3.ワイバーン
「むぅ……ワシは……何を……?」
暫くしてカナン王が目を覚まし、顔を上げ俺を見上げる。
「寄生していた蠅は駆除した、国全体を救ったキールだ感謝しろよ?」
「ぬお!? キールじゃと!! あの伝説の……いや今はそのようなことはどうでもよいか、国を救ってくれたことを感謝する。」
「キール、カナン王様と知り合いなの!?」
「昔少しな、カナン王バアルの居場所を知らないか?」
「すまぬ、今までの記憶が無いのだ……」
「やはり記憶が無いようだな、仕方がない自分の足で探すとしよう。」
「待ってくれ、せめてもの餞別じゃ! これを持っていくと良い。」
カナン王から袋を渡され中を見てみると何枚か金貨が入っていた。
「助かる、また何かあったら報告を頼もうか。」
「うむ、なるべく力になろう。」
俺はサラと共に城を出て外道を歩きながら会話をする。
「ねえキール……」
「なんだ?」
「次は何処に行くの?」
「そうだな、森を抜けた先に小さな村がある。 まずはそこへ……」
「きゃあああああああああ!!」
「悲鳴!?」
突然森の方から女の子の悲鳴がこだますると咄嗟に俺は走り出しその場所へと辿り着くと、森には居ない筈のワイバーンが馬車を襲い周りには兵士が倒れていた。
「ワイバーン!? キール、この辺には居ない筈のモンスターよ!!」
「それよりも、あれをみて! 女の子がワイバーンに襲われてる!!」
ワイバーンは壁になっている場所へと金髪碧眼の少女を壁際に追い詰めていた。
「や、いやああああ!!」
ワイバーンは大きな口を開くと勢いに任せ器用に逃げようとする少女の後ろから服に噛み付くとベリリリと服のみを引き裂き小さな背中から肌を覗かせる。
「大変! キール早くあの子を助けないと!! キール?」
「蠅だな……」
「え……? 何言ってるか分からないけど私行くからね!?」
サラは走り出しワイバーンの前に立ち塞がり槍を突き立てるとワイバーンは大きく息を吸い込み炎のブレスを吐く。
「きゃあああああああああ!!」
「やあああああああああ!!」
ワイバーンのブレスでサラと少女の服のみが燃え盛り二人を素っ裸に変えると覆い被さり長い舌で舐め回し始める。
「ひっ! いやっ!!」
「やめてええええ!!」
「蠅と認識完了……くたばれ!!」
パァンとワイバーン後ろから蠅叩きで弾くと白目を剥き横に倒れ伏せる。
「サラ、無茶をするな。」
「ごめんキール、でもこの子が……」
「ん、気絶しているがこの子はタロア王国のシャロ姫だな。」
「え、シャロ姫様なの!? なんでこんな所に?」
「おそらくは蠅に寄生されなかった者達と国から逃亡を図ったと見て良さそうだな。」
幼女体型のシャロ姫は先程のワイバーンからのブレスで気絶してしまっている。
「こんな見た目だが十代なんだよな。」
「子供に見えるわね、ところで兵士の人達はどうするの? 回復薬はあるけどこの怪我じゃ間に合わないわ。」
「問題無い、ヒール型に変われミランダ。」
「はいはーいキール様♡」
大怪我をした兵士達を一人ずつミランダで叩くと食い千切られたであろう足や腕が元に戻り次々と目を覚ます。
「うっ……うわあああああ!! 腕っ!! 腕が!! あ、あれ? 腕が在る……?」
「よう、兵士全員の無くなった腕と足は元に戻した。」
「あ、有難う御座います! シャロ姫様は!?」
「安心しろ裸で寝ているだけだ。」
「良かった、……何故裸?」
「何があった?」
「ここで話すよりは近くに安全な場所を確保してからの方が」
「なら馬車も元に戻すか。」
壊された馬車を蠅叩きで叩くと壊される前の状態に戻り気絶したサラとシャロを馬車へと運び近くの村まで運んでもらう。
「村に着けば服くらいは拝借できるだろう。」
「ですが、クローズ村もタロア王国と同じ状態になってます。」
「問題無い、俺の力で寄生した蠅は全滅させられる。」
クローズ村に着くと村人達は蠅の様に手を擦り合わせ挨拶をし頭を撫でている、そこへ俺はカナン王国の時と同様に地面へとミランダを叩き付けると村人は全員地面に倒れ伏せる。
「これは!」
「さて、服の調達が先だな。」
「こ、コチラへ!!」
兵士は服屋へと案内し店内から適当にサイズの合う服を俺に渡しサラとシャロに着替えさせる。
「これで良いか。」
「村人達は大丈夫なのか?」
「気絶しているだけだ、暫くすれば目を覚ますだろう。 それよりタロア王国てわ何があった?」
「実は、ショウジョウと名乗る者が現れ突然襲って来たのです。 命令を聴かない者を排除するとか言われて。」
「ん、んん……」
(キール様、シャロ姫が起きたみたいよ?)
「目覚めたかシャロ。」
「あっ! キールお兄ちゃんだ!! 怖かったよう!!」
シャロは起き上がると泣きながら俺に抱き着いてきた。
「安心しろ、俺が必ずタロア王国を救ってやるからな?」
シャロの頭を撫でるとニコリと笑い泣き止んだ。
「キール殿、我々も力を貸しますぞ!!」
「いや、俺らだけでいい足手まといになるだけだ。」
「そうですよね、すみません出過ぎたマネをしてしまい。」
「なら、アタシが行く!」
「シャロ姫様!?」
「アタシなら城の中の情報知ってるから役に立つよ?」
「そうだな、ヤバくなったら逃げるんだぞ?」
「はーい!」
「では、キール殿シャロ姫様をお願いします。」
「任せておけ、サラも無理はするなよ?」
「ええ、私も槍で援護くらいは出来るわ。」
こうして、サラとシャロと共にタロア王国へと馬車を走らせ到着すると城に入る前にタキシードを来た高身長で白髪の男性が迎え頭を下げていた。
「どうも、お待ちしておりましたショウジョウと申します。」
「情報が早いな。」
「ええ、何と言っても貴方達は既に私の蠅達に見張らせていましたのでね?」
離れた所から無数の蠅の羽音が耳障りと思えるくらいに鼓膜へと鳴り響く。
「残念ながら私の勝ちです、貴方達は躱すことが出来ますか? この物量を?」
「他の奴ならともかく俺なら可能だな。」
何万匹もの蠅の大群に囲まれるも俺は余裕の表情を浮かべ相手を揺する。