1.[夢の終わりと叶った願い]
《P.A》は、今日で6周年を迎えるMMORPGだ。
元号が[令和]から[輪昇]へと切り替わった2030年元旦にリリースされたメモリアルタイトルでありながら、当時樹液に群がる虫の如き地獄の市場であった〈VR/RPG〉ジャンルにて”一等星”の輝きを放ったゲーム。
ゲームジャンルは、”VRMMORPG”。
ゲームタイトルの《P.A》は、”Prime”と”Amber”、この二つの英単語の頭文字を取ったものであり、意味は”君だけの宝物”。
そのタイトルは、このゲームの”自分の好きを極限まで追求する事が出来る”という、最新のAI技術によって可能となった”イカれた自由度”に由来している。
プレイヤーは、ゲームの舞台である異世界〈コスモギア〉の住人。
東には果てしない海、北には天を衝く山脈、西には鬱蒼とした大森林が広がる、”剣と魔法とオーパーツだらけの中世”な世界で、君達はあらゆる可能性を秘めた特別な存在だ。
ギルドマスター、旅商人、暗殺者、衛兵、鍛冶師、魔王...なりたいモノになれる世界で、君は一体何に成る?
ーーそんな世界の中心地〈コア・コスモス〉では、《P.A》6周年を記念した大周年祭が執り行われていた。
街道を行く人気NPC達を象った山車灯籠は、P.Aプレイヤーの絵師様が公式に依頼されてデザインした物であり、そのねぶたの数は余裕で100台を超える。
〈コア・コスモス〉の中央広場には数百の出店がいい匂いを漂わせ、広場のお立ち台の前は超人気バンドの野外フェスの如く人でごった返している。
お立ち台では応募に当選した〈モイラ〉達による企画が行われており、今は〈P.Aボス曲イントロドン〉で観客を楽しませているようだ。
そんなお祭り騒ぎの〈コア・コスモス〉の東部エリア。
2時間ほど前に最後尾の大ねぶたが通り過ぎ、いい感じに熱気が治まった街道から、一つ脇道に逸れた所にポツンとあるラーメンの出店を、一人の女性が訪れた。
「店主、いつものひとつ下さい。」
『はいよ!ちょいと待ってな〜?』「はーい。」
店主と彼女はとても親しい関係のようで、彼女が椅子に座って大根の漬物を小皿に盛っている時、店主は彼女のオーダーを聞かせられるよりも早くラーメンを作っていた。
テーブルの奥に置かれた小さい筒から爪楊枝を引き抜いた彼女は、爪楊枝で漬物を刺してそれを口へ運び、カリポリと食欲をそそる快音を響かせながら、店主がラーメンを作る様子をキラキラした目で眺めていた。
「あいお待ちどぉ!」とお出しされた彼女の「いつもの」とは、野菜の丘の上にザク切りのネギの山が乗った、思想の強すぎる1杯であった。
「頂きます。」
『あいよ。』
そのラーメンをネギ1つ落とさずに手元に持ってきた後、さっきつまんだ漬物の後味を氷水でリセットし、パァン!と爽快に手を合わせた彼女こそ、この物語の主人公。
名を【アマネ・ポリ・マギア】。
日本語、ギリシャ語、ラテン語と続くこの名に込められた意味は、”遍く全ての魔法の使い手”。多少のニホンゴホンヤクが含まれるが、まぁそんな所だ。
そしてその名の意味から分かる通り、アマネは”魔法使い”だ。
しかもただの魔法使いじゃあない。
[HP][AP][AGI][VIT]のステータスをバッサリと切り捨て、更に必要最低限のポイントしか振られていない[STR][DEX][LUK]。
そうやって節約した結果余った膨大なステータスポイントの全てを、[MP]と[INT]と[MND]にぶち込んだ、”オールイン・ソーサリー”。
「ズゾーーーーーーーー)」
『...あー、アマネ。むせてテーブル汚すなよ?』
「じゃっくじゃっくじゃっく)」
『....』
「ゴック)もちろん。」
『お、おう。』
...とまぁ、そこまでは良かったのだが...
アマネのプレイスタイルは、このゲームの用語で”フルオーダー”と呼ばれるもの。
これは”多彩なスキルを使う/使ってくる”の意味があり、アマネは”多彩な魔法を使う魔法使い”なのだ。
で、RPG等のアクションゲームにおいて、”多彩”という言葉には、”浅く広く”という意味がくっついてくる事はよくある事だ。
つまりまぁ要するに...
