そこは暗闇だった
ここは何処だろうか...
自分は今どうなっているのだろうか
暗い、どこまでも暗いこの場所
だけど不思議と不安はなかった
暖かい深海に身を委ねるように揺蕩っているような感覚だろうか
自分の身体に意識を持っていく
だがそこに自身の身体は存在しなかった
意識だけが存在している
だがそこに焦燥感等は無い、寧ろ納得した
ああ、やっぱりか
自分は死んだのだ
だが成し遂げた
自分は確かにあの怪物を倒したのだ
だが結局自分も力尽きた
仕方ないアイツはそれほどの強敵だった
寧ろ良く倒せたと今考えても思う。
後悔は無い
………なんて事は無い
父上や妹、友人も居た 将来を誓い合った恋人も
だがあの怪物を自分達の集落に向かわせる訳にはいかなかった
あそこで殺らなければ沢山の人が死んでいただろう、仕方ない
自分はこれからどうなるのだろうか
父に聞いたことがある確かこの世には10の世界が存在し、死ぬと他の世界に転生するのだと
つまりここは転生する前の段階の場所なのだろうか?
それとももう既に別の世界に着いていてこれから生まれるのだろうか?
自分は何故意識があるのか?ひとつ心当たりがある、父上が言っていた
「この力は呪いだ、この呪いはお前に何があろうとも解ける事は無いだろう、例え生まれ変わろうともこの呪い、いや力は魂に繋がっている」
そうだ、この力は例え死のうとも薄れる事はないだろう
そうこの 淀み の力は失われていない?
ならば
意識を集中し負の感情を奮い起こす
するとこの暗い場所に更に黒く濁った物が生成される
その黒い物質が生前の自らの肉体を成形していく
黒い髪に黒い瞳やや痩せがたの体型
口が成形されたおかげで声が出せるようになった
「良し、成功だ、水の中のようだが呼吸も出来るし声も出せるのか、とはいえ特にすることはないが」
この暗い水底のような場所で自分はどうすればいいのか
とりあえず上を目指して軽く泳いでみたが特に変わり映えしない光景が続くだけだった
あれからどれだけの月日が経っただろうかずっとこの暗い場所で揺蕩っていたが何も起こらなかった
何もする事がない
仕方ないので自らの内側に意識を向けて生前の記憶でも振り返ってみようか
そう、自分の名前は ディン
門森 ディンだ