグが発生する前のブランの雰囲気に戻ったように感じられた。

「はい、これいつもみたいに直しといてくれる?」

無邪気な笑顔で渡された飴細工のケースを受け取り、羽の中にしまっているとブランはいつの間にか飴細工の虹色の橋の真ん中まで進んでいた。

チャナテリトリーからモブのログインポイントを避けて険しい谷間を抜けた先にあった深い崖の先は、ヨウキテリトリーへの道に繋がっている。

「ヨウキテリトリーに進むにつれて、もしかして人に対しての使い分けをするようになってきてるとか、かな?」

ゆっくりと羽を広げて虹色の橋の上を飛び、崖の下を見ると川が流れていた。

欄干に身を乗り出して崖の下を見ていたブランが、タクトに手招きをしている。

「タクト見て、ほら、崖の下に川が流れてる。

それであっち。

上流の方から船が川を滑るように流れてきてる、誰か乗ってるみたい。」

虹色の橋が架かる場所からは崖が高く船までの距離が遠いため、人が乗っているのがやっと分かる程度の大きさにしか見えない。

「スコープアイ」

タクトは自身の目に対して遠くのものでもはっきり見えるように、キーワードを唱えた。


「あれは、船というよりボートかな。

どうも川下りというか、急流すべりを楽しんでるみたいだ。

ボートの先頭にAIキャラがいて、他のメンバーにはIDプレイヤーが多い、ということは、この上流にあるモブのログインポイントから下ってきてるんじゃないかな?」

「楽しいの?よく分からないけど、皮をボートで下ってどこまで行くんだろう?」


「このままボートで川を下ると山間の鍾乳洞に入るみたいだ。

一山分の距離があって、そこを抜けるとヨウキテリトリーよりもココアテリトリーに近い場所に出ていくみたいだよ?」


「ふーん、そうなんだ。」

「急流すべりやってみたい?」

川を下って行くボートを目で追っていたブランは、首を振ると乗り出していた身を下ろして、橋を歩き始めた。

「俺は、遊んでる暇はないの。

何よりも先にテリトリーを攻略して、早く記憶を取り戻すんだ。

そしたら、」

途中で話を切ったブランは歩くスピードを緩めて空を見上げた。

「そしたら?」

気になったタクトが先を促すために、同じ言葉を続けてみると、ブランは青い空を見たまま「何でもない。」とだけ一言返した。



ーーーーー


「それで、チャナではなくてチャナをいつも止めに入ってるグラスチームの他の子たちにカードを渡してきたの。

勘のいい子たちだから、きっと、チャナに渡してくれると思うわ。」

ココアテリトリーの中の基点の城に戻ったニコは、黒い鳥かごの中で足を金の鎖で繋がれている、まさに籠の鳥状態のカーラに話しかけていた。

「ニコ様がそう思うのでしたら、きっとそのようになると思います。」

鳥かごの扉を開けるニコに、カーラは金の鎖に繋がれた足を向けで哀れを誘うよう体を斜めに倒して頷いた。

壇上の椅子に座るココアは、本日はザ・ドラキュラ的な赤い裏地の黒いマントを羽織って、オレンジの髪をかき上げ、ココアとカーラのやりとりを見下ろしている。

「ニコったら、カーラに報告するんじゃなくて、まずは私に報告しなきゃ。

テリトリーボスは私なんだから。」

怒った口調ではあるが、新しいAIキャラの執事に鑢で爪を磨いてもらっているココアは、目を細めて緩く笑っている。


「テリトリーボスだからって、サポートキャラのカーラをどうしてこんな鎖でつないでるの?」

ニコが頬を膨らませてココアに抗議の目を向けると、ココアは困った様子で、人差し指を出すと自分の隣に立っている黒服のメイドの顎をなぞった。

「カーラを鎖につないだのは、このメイドのたっての希望なの。」

顎を指で刷られて体を震わせていたメイドは、ニコの怒りの視線に気づき背筋を伸ばして、緩んだ顔を取り繕った。

「ニコ様、大変申し訳ございません。」

深く頭を下げたメイドはすぐに直立し、ココアが座る椅子の隣にまっすぐに立ち直した。

「その、冷たいまなざしも素敵なのですが、今はそれを堪能している場合ではございませんね。

コホンッ。

実は、一つは、ニコ様がいない間にカーラは中庭のゾンビたちを掘り起こしていまして、それが、遊んでいただけならいいのですが、、。」

メイドがカーラを見ると、カーラは素早く視線を外し顔を両手で隠した。

「色々とやらかしておりまして、ちょっとだけ大人しくしてもらうために、籠に閉じ込めました。」

メイドの後ろに控える執事、両際の壁に並ぶと護衛騎士、広間の末席に立ち並ぶギャルソンにコックに庭師など、増えたAIキャラも加えて一斉に頷いていた。

増えていたメンバー含めてAIキャラばかり30名ほどの顔を、眺めたニコは、一斉に頷く様子を見て、ただ事ではないらしいと感じていた。


「そうなのね?

いろいとするほど、カーラはゾンビが好きなの?」

ニコの問いにカーラは隠した顔をそっと羽の隙間から出すと、はにかむ笑顔を見せた。

「ケケケ、踊ってもらうのが好きで。」

「はい、カーラは口から超音波を出して、その超音波に、何故かゾンビたちが乗りに乗って踊り出すのです。

それが、この静かでくらい、日暮れの城に合うか合わないかというと、まったくもって合いませんでした。

情緒も何もなく、ココア様の城に相応しくないかと。」

迷路の言葉にニコは首を傾げた。

「超音波、ゲーム(この)中でも超音波ってあるのね?