ーー”器用貧乏”なのだ。
「ーードンッ!).....ふぅ。」
『相変わらず速ぇなぁ〜。』
「ふへへ、はい、お願いします。」
ーーペロリと器の中のネギと麺を消失させたアマネは、トッピングを残したスープをカウンターの上に持上げ、 「いつもの下さい!」と訴えるような爛々とした瞳で店主にお願いした。
「はいはい...」と少し呆れ気味な店主は、その器をまな板とは別の板の上に乗せて、後ろにある中華鍋を手に取った。
『それはそうと、久々だな〜アマネ。元気してた?』
「ん〜...まぁ元気だったよ。いつも通り。」
『...そっか。お疲れ様。......そういえば、師匠から課せられた修行とやらは終わったのか?』
「...あぁ前話したやつ?それなら1週間くらい前に終わっちゃって、今は虚無期間...かな。」
『..ふふ、なんか名残惜しそうだな。』
「まーね........。」
『...ふっ..あーなんか、空気重いな。やめやめこの話題。ウチの仕入れとかやらない?アマネ。』
「え。何出る?」『ん〜、今作ってるこれと同じくらいのまかない。』
「え〜??うーん....迷うな〜...!」
今日が特別な日だからなのか、店主は箱から筋骨隆々の男の腕程はある巨大チャーシューを取り出し、それをサイコロステーキサイズに切り分け、更に取りだした細ネギを目にも止まらぬ早さで細断し、チャーハンを作り始めた。
その時点でわかってしまう圧倒的な重罪具合に目を輝かせるアマネが、「ふふん...♪」とご機嫌そうに出来上がっていく様を見つめながら、漬物を食べようとしたその時だった。
「ーー!(バッ!」
『っを!なんだ!!?』
アマネは、自分の背後から聞こえてきた、(バキバキバキ!)という分厚いガラスに亀裂が走る様な異質な音に反応して振り返った。
手元に召喚した杖を振り、暖簾を吹き飛ばさんという勢いで杖を振り、視界を確保したアマネは、杖に魔力を走らせて、アマネが最も得意とする[雷電の魔法]の術式を展開する。
原則、〈コア・コスモス〉のエリア内での[決闘]を除く戦闘行為はNGであり、やれば大きめのペナルティを課せられてしまう。
が、アマネが知る限り「突然空間にヒビが入り、そこから人が出てくる」という事象は、過去起こったことの無い全く新しいイベント。
アマネは銃口を突き付けるようにしながら、その6人に声をかけた。
「ーー誰ですか?」
アマネがこの世界で経験した事、単純に”驚いた”という事、”ご飯の邪魔された”という気持ち、それらが同時発生した結果、その言葉は、自分でもびっくりする程の”圧”と”冷気”を帯びた。
赤い髪、青い髪、竜種の角に獣人の耳、そして見るからに初心者な装備をした、ミルフィーユの様に縦に重なっている6人は、アマネが纏う異様な存在感に気圧されて言葉が出ない様子。
「....あっごめん..なさい....。」
「ーー”どちら様でしょうか。”」
パリパリと蒼雷が走る魔法陣を向けられ、完全に萎縮している6人。
「......」
私の記憶が正しければ、彼等は、
ーー”運営”と呼ばれる人達だ。
■
「大女優過ぎだよ!」「あはは、ごめんなさい。」
アマネの「運営さん?」という一言によってこの場のガスが抜け、さっきまでとは一転、和やかな空気へと入れ替わった
”と思っていた”。
「もうびっくりしちゃっ「”アース”っ!」
「今は違う、そうだろ?」
「あそうだった、ごめん”エア”、”テオ”。」
「.....?」
「すまない君、迷惑をかけた手前こんな事言うのもなんだか、”君が知る限りのギルドマスターを集めて欲しい”。」
「....は...それはどう「時間がないんだ!兎に角...頼む!」
1人はそうでも無いが、運営チームの人達は何かに焦っている様子だった。
それこそ大御所俳優の様な鬼気迫る表情で、アマネは5人に詰め寄られた。
「どうどう」と落ち着かせようとする店主の声も、彼らにはツーカーらしい。
「まぁ運営の頼みだし...」とアマネはモニターを展開し、その画面の[フレンド]の欄の検索機能に[師匠]というワードを入力すると、[哀終]という名前のフレンドが検索に引っかかった。
その名前をタップすると、その人のレベルやロール等が表示されているモニターが表示された。
アマネが用があるのは、その画面の右上にある[通話]の機能。
「....」
『はいよ!どしたの弟子ぃ〜!』
「あ師匠、急用です。」『お、何かな?』
アマネの通話相手である彼女は、アマネの”師匠”。
ゲームを始めてまもない頃からの付き合いで、レベリングやダンジョン攻略を手伝ってくれたり、魔法を教えてくれたりする先輩フレンド。
アマネも所属するギルド[大陸魔道組合メルゴー]のギルドマスターにして、ゲームの最速攻略チーム[数多の屍の先に]所属の《”大魔法使い”》。
[哀終]さん。
「近くに他のギルマス居ますか?居るなら情報共有お願いします。」
『え?はいはい。何?』
「”スピーカー”、はいどうぞ。」『え何?怖。』
「初めまして、私は”P.A運営チーム”の”エア”と申します。」
