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room
彼女の薬指にリングを通すつもりだった。
『さようなら』彼女の細い声が耳に響く。
大きなアイスクリームディッシャーで心を抉られるような感覚があった。
何とかして、この場を取り繕わねばと思った。しかし、そんなことは無駄だということもわかっていた。
凍りついた空気と形容するに相応しい
その中で2人は向き合っていた。
彼女は勢いよく立ち上がり、
沈黙を裂いて部屋を出て行った。
事の発端は、僕のある行為によるものだ。
彼女とは10年以上の付き合いだった。
ごめん。その一言を言い出せなかった。
呼び止めるべきだった。
だが、2LDKのリビングに項垂れたまま、
僕は動けなかった。全て僕が悪い。