8話 どうしてゲームの仕様に詳しいんですか?
この世界の銀貨や金貨の価値
銅貨1枚 = おおむね100円
銀貨1枚 = 銅貨50枚
金貨1枚 = 銀貨50枚
悪意に満ちた顔の剣士が、私たちに言いました。
「なんだ、気づいていたのか? 一体いつからだ?」
バフェットさんは答えます。
「そもそも、最初に会ったときから疑っていたさ。昨日、僕たちが照明装置を起動させたとき、どうして真っ暗な洞窟の奥から出てきたんだい? さすがに怪しいと思ったよ。それで、昨日君の宿で受け付けていた依頼を確認したら案の定だ。採掘の依頼を自分たちだけで独占していたね。後は、採掘の依頼料を吊り上げれば、大儲けって寸法だ」
そうか、だからバフェットさんは、わざわざ冒険者の宿で昼食を……。バフェットさんは、話を続けます。
「それでも採掘に来ていた人たちは、ゴブリンを使って追い払ったか殺害したかのどちらかでしょ。ついでに、採掘に来た人の所持品も奪えるし、儲かる商売だね」
剣士は、私たちに言いました。
「そうだろう。よくできたビジネスプランだろ? さて、改めてどうかな? 俺たちともっと稼がないか? お前らもわかってるんだろ? 稼いでも税金で持っていかれるんだ、こんなクソゲー真面目にやったって無駄なんだよ!」
「よくできたビジネスプラン……か……。」
バフェットさんは、右人差し指で右こめかみを触りながら言いました。
「僕はそう思わない!」
「君たちのやっていることは、下の下だ! もはやビジネスですらない!」
「そうか……残念だ」
剣士は、そう言うと宝石のようなものを取り出します。その宝石は、怪しく光ると周囲に大量のゴブリンが出現します。剣士は悪い顔をしながら叫びました。
「さぁ! どうするよ!! この数のゴブリンは、さすがに倒せないだろ!!」
ゴブリンは、一斉に私たちに襲い掛かってきます。すると、バフェットさんは叫びました。
「ミカ!! 今だ!! 例の薬をゴブリンにかけるんだ!!」
私は、バフェットさんからもらった薬をゴブリンにかけました。やはり、ゴブリンは動かなくなります。そして、それはなぜか1体のゴブリンに薬をかけただけなのに、召喚したゴブリン全員が動けなくなっています。剣士は、その様子を見て焦っています。
「おい! どうした!? 早くあいつらを殺せ!!」
バフェットさんは、言いました。
「無駄だよ。フリーズしているんだから。」
「……は?……フリーズ?」
「アイテムで召喚されたモンスターは、回復させることができない。現実世界では、そうだっただろ? それでも、何らかの方法で無理やり回復させると、バグるんだよ。まさか、現実世界の仕様が、この世界でここまで反映されているとは、予想外だったけどね。」
「どうしてだ!? お前は、3類の転移者なんだろ!? ソロモンをプレイしたことないんだろ!? どうしてそんなに詳しい仕様を知っているんだ!!?」
「どうして? 当然でしょ。だって僕は……」
「ソロモンを運営しているゲーム会社の社長なんだから!!!」
「なっ、なにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
バフェットさんが、社長? どうりで、このゲームについて詳しかったわけです。それに、商売上手なのも納得がいきます。私は、勝ちを確信しました。でも、そう上手くはいかないようです。剣士は、すぐに冷静さを取り戻し、私たちに言いました。
「でも、関係ないな。おい! お前ら!! 出て来いよ!!」
剣士がそう言うと、岩陰から何十人もの冒険者が姿を現します。その数は30は超えています。おそらく、宿の冒険者全員を連れてきたのでしょう。剣士は、ニヤリと笑みを浮かべて言いました。
「奥の手は、とっておくものだろ? じゃ、死んでもらおうか」
この数は……いくら何でも無理です。殺されます。私があきらめようとしたその時でした。バフェットさんが火を付けた何かを投げ始めました。そしてそれは、まもなくして……
ドカーン!!!!!!