『え!?はい!え?』
「時間が無いので手短に説明しますがーー」
通話をスピーカーにして、運営と師匠の会話を合法的に盗み聞きするアマネに、「何言うんだろ...」とワクワクする気持ちが湧いた、その時の事だった。
「ーーッ!!」
アマネは、常時複数の魔法を発動させている。
身体能力を強化する魔法、五感を強化する魔法、存在感を薄れさせる魔法、魔力反応を知覚する魔法、重力影響を軽減する魔法、印象を良くする魔法...その他色々。
なぜそんなことをしているのかと言うと、これは師匠から押し付けられた”空気中の魔力を吸収するアクセサリー”、[マナチャージリング]の馬鹿げた魔力回復力を利用した、魔法の[熟練度レベル]のレベリングの為だ。
魔法の熟練度は、魔法が発動するまでの時間や、消費する魔力、クールタイムにモロに影響が出てくる所なので、「やれる時はずっとやってよ...」と、リングを押し付けられる前からアマネがずっとやっていた事だ。
ーーそのレベリング中の魔法の一つ、[危機感知魔法]が発動した。
これは1分で50MPを消費する[サブスク型]の魔法で、効果を簡単に説明すると....「スナイパーが頭に標準を合わせ、トリガーを引いた瞬間」に発動して、術者に「危険!危険!WARNING!WARNING!」と「通知を送る」魔法。
....つまり、まぁ、うん。
発動したら死ぬ魔法だ。
〈アクセサリー:[クロノスリング]の効果が発動しました〉
「ーーーふぁ。」
ーー周辺は焦土と化していた。
周囲一体の建築物が消滅し、異臭を放つ黒焦げの土が剥き出しの”スーパーフラット”。
ただ1人、師匠から貰った[クロノスリング]の効果で復活したアマネは、呆然と立ち尽くしていた。
目の前にいたはずの6人は跡形もなく、振り返っても黒焦げの地平線があるばかりで、屋台も店主も犯罪飯も、忽然と姿を消していた。
「.........師匠?」
『ーー爆発したね。』
「......レイドかなぁ。」
『.........そうだといi(ブヅッ
「...師匠..?」
ぼーっとしていたアマネは、哀終と通話中だった事を思い出して二言三言の会話を交わしている最中、その通信がぶっちぎられた。
ーーこの通信は設定上、耳に着けたワイヤレスイヤホンを使って行っている。
”魔道通信”といって、微量の魔力を使って対象者と通話が出来る機能だ。
PVPでは”通信妨害”や”通信傍受”なども可能で、ゲーム内外のボイスチャットと言うより、スマホの電話機能的な側面が強い便利機能。
さっき言った”通信妨害.傍受”は、”PVPモード”がONになっている時のみ可能だ。
このPVPモードは、年4のペースで行われる、自由参加型大戦型期間限定超大規模PVPイベント[ティタノマギア]のイベントマップでのみONにされ、それ以外のマップでは絶対にONになることは無い。
故に、あちらかコチラがぶちぎらない限り、通信がぶった切れる事は無いのだ。
「.....妨害?なんで?」
その名に”魔道”の文字がある通り、これも”魔法”の1つ。
魔道具を経由して発動されるタイプの魔法であり、まだアマネが初心者の頃、そのスタイルの弱点である”器用貧乏”を補う為に”魔道具”を多用していた経験から、アマネは今回の通信の途絶を”妨害”と見抜いた。
ーーアマネのその推理は、正しかった。
確かに通信は、”第3の原因”によって切断された。
ただ、”意図的に妨害か”と聞かれれば、そうではない。
【それ】が顕現した事による、二次被害的なものだからだ。
「....!!!」
自分の背後に、異質な”存在感”が生じた。
それは、理不尽にブチ切れる親や、デカい声でしか子供を諭せない教師に似た[狂気]を、ヘドロと溶岩で満たされた大鍋で3日グツグツと煮込んだ様な、【狂気】。
グルン!と、Jホラーの幽霊役として出演出来そうな勢いで振り向き杖を構えたアマネは、【それ】との邂逅を果たした。
ーー【それ】は、黒よりも黒い男物のスーツを来た人。
袖から見える手は吸い込まれる様な黒いモヤで覆われて、白いシャツと黒のスーツによって引き立てられたネクタイは虹を筆でかき混ぜたような汚い色をしている。
襟から顔を覗かせる肌は手と同じくモヤで覆われており、ブラックホールの様な虚空が顔の代わりに浮いている。
普通なら頭上に表示されるはずのステータスバーも無く、かといってレイドボス的な表示もされない。
ーーこれまでに無い異な存在との邂逅に、アマネは野良猫の様に毛を逆立てていた。
「.....だれ。おまえ。」
アマネが怒気の籠った言葉を言い放つと、その背後に、多色多数大小無数の「魔法陣のアルプススタンド」が展開された。
杖を振るわけでも無く、ただアマネの”声”をトリガーに顕現したそれは、アマネが唯一師匠の口から「ナニコレェ....エェ...???」という言葉を引き出させた、[P.A]に匹敵する魔法の積乱雲。
[自奏魔術:大雨]。
「お口、あるよね。」