どういうことかしら?」


「ニコは実際に見てないし、聞いてないからイメージ付かないと思うけど。

本当に超音波を再現しているのではなくて、人間に聞こえない範囲の音、というよりも聞こえない音が聞こえた場合の再現をしているみたいよ。」

「あら、ココアはカーラがゾンビを躍らせてるとこ見たの?」

「ええ、もちろん。

スリラーくらい踊ってくれたらいいのだけど、ワルツとかマイムマイムとかだったわ。

あとは、有名なあの鳴子を持って踊る踊りとかね。」

「はい、この城の情緒が壊れるくらい、明るく楽しく表情豊かに踊っていました。」

「カーラったら、ねこっかぶりなだけじゃなくて、案外いたずらっ子なのね。」

「けけけけけけけけっ」


「「いえいえいえ、それだけではありません。

ニコ様、騙されないでください。」」

2人の和やかな雰囲気に、メイド、執事はおおいに首を振った。


「もう一つは、家出というか、黙っていなくなる常習犯なのです。

サポートキャラなのに、何かの役に立とうとすることなく、あろうことかこの城を飛び出していったっきり、しばらくして戻ってきたと思ったら変な輩を連れてきたんです。」

「変な輩?」

「はい、ツインテールの若い女性です!」


「あら、人さらいのまねごとをしたのね。

それも私たちがいない時ね?」

「はい、何やら鉱山の暗い穴の中で鉱石を掘っていたところを、カーラが攫ってきたようです。

持ち帰ってくる途中は硬直していて大人しかったようですが、門の前についたとたんに暴れ出しまして。

もちろんすぐに、元の場所に捨ててこさせました。」


「ケッ」

カーラは不服そうに潰れた鼻をツンとさせて、羽の先で腕を組むとそっぽを向いた。

「カーラったら、拗ねちゃって。

もしかしてその人のこと気にいってたのかしら?」

ニコが優しく頭を撫でると、ふにゃっと顔を崩したカーラは、体の白さも相まって染めた頬が可愛らしく目立つ。

「そういえば、籠の中に宝石が散らかってるけど、この宝石はその時にその誰かが落としていったものかしら?」

「けけっけけっ、はい。

偶々拾った人間でしたが、門の前まで来ると暴れまくって、それで手が滑って、少し高いところから落としてしまって。」

シュンと頭を下げたカーラの、ニコに見えないその表情はニヤついている。

「決してワザとではなかったのですが。

落ちるとしりもちをついて、そのとき色々と暴言を吐いて暴れるもんだからポケットに入っていた宝石がごろごろと落ちてきまして。」


銀の甲冑を着た騎士はカーラの言葉に、首を傾げて隣の黒メイドに耳打ちをした。

「偶々拾ったにしては、かなり遠くというか、隣のテリトリーまで飛んでいたようですが、まあ、偶々ですよね?」

黒メイドは目と口で弧を描いて圧のある笑顔で頷くと、騎士は震えて小さく「出しゃばったことを言ってしまい、し、失礼しました。」と口を噤んだ。

「落とし物ですし、名前も書いてありませんので、拾った我々の物ではなく、ココアテリトリーにあるのですからココア様の物ですね。」

カーラの発言に大きく頷いたのは、ココアの椅子の両隣に陣取っていた新米執事と黒メイド服の女性、広間の周りに立ち控えていたギャルソンに騎士たち、要するに全員満場一致の頷きだった。

「「その通りです。

このテリトリー内の、草1本、石ころ一つとってもすべてココア様の物です。」」

そういうと、自分たちのポケットからも宝石を取り出し、椅子に座るココアの前に、鳥かごの前のニコの前に差し出し始めた。


「ニコ様にはこっちの、エメラルドのような色の苺をかたどった宝石がお似合いです。」

「いえ、お二人ともこちらの血のように赤いガーネットがお似合いです。

細工師を呼んで、ココア様とニコ様に相応しい装飾にしたらよいかと。」


「新米の癖にやりますわね。」

「お褒めにあずかって恐縮です。」

新米執事と黒服のメイドがお互いの見立ての方が上だとばかりに火花を散らしながら、褒め合うという大人の対応を行っていた。


「そうね、そのニコの近くにいる騎士が持っている、白というよりグレーの光る石は、鳥かごの中に入れておいてくれるかしら?」

「はい、仰せのままに。」

騎士が少し大きめでまるで鳥の卵のようなムーンストーンのような不思議な光を放つ石を置くとカーラがそれに覆いかぶさるように抱きしめた。」

「あら、カーラもこれが気に入ったのね。」

ニコとカーラがお互いに見つめ合っているとき、ココアはコロコロと笑っていた。

「ちょうど、誘い込むためのアイテムを欲しかったところなのよね。」


カーラが鉱山で拾ってきたツインテールの若い女性が持っていたという、ムーンストーンのような不思議な光を放つ石。

広間の窓から見える沈まない夕日がある茜色の空を見て、ココアはその先にあるテリトリーのことを考えていた。

「それを落としていった人、暴言を吐いていたのなら、きっとIDプレイヤーってことね。

AIキャラはそのようなことはしないから。

最近鉱山ができたのは、セツキテリトリーだったはずね、そんなところにいた人はどんなこと言ってたのかしら。

そちらも気になるわね。」

ココアは1人口角を上げていた。

ーーーーー

諸事情により、次回の更新は12月15日となります。

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