なまけもの
昔々、あるところに六十歳手前の男と二十代男が住んでいました。
この村にはこの二人しかいません。
「おい、若いやつ! 俺の分の洗濯もしてこい! 」
さも当たり前かのように強い口調で高齢男は言います。
「嫌だね」
上下関係など関係ないと言わんばかりに高齢男を細い目で睨め付けるかのように若い男は言います。
そうなんです。このように非常に仲が悪いのです。何をするにしても口論になり、挙げ句の果てには取っ組み合いの喧嘩まで発展することもあるのです。
そしてこの2人の共通点は根っからの怠け者ということです。
ですので、山へ食材を探しに行くのも三日に一回、川へ洗濯しに行くのも一ヶ月に一回なのです。
そんなある日、動物のナマケモノの夫婦がこの村にきました。
そして村に住むようになりました。
高齢の男も若い男も警戒していました。なぜなら、この二人は人生で初めてナマケモノを見たのでもしかすると自分たちに危害を加える可能性があるかもしれないと考えていたからです。
その日の夜……
「アー、アァー、クー」
古小屋のドアの音のようなのが聞こえてくるため高齢男が自宅の窓を覗きました。自宅前にナマケモノ夫婦が立っていたのです。高齢男性は恐る恐る玄関ドアのノブに手をかけゆっくり回して少しドアを開けチラ見していました。
するとナマケモノ旦那がすかさずドアの隙間に頭を入れてきたのです。
恐怖のあまり声も出ず、慌てふためきその場で腰を抜かしてしまいました。
これは殺されると高齢男は目を瞑り覚悟しました。
その時、
「アー、アァー、クー」
またあの音が聞こえてきました。
ナマケモノ旦那の方から聞こえてきます。
目を開けると高齢男はナマケモノ旦那が自分に向かって発していることに気がつくのです。
「な、な、なんなんだ」
口を震わせながら言います。
ですが、ナマケモノ旦那は高齢男を見ながらニコニコしています。
そしてまた、 「アー、アァー、クー」と発しながらビニール袋に入った葉っぱと果実を渡してきました。
「な、な、なんなんだ、それは! 」
勇気を振り絞り大きな声で高齢男は言いました。
するとナマケモノ旦那は高齢男が怒っていると勘違いして、黙ってその場にビニール袋を置いてしょんぼり帰って行きました。
高齢男は殺されはしないとホッとし、その場力が抜けて寝てしまいました。
高齢男は十二時間も寝てしまっていました。起きてふと昨日のことを思い出し、もしかしたらあれは引っ越しの挨拶まわりだったのかなと思い始めました。そんなことはあり得ない、あり得る論争を1人でしながら疲れてきたので結果的にあり得ると判断してまた寝ました。
そうなのです。ナマケモノ夫婦が引っ越してきた日に挨拶をしにきただけだったのです。それも、手土産(葉っぱ、果実)を持ってきたのです。これには2人とも驚きました。若い男性のところへも同様に行っていたようです。
一週間もすると人間二人からナマケモノ夫婦に対しての不安や警戒心は無くなっていました。危害も加えてこないし優しい、言語は通じないが非言語(ボディーランゲージ等)なら通じるということ分かり、人間二人はあることを思いつくのです。
それは、ナマケモノ夫婦を利用しようと考えたのです。
人間二人はめんどくさがりやなので、めんどくさいことはナマケモノ夫婦にやってもらおうと企んだのです。
「おーい、川に行って俺らの分も洗濯物やってきてくれないか? 」
洗濯物を使ってゴシゴシするポーズを人間二人でしています。
「アー」
ナマケモノ夫婦は両腕をあげ頭の上で丸をつくりました。
人間二人はニヤニヤが止まらない様子でした。
しかし、その日にナマケモノ夫婦は川から戻ってきませんでした。その日から待っても待ってもずっと帰ってきませんでした。
やっと帰ってきたのが二ヶ月後でした。
「遅すぎる! 」
「時間かけたわりに汚れが全然落ちてないじゃないか! 」
人間二人は猛烈に怒っていました。あまりにも遅すぎるのと仕事ぶり、そしてその服一着しかなかったため外も出られなかったために激怒していたのです。
それに対しナマケモノ夫婦は何度も何度も頭を下げていました。
遅れた理由は言うまでもありません。ナマケモノは人間よりものすごくゆっくり動くためです。洗い方も人間とは違いますし、どこまでが綺麗なのかもそれぞれだからです。
その後も同じようなことが続き人間二人はナマケモノ夫婦を利用することをやめました。
そこから人間たちは、自分でやった方がいいと判断しナマケモノのおかげで怠け者という性格も人間二人の仲も改善されたのでした。
めでたし めでたし。