さらに[雷電の魔法]を準備した杖を構え、アマネは淡々と言葉を放つが、それはノーリアクション。ただそこにボーッと立ち尽くしているだけだ。
なにかノイズの様な音を発するでもなく、風が吹き荒れるわけでもなく、ただ”虚無”な時間が過ぎていく。
「撃つよ。」
ーーその言葉は、ただの脅しの言葉だった。
そいつの影から、”もう1人が出てくるまでは”。
「![”雷電・稲ーー
朱と白と黒のダイヤ柄のマントを軽やかに靡かせて、ズルン!と影から飛び上がったそれは、口角をつり上げ、への字に曲がったバカにしたような目の面を付けた男だった。
アマネは咄嗟にその男に標準を絞り、出の早い雷魔法の中でも特に出の早い魔法を発動した。
それに反応する瞬発力と、発射された稲妻の正確性は目を見張るものがあったーーが、
『”人間”、”俺に効くか?” ”それが”。』
「(ーーー...!し
ーー自分の体が内側から爆ぜるような感覚は、背中が触れる石の固く冷たい感覚によって、じんわりと上書きされていく。
幾度と無く味わい、最近は疎遠となっていた懐かしい”冷たさ”。
そうアマネは、”死んだのだ”。
「ーーー!?マギアさん!!?」
「........!!!”プロテア”さん!」
リスポーンポイントでボケーッとしていたアマネを再起動させたのは、焚き火のような橙の髪と、活力に溢れる白銀の瞳を持つ、聖職者の装いをした女性。
彼女は、[神託の聖女 プロテア]。
つい最近まで”修行”と称して、アマネは彼女の用心棒をしていたのだ。
1週間も立たないうちの再開。
しかも、街で教会の活動をしている時に会釈する程度の再開じゃなくて、アマネの死に戻り場所である神殿でのバッタリ遭遇。
驚かれるのも無理は無い。
■
トップフィリアの面々と、中央広場でグダグダしていた時の事だった。
突然弟子から電話がかかって来たと思ったら、出力最大[爆発魔法]みたいな大爆発が街の中で発生して、直後、弟子との電話がぶっちぎられた。
「っーー...」
「...なんだあれ。」
「ーー恒例のレイド?」「案内無くない?」「たしかに。」
「....[武装換装]。」
装備を着心地のいい軽いカジュアルスタイルから、数多のレイドを攻略して来た歴戦のガチ装備に換装した哀終を見て、周囲のモイラ達もぼちぼち装備を換装し始めたその時。
全員の視線が爆発の噴煙に集中していたその時。
哀終たちは、自分の背後に【狂気】を感じた。
「!(ばヂュッ!!」
その瞬間に哀終は、利き手の中に絵筆サイズの魔法の杖を出現させ、最低限の最大出力の[切断の魔法]を構築しながら、体が動くよりも早く、腕だけを動かして”それ”を殺さんと魔法を放った。
近くに居たメンバーも、哀終と同等かそれ以上に早く動き出していて、殆ど同時のタイミングで、多数の魔法や奥義が”ソレ”に向かって放たれた。
魔法を放ってから2秒遅れて、哀終は”それ”を目視した。
「(”黒い男”と、それにまとわりつく”道化師の男”。
魔力反応の痕跡から判断するに、さっきの怒涛の攻撃はどちらかに無効化されたか。
結構難解な[空間属性]の魔法だったんだけどなぁ。
VCは使えなくなってる、連携はほとんど無理。
マギアは多分死んでるから、こいつは敵。)」
冷静な分析を行う哀終を他所に、壇上の”道化師”は語り出す。
『ウェルカム!トゥ!アナザーワールド!』
「ーー?」
『君たちにプレゼントを用意したんだ!喜んでくれると嬉しいな!!』
道化師がそう言うと、2人は壇上からフワリと浮遊し、どんどんとその高度を上げていく。
天を指さす道化師は、私が見た事も無い超大規模の魔法陣を構築し始める。
ーーーいや。
「....は?なにそれ...!?」
魔法陣は既にそこに展開されていた。
奴が今やっているのは、その魔法陣を隠していたカーテンを開ける作業。
ーーモヤが晴れるようにして、少しづつその全貌をのぞかせる魔法陣は、その規模に目が行きがちだが、哀終は魔法陣の”色”に注目した。
魔法陣のフレームと魔法文字の色は虹。
「ーーーーっ」
”大魔法使い”もドン引きな、究極難度の魔法の色だ。
■
「ーーはっ...マギアっ...!!まっ...待って!!っ..は!!」
”何でか分からないけど!1週間前から不思議な感じなの!”
”貴方にちゃんと感謝を伝えたかったの!!”
”それとまだ一緒にいて欲しいって!!伝えたいの!!!”
”何で私を無視して行っちゃうの!!?”
本来NPCにあるまじき”雑念”で、プロテアの頭は爆発寸前だった。
デスペナルティによって得た破壊的なデメリットを、魔法で無理やりプラマイゼロにまで戻し、血反吐を吐きながら神殿出口へ一直線な、意味わかんないアマネを追うプロテア。
全ては感謝を伝える為、後ちょっとのわがままを聞いてもらう為に。
ーーズガァン!という轟音が神殿内に響く。
それはアマネが[衝撃魔法]で神殿の扉をこじ開けた音だった。
それがプロテアには、音の出しか聞こえなかった。
「ーーーえ....。」
そこは、銀河を一望する位置に置かれた、ひとつのテーブルとふたつの椅子。
