アンドロイド
「え?」
シーナに間違えられたこともそうだし、キスされたことにも驚いていた。
シームァとシーナは血縁的には従姉妹くらいの関係だ。似てはいるが、見間違えるほど似ているとは思っていなかった。
「……てことは、ここは魔法使いの国?」
女の子は辺りを見回す。
「あれ? エルフの森だ」
「……あの、なんで?」
シームァは頬を手で押さえていた。笑顔の女の子を見てるとどきどきしてきた。
「シーザーに教えてもらったの。お礼はハグしてほっぺにちゅーするんだって」
女の子は笑顔でそんなことを言った。
その顔がかわいすぎて、シームァは赤くなってしまう。
何気に犬の方はといえば、少女が息を吹き返して嬉しいらしく尻尾をぶんぶん振っていた。
「そう。でも、私、シーナじゃな……」
「ごめん。静かに」
少女は自分の口に人差し指をあてて、喋らないでのジェスチャーをした。
ほんわかにこにこ顔だったのに、神妙な顔つきで辺りの様子を覗っている。
犬は、うーと唸りながら、周囲を威嚇してるようだ。
その時、木の陰から男が現れた。
男というより、それはアンドロイドだった。人間そっくりではあるが無表情で作り物の顔だとすぐわかる。
歩き方もぎこちないし、ゆっくりした足取りで近づいてくる。
だが急にスピードを速め、突進してきた。
少女は素早く、服の袖からナイフのようなものを出し投げつけていた。
ナイフの後ろに細い針金のようなムチのようなものがついていた。ワイヤだ。
ナイフはアンドロイドに刺さり、ワイヤが倒れたアンドロイドの体に巻き付く。
「ここらへんはね、心が壊れちゃったアンドロイドが襲い掛かってくるの」
少女は悲し気に言う。
「わんわんち、シーナを魔法使いの国に送って行って。行けるね」
犬は得意げに尻尾を振る。
「私、シーナじゃ……」
倒れていたアンドロイドが起き上がろうとしていた。
「早く」
少女はシームァをゲートの入り口へと立たせる。