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なろうラジオ大賞4

車いすのアイツが残してくれた体育祭の想い出

掲載日:2022/12/24

 俺のクラスには車いすに乗っている生徒がいる。

 難病で身体の自由が利かず、一人では歩けないそうだ。


 でも、明るい性格でうじうじしたりせず、みんなの人気者だった。

 クラスの馬鹿にノリを合わせて一緒に盛り上がり、どんな時も楽しそうにしている。


 んで、体育祭にそいつを競技に参加させてやろうっていう空気になった。


 俺はあんまり気乗りしなくて、クラスメートの一人が注意してきた。

 みんな一緒に頑張ろうって言ってるのに、アンタは何なのって突っかかってきたんだよ。


 でも、車いすのそいつが言うんだよ。

 そんなの人の自由だろって。

 みんなの価値観を大切にしようぜって。


 それ聞いてすげーなって思ってさ。

 俺もちょっとだけ、力になろうかなって思って。


 体育祭のリレーで、そいつは車いすでリレーに参加することになった。


 んで、俺はそいつにバトンを渡すことになって、どうせやるんなら精一杯頑張ろうって思ってさ。

 運動苦手だったけど、スムーズにバトンを渡せるように何度も練習をした。


 そしたらもう……なんかすげー熱くなってさ。


 本番は皆が注目していた。

 車いすの奴がリレーに出るってんで、地方新聞の記者まで取材にきた。


 物々しい雰囲気のなか、レースがスタート。

 俺の番が回ってきた時は心臓がドキドキのバクバクだった。


 バトンを受け取り、がむしゃらに走った。

 あいつが待つ場所まで全身全霊で力を込めた。


「頼むぞ!」


 俺がバトンを渡すと、アイツは必死に車いすを走らせた。

 時間はかかったけど、最後までちゃんと走り切った。


 ゴールテープを切った時、会場から拍手が起こったけど、なんか違うなって思った。

 あいつは最後まで普通に走っていただけなんだからさ。


 あれから十数年。

 俺はおっさんと呼ばれるくらいの年齢になった。

 今でもクラス仲間で集まって同窓会をしている。


 楽しく酒を飲みかわすこの場に、アイツはいない。

 病気が原因で卒業を待たず、この世を去った。


 みんなあの体育祭の話をする。

 そしてアイツの話をする。


 一緒に卒業したかった。

 酒を飲んで思い出話に花を咲かせたかった。


 でも、それは叶わなかった。


 お前が生きられなかった時間。

 俺に与えられた時間。

 精一杯、生きようと思う。

 一秒たりとも無駄にできない。


 俺さぁ、友達もいないし、いまだに独身だし、生きてて何も良いことがないけれど。

 お前のことを思い出すと強く生きようって思えるんだよ。


 だからさ……そっちで待っていてくれよな。

 必ずバトンを届けるから。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  とても、心を打たれました。 「必ずバトンを届けるから」←最後の一文が特に……(涙)。 [一言] 〝思い出〟は、本当に生きる力になりますよね。
[良い点] これは泣けますね……! 生きているってそれだけで素晴らしい。 私も寿命が尽きるまで一生懸命生きようと思います!
2022/12/30 11:37 退会済み
管理
[一言] 使い古された台詞かも知れませんが、車いすの彼は皆の心の中で生き続けているのだと思いました。 彼が残したインパクトはとても大きいものだったのでしょうね。 最後の一文と運動会の記憶がリンクしてい…
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