テーブルに置かれたマグカップは、いい匂いの湯気を立ち上らせている。
ーー”お前さんに少し、力を貸してやろう。”
”さ、走りなさい。邪魔は入らんじゃろうから。”
「ーーーー(ハッ」
気づけば立ち止まっていたプロテアは、うしろから足音と共に聞こえてくる「こちらへ!シスター・プロテア!」「危険です!お戻りください!」という、教会員と”勇者パーティ”の言葉をブッチして、邪魔なスカートの裾を捲し上げて、彼女の元へと駆け出した。
さっきまでと違って、不思議と体が軽かった。
”走る”に必要な歯車が全て噛み合ったってかんじだ。
いち早くマギアの元へ駆けつけたい!って思いが、体に良い異常をきたしたのかもしれない。
「ーーっ!!?」
ポーンっ!と神殿の出口から文字通り飛び出したプロテアは、彼方に感じる巨大な”邪悪”と、目の前にそれを遥かに超える”魔力の渦潮”を認識した。
反射的に発動させたアマネから教えてもらった[浮遊魔法]でフワリ着地すると、目の前の術者の”異常性”が1発でわかる光景が。”足の踏み場も無いほどに割れた瓶が散乱した大地”が、そこにあった。
それは、[MPポーション]を初めとした、”魔力回復系消費アイテム”の残骸の山。
この広場に渦巻く魔力の濃霧は、十中八九これが原因だろう。
ーーアマネ・ポリ・マギアは、その残骸と魔力の中心に居た。
[自奏魔術:大雨]の設定を”強化魔法/全発動”に変更し、数百ものバフを管理しながら、杖の先に展開した[雷電の魔法]へ、溢れる魔力を収束させる。
”食べ物の怨みは深いのだ”。
それに奴は、私がこの世界で最も通いつめた店を消し飛ばしやがった。
フルドーピングの全力全開をぶつけるには十分すぎる理由がある。
ーーマギアは、魔法の射線を確保する為にフヨヨと空へ昇っていく。
マギアの魔力操作によって爆発寸前をキープするバチバチ煌めく魔力の濃霧と、その渦の中心で一等星の如き輝きを纏うマギア。
その光景を、ただ呆然と眺めるだけのプロテアでは無かった。
「ーー【”M/P.A”】。」
ーープロテア、またの名を[神託の聖女 プロテア]。
先代の神託の聖女が行方不明となった事で、急遽”神託の聖女”として抜擢された少女。
もちろん”神託の聖女”としての能力は皆無。
他と比べて魔力と魔法能力が高く、[先代神託の聖女 ラテナ]と仲が良かったというだけの、”聖女の代役”だった少女。
先代神託の聖女の失踪を”誘拐”と判断した教会上層部は、仮の聖女といえ、教会の成績優秀者でもあるプロテアにボディーガードを付けることを決定。
そのボディーガードの役に白羽の矢がたったのが、[数多の屍の先に]という”勇者パーティ”に匹敵するチーム。
...だったのだが、彼等は”プレイヤー”。それも”攻略班”だ。
幾ら重要組織.重要NPCに関係するクエストとはいえ、その時期は5周年の前夜祭イベント真っ只中。
イベントダンジョンを最高速度で突破し、イベントアイテムをかき集め、色んなアイテムがランダム排出される”BOX”を交換しまくる、所謂”箱イベ”の2日目だった。
あまりにもタイミングが悪すぎたのだ...。
そんな訳で話を蹴られて、「さぁどうしようか」となったタイミングで、[数多の屍の先に]の哀終から逆に話をもちかけられた。
”私達は忙し過ぎて無理だけど、私の弟子なら貸し出せる。”
”年齢的にも性別的にも話しやすいと思うし、実力は私が保証する。”
”貴方達は聖女を守れて、こっちは弟子の修行になる。どう?”
〈コア・コスモス〉の冒険者協会から《”大魔法使い”》の称号を与えられた伝説の魔法使い、”哀終”直々の紹介とあっては、教会は二つ返事でその提案を受け入れた。
それが、アマネとプロテアの出会いだった。
ーー哀終の予想通り、2人の相性は抜群に良かった。
学校暮らしで寮暮らし、外に出るのは巡礼の時だけ。
そんな生活のプロテアには、アマネが持ってくる”別の世界の日常”の話はとても魅力的だった。
アマネも、プロテアがずっと目を輝かせて反応してくれるから、それが楽しくてベラベラ喋りまくって、話題作りの為にお出かけが増えたりもした。
アマネが見せてくれる魔法はどれもファンシーで便利な物ばかりで、いざと言う時の”逃走用魔法”なんてのも教えて貰ったり、その見返りとして、プロテアが知る限りの回復魔法を教えてみたり。
たまに寮を抜け出して下町を散策したり。
ーーが、それは僅か1ヶ月の夢。
冒険者協会の”勇者パーティ”が護衛を代わると言ってきたのだ。
2人はそれを望んでいなかったが、”哀終の弟子”と”勇気パーティ”ではブランドパワーが違い過ぎた。
教会はその提案をアマネの時の3倍早く二つ返事で了承し、アマネは子供がピーマンをどける速度でそのポジションから追い出された。
その頃だった。
プロテアが、[”神託の聖女”]になったのは。
ーーもう一度彼女と遊びたい。
話をしたいし、一緒にいたい。なんなら2人で旅をしたい!
退屈な毎日はもういいから、あの”楽しい”をもう一度!
そんな思いが、彼女にそのきっかけを与えた。
「マギアーーっ!!!」
「ーーーー手を貸してプロテア!!!」「もち!!ろんっ!!!!!!!」
ーーいまさっき。
「【勝利を貴方に!】!!!」
ーーマギアの近くを、蒼白の粒子が舞い踊る。
マギアの身体からフワフワと出現する火の粉のようなそのエフェクトは、プロテアが唱えた【勝利を貴方に!】という魔法によって発生したエフェクトだ。
「(ーー1回限りの”回数型”のバフ!.....え。は、は???)」
「いっけーー!!!!!マギアーーーーっ!!!!!!」
「(強化倍率おk....ええい後あと!!!)」
その強化倍率は、脅威の”99999%”。
無詠唱且つほぼノーモーションでやっていい数字じゃない。
けど、それに驚いている暇は無い。
空を見上げれば、そこにある魔法陣はその全貌を顕にし、あの虚空のネクタイの様な歪んだ虹色に発光し始めていた。
魔法陣の発光は、”何時でも魔法を打てますよ”の意思表示。
もう時間は無い。
「”お前マジで許してないから”」
ドスの効いた短文詠唱で最後の仕上げその1を終えたアマネは、魔力を操り体を動かし、”魔法の杖”を振りかぶる。
魔法陣から迸る蒼白色のスパークはより一層苛烈さを増し、その激しすぎる光によって、広場一帯が暗転する。
このゲームの魔法の”弾速”には、”発動時の慣性が乗る”という隠し仕様がある。
これが最後の仕上げその2。
ーー周辺魔力を[雷電の魔法]へ破裂ギリギリまでつぎ込んで尚、魔力はまだ尽きなかった。
それを有効活用しようと思いついたアマネは、その余剰魔力を”自分”に取り込ませ、”5日分のデスペナルティの代わりに10秒だけあらゆるルールを無視できる”効果を持つ、消費系課金特典ユニークアイテム[”やりたいほうだいチケット”]を使用。
MP換算で30万を超えた膨大過ぎる大魔力は、[100MP消費=1ステータスポイントGET]とルールを無視する事で、光の速さで消化完了。
発生した”3000ステータスポイント”は全て、”魔法攻撃力”に直結する[INT]にオールイン。
これで最後の仕上げは終わり。
後はホームランを打つだけだ。
「ーーースゥ...っ!!!!」
ーーだが奴は、この一撃を意に介さないだろう。
魔力の渦は無論察知されているだろう。アマネが唱える魔法も勿論認識しているだろう。
この”ボスのHPを一撃で持って行くかもしれない一撃”を、理解しているだろう。
だがそれでも、奴はこれを無視するだろう。
何故なら、魔法には”個性”がでる。
魔法陣の型式、得意な魔法、魔法に籠った魔力の質...それは”非魔法使い”である”剣士”でも理解出来るほどに、わかりやすい”個性”だ。
故に師匠クラスとなれば、魔法の性質を一瞬で看破し、その魔法を分解する魔法を発動する事も容易い。”1度の戦闘で、同じ魔法はそうそうくらわんよ!”と、実演までしてくれたからよく覚えている。
ーーあの”ポリコレネクタイ”と”イキリピエロ”は、アマネの魔法を1度無効化している。
奴らは恐らく”神格”だ。
アマネを見下すような言葉を使っていたし、十中八九この魔法を盛大に弾いて、『人間がふぜいが!神に対して不敬であろう!』とか、どこぞの半身崩壊的なセリフを言い放つシナリオを思い描いているに違いない。
ーー”だから指先1回分、俺が力を貸してやろう”。
「私の行き付けの店返せえぇぇええ!!!!!!!!!!」
腹の底からの大声とともに、アマネは”魔法の杖”を振った。
”場外ホームラン”を確信させる確かな感触を腕に残して放たれた”稲妻”は、空を切り裂いて飛んで行く。
ーーアマネがクリティカルなタイミングで魔法を発動させたその瞬間、デコピンで弾かれたような、良い追い風が吹いた気がした。
■
『その名も”異世界転移”だ!!!君達みんな大好きなんだろう!!?!?』
ーー広場に轟く神の御言葉は、集まったプレイヤー達に爆発的な衝撃を与えた。
”異世界転移”...まさかゲーム内でその言葉を聞く日が来るとは。
さっきのスゲー爆発で何事かと思ったけど、なんだ演出かぁ!
5周年だし、今喋ってるのは新しい大地人かなぁ!
ーーと感動しているのは、上位陣を除いた一般プレイヤー達。
数多の高難易度コンテンツ、又は幾千回の対人戦の経験から、彼等は”これには絶対に裏がある”と確信していた。
哀終に至ってはさらに、運営の急用、弟子の死亡、通信妨害と、不穏要素120%な出来事がここ数分以内に連続して発生している。
それに空のあの魔法陣、あれは毎回周年イベントのケツで執り行われる”新コンテンツ実装!”のプログラムで使われる魔法陣と告示したもので、けどこれまでのと比較して色彩が異なっているし、術者が運営じゃなくぽっと出の謎の2人組だ。
魔法陣の色は、その魔法陣から発動される魔法の属性によって異なる。
火属性なら”赤”や”橙”、水なら”青””水色”、土なら”茶”や”緑”という風に。
そしてあの魔法陣は、”フレーム.魔法文字共に虹”だ。
フレームは魔法の属性、魔法文字は魔法の効果を表すもので、両方同色が基本。
哀終等の上位ロールともなれば別々の色をセットすることが出来、その魔法の強さは言うまでも無く強力な物だが、その魔法の使用難易度は”初見で戦闘機を動かす”レベルの爆絶高難度。
ーーそんな魔法陣の仕様があるにもかかわらず、あの魔法陣は”虹色”。
しかも、空に架かる様な”虹色”では無く、パレットの上で絵の具を混ぜたような”虹色”だ。
その魔法の使用難易度は言うまでもないが、それ以上に魔法の規模や、付与された能力の強さ、影響は、世界を巻き込む程に絶大なものだろう。
『この魔法はそれさ!!!”強くてニューゲーム”!!”あれなんかやっちゃいました”!?みんな大好きなその願いを!!!この私が!!!【カオス】が!!叶えて見せよう!!!!』
哀終の後ろから、おおー!と期待の歓声が上がる。
空の魔法陣はより一層の輝きを放ち、魔法発動まで秒読みに入ったというところ。
ーーその時、哀終はアイデアロールでクリティカルを出した。
それは希望的観測であり、ラノベの中の非現実的な話で、しかしある程度辻褄のあってしまう”嫌な予感”。
「もしかして私達、この世界に閉じ込められるんじゃ....」
...今の哀終に、あの魔法陣を止める術はない。
勇者パーティの”賢者”が居て、さらに全魔法使いで協力したとしても、あの魔法陣を分解するには最低5日はかかるだろう。
魔法文字の1部書き換えも、発動する魔法の効果が解析出来ていない以上、目に付いたものからやたらめったらは絶対に不幸を招く。というかあの魔法陣の魔法文字が古過ぎて、解読作業もやらなきゃいけない。
私達に、あの魔法が齎す”何か”を、受け入れる以外の道はなーー
「ーーまって。”カオス”?」
「だよねアイ!カオスって言ったよね!?今!!!」
シレッとスルーしかけていたが、あの道化は自らを”カオス”と名乗った。
正直見た目的にはお前が取り憑いてるポリコレネクタイの方が”カオス”感あるよってツッコミはなしだ。
ーー”カオス”とは、[P.A]の神話に登場する”真なる原初の神”であり、[”始まりの決闘”]において現最高神ゼウスに敗北し、その死体は数多の神の権能の材料として利用されたと記される、”虚無”または”混沌”を司る神。
そう、”既に死んだ神”だ。
”封印”とか”追放”とかじゃなく、”死亡”。
封印を解いたぞ!私が帰ってきたァ!じゃない。もう死んでる。
し、”絶対に復活しない”。
ーーその時、哀終の[危機感知魔法]が起動した。
哀終の[危機感知]は、術者に対して”少しでも負の影響を及ぼす”と判断された物を瞬時に察知し、哀終に通知。更に察知した魔法を即座に解析し、その魔法に対して有効な複数の魔道障壁を通知のタイミングで同時展開し、術者を保護する。
”少しでも”とは本当にその通りで、エリアギミックの”毒霧領域”や”放射能汚染領域”、初期レベルの[防御ダウン]など、あらゆる”負の影響”を感知し、効果を発動する。
青白い泡のような魔法結界に包まれた事で、哀終は「諦め考察モード」から、再び「絶殺戦闘モード」へと思考を切り替える。
その時に哀終がやったのは、[危機感知]によって発動された保護魔法の確認。
[危機感知]は”魔法の解析”という効果を持つが、その解析結果は哀終に開示されない。だから、いちいち発動した魔法を確認する必要があったのだ。
今回発動した魔法はたった一つ。
《”擬似再現・不破の盾”》
哀終の持つユニークスキル《”擬似再現”》に含まれる魔法のひとつで、《”不破の盾”》と言う。
HP及びMPを75%消費という、哀終からすれはエリクサー9本分の莫大な発動コストの代わりに、”即時発動”を可能にした超強力な”防御結界”。
結界の空間座標を固定し、10秒間ありとあらゆるダメージを無効化する効果の魔法だ。
その発動コストの危険性から実質的な封印状態にあった魔法だが、それを除けば”即発動可能な無敵結界(スーパーアーマー付き)”と優秀。
ーー哀終が発動した魔法を知り、それに疑問を抱く暇もなく、”雷”が空を引き裂いた。
『ーーーッーーガーーーァ.....!!!』
顔面ブラックホールが”権能”を発動した事で、”道化”の顔面を消し飛ばしていたはずの雷撃は軌道を逸らされ、空中の魔法陣に破壊的なダメージを与えた。
が、軌道を逸らされたからと言って、雷撃に伴う”衝撃”までもを逸らせる訳ではなかったようで、”道化”はピクピクと痙攣しながら、顔面ブラックホールにその身体を支えられていた。
ーーだからと言って、発動しかけの魔法は止まらない。
空の魔法陣は更なる輝きで全てを照らし、そしてーーー
ーーその光が収まった後の空には、2人の神?の姿も、空にあった巨大魔法陣も、その姿を忽然と消していた。
広場に集まったモイラ達の頭の中に、『ウェルカムトゥアナザーワールド』という言葉が、妙に印象に残っていた。
■
「ーーん....」
「....!!マギアーーっ!!!!!」「グエッ!」「よっ.....かったぁぁ!!!!!!!」
アマネが状況を理解する前に、胸元にゴンッ!と衝撃が走る。
反射的にその方を見ようとすると、ベチャ!と濡れたタオルが額から落ちるのが見えて、見たそこに既視感のある焚き火のような橙の髪があった。
目線を下にやるのも大変なくらい全身が石のように重たいが、その頭を撫でるくらいはできる。何とか。
そうして何とか上げた腕でその頭を撫でてあげると、涙腺がぶち壊れたのか、顔面ぐしゃぐしゃのプロテアが面を上げた。
ーーここは、神殿内にある[神託の聖女プロテア]の自室。
デスペナルティ状態での擬似的な大魔術の行使、体のキャパを大きく超えた魔力の操作.吸収、長時間超高濃度魔力地帯にいた事による悪影響....様々な要因が重なった結果、アマネはホームランを打った直後に意識を失ったらしい。
で、空から落ちて落下死する所をプロテアが助け出し、彼女が今の今までここで看病していた。という空白の補足を、アマネは”アース”から受けていた。
「その....ごめんなさい、余計な事をしたと思います。」
その後、アマネの口から出た言葉は”謝罪”だった。
アマネには、自分の魔法が逸らされて、空中の魔法陣にぶち当たった所までの記憶があった。
よく分からなかったけど、あれだけクソでっかい魔法陣だ。なにかヤベぇ効果を発動したに違いない。私はその魔法陣にアホみたいな魔法を直撃させてしまったのだ。やべぇ効果が更にやばくなってたらどうしよう。
そう思って、アマネは「ごめんなさい」と言った。
「あぁっ..と、なんて言うべきかな....とりあえず、その〜気にしないで!」
「.......すいません。」「あえっと...」
....言葉を濁された。
つまりまぁ、私の魔法が、あの魔法を悪い方向にねじまげてしまったんだろう。
被害はどれくらいかな、訴訟とか起こされたらどうしよう。
ーーみるみる顔から生気が抜けていくアマネの変化に気がついたのか、”アース”は言葉を続ける。
「....えっとねぇ、後でエアとか、君のお師匠様とかから説明があると思うんだけど、君は全プレイヤーの恩人なんだよ!」
「....はい?」
「あの魔法さ!ラノベの「突然謎の光が!気がつけば異世界!」〜って言うのと同じ効果があって....で、発動されたら本来は、”1デス=キャラロスト”のハードコアモードが始まるはずだったんだよ。でも、君の魔法のおかげで効果が書き換えられて、”無限復活”のシステムは残ったままだったんだ。」
「.......??」
と説明されても、アマネはイマイチピンと来ない様子。
まぁそれはそうだろう、今のアマネの認識では”私は超ハードコアモードの発動を阻止した”というだけで、それ以外の事は何も説明されていない。
つまり、”私が齎したいい事はそれだけで、それ以外はクソ最悪な魔法になっちゃった”とかいう可能性もあるわけだ。「君は悪くない」とか言われても、説明無いしなぁ...って感じだ。
「....ごめんね、私達が不甲斐ないばっかりに”皆をこの世界に閉じ込めてしまって”....」
「.......え。」
「あっや違うよ!?今回のイベントの犯人が私達って訳じゃなくてね!?そのそれはその、神様が勝手にやった事っていうか、AIの暴走っていうk「つまり、もうあっちの事を考えなくていいって事ですか?」
ーーさっきまでこの世の終わりみたいなテンションと声色と顔だった彼女が、突然息を吹き返して、なんなら動物園に来た子供のような元気と活力を帯びた眼でこっちを見てくるもんだから、アースはその雰囲気とテンションの落差に思わず腰を抜かしてしまった。
ただ、その発言を聞いた”アース”の感情が”ドン引き”まで至らなかったのは、そう言いながらアマネが浮かべた、”涙を伴った安堵の表情”を見てしまったからだったーー。
タイトル:[P.A]
ジャンル:VRMMORPG/アメイジングユニークアクション
CERO:A
販売:万遊堂
開発:Studio Trickster
発売:Rs/2030/1/1/00:00
概要:”夢を叶えるRPG”
プレイヤーは、ゲームの舞台である異世界〈コスモギア〉の住人。
東には果てしない海、北には天を衝く山脈、西には鬱蒼とした大森林が広がる、”剣と魔法とオーパーツだらけの中世”な世界で君達は、あらゆる可能性を秘めた特別な存在だ。
ギルドマスター、旅商人、暗殺者、衛兵、鍛冶師、魔王...”現実では絶対無理な”なりたいモノになれる世界で、君は一体何に成る?
あとがき
作者の紅霧(あかぎり)です。
私の頭の中にしか設定が無い小説なので、矛盾等がありましたらコメントして頂けると幸いです。
不安なのは、果たしてこの作品はどのジャンルに属しているのかな...と迷った挙句、”SF/VRゲーム”の欄に投稿した事です。
次話投稿まで気長にお待ちください。
名前:アマネ・ポリ・マギア
職業:[魔道士/Lv.78]
副業:[図書館職員/Lv.90]
種族:[大地人/Lv.43]
HP:4300
MP:13500
INT:10000
武器:[魔法の杖(トネリコ)]
希少:規格級/ユニーク
持ち手にトリコロールの布が巻かれている杖。
これはアマネが自作した魔法の杖であり、その16代目。その性能は規格品よりも劣る。
だが、アマネの戦闘は”多種多様な魔法の同時発動”が十八番。
規格品では魔法の乱発による耐久力の消耗が著しく、故に自作した方が安く済むのだ。
装備:[カリュドーンの猪の皮鎧]
希少:特注級
レイドイベント[カリュドーンの猪狩り]で貰った、参加報酬.討伐報酬.特別活躍報酬を使って、ギルド[千客万来]のプレイヤーに作って貰った[一式装備]。
黒い革製のロングコートと、少しゆとりのある土色のニットセーター、金具の綺麗な黒のベルトが引き締める暗色のパンツに、同じく暗色のベルト式のスニーカーと、現代風ファッションな一品。
魔法攻撃に対して高い防御能力を持つ。
装飾:[天龍の霊毛で編まれたヘアゴム]
希少:ユニーク
水色と群青色の”編み込まれたグラデーション”が特徴的なヘアゴム。
これには、[天龍カーマイン]が飛行に用いる”空気を産み風を産む毛”、[霊毛]が使われており、適切な量の魔力を流してやると、装備者は少しの間宙に浮く事が出来る。