大爆発を起こします。冒険者たちは、爆風によって吹き飛ばされていきます。
「ミカ、一緒にこれを投げまくろう!!」
「え? もしかしてこれって……」
「うん! 爆弾だよ!」
デスヨネーーー!!
私たちは、爆弾を投げまくり、冒険者たちを圧倒しました。私たちも黒焦げです。まもなくして、兵隊さんや、採掘場を利用していた町の人たちも集まりました。縄で縛られた剣士は、私たちに言いました。
「爆弾だと……そんなアイテムなかったはずだぞ……」
すると、バフェットさんは言いました。
「君は、見落としをしているよ。ここは、異世界だけど、断じてゲームそのものではない。これは、黒色火薬といって、硝石・木炭・硫黄で作れる簡単な爆薬だ。君たちは、ゲームのルールに囚われすぎたんだ。」
もしかして、硝石ってあの白い石のことだったの? それに、私を温泉に連れて行ったのも、本当は硫黄を採掘するため? この人は、万が一のためにそこまで準備していたようです。
「クソ……」
「そして何より、ゲームの世界だとタカをくくって、ここに住む人たちの人権を無視したお金儲けをした。それは、許されることじゃない。しっかり、反省してこい!!」
「これで、終わったと思うなよ、社長さんよぉ!! 俺にたてついたことを絶対に後悔させてやるからな!!」
彼はそう言い残し、兵士に連れていかれました。商人さんは、約束通り私たちに銀貨を6枚渡してくれました。しかし、商人さんは浮かない顔をしています。そしてしまいには……
「坊主……本当によかったのか? あいつを敵に回して……」
「そうですね。厄介な事になると思います。でもいいんです。それよりも、もう一つのお願い……頼みましたよ」
「ああ……わかった……」
次の日、私たちは町を後にしました。銀貨をもらったおかげで食料にも困りません。私の手元には、銀貨が3枚あります。何に使おうか迷ってしまいます。そもそも、銀貨ってどのくらいの価値なのでしょうか。私は質問してみました。
「ねぇ、社長さん! 銀貨ってどのくらいの価値があるんですか?」
「その社長っていうのやめてくれないかな? そうだね……1枚で銅貨50枚分だって商人さんが言っていたよ。だから1枚5000円くらいの価値はあるんじゃないかな」
「じゃぁ、銀貨6枚って3万円ってことですか?」
「そうだね、高校生が1か月アルバイトして手に入る金額くらいだね」
「それをたった1日でもらえるなんて! 町に帰ったら何を買おうかな~」
「別に自由に使って構わないけど、そんなお金の使い方をしていたらいつまでも貧乏なままだよ」
「え~。それじゃ、バフェットさんはどうするんですか?」
「そうだね……」
バフェットさんは、突然持っていた銀貨と銅貨を私に手渡し言いました。
「ミカに預けるよ」
「え!? 何でですか!?」
「当分は使わないし、盗賊に襲われたときにミカなら守れるでしょ?」
「私は、金庫番ですか!!」
「ごめんごめん。でも信用しているよ」
そんな調子のいいこと言って……ずるいです。バフェットさんは、夕日を眺めながら言いました。
「もう暗くなってきた。今日は、ここで野宿しよう。」
その日の夜、私たちは焚火をしながら保存食の干し肉を味わいます。バフェットさんは、干し肉と一緒にお酒も飲んでいます。
「やっぱり……干し肉には、ワインが合うな!」
彼は、幸せそうにワインを飲んでいます。ちょっとうらやましいです……。でも、今なら話してくれるかもしれません。
「あの……バフェットさん」
「ん? なんだい?」
「バフェットさんって、《ソロモン》の運営をしている会社の社長さんなんですよね?」
「そうだね。正確には、オーナーってだけだけどね。数年前に買収したんだ」
「あの……よかったら聞かせてくれませんか? どうやって、この世界に来たのか、現実世界でのバフェットさんはどんな人だったのか?」
「そうだね……いいよ。せっかくの機会だ。」
バフェットさんは、自分が何者なのかを語り始めました……。
【バフェットさんの経済状況】
1、所持品
・名刺入れと名刺1式・ボールペン1本・冒険者用リュック1個・スマートフォン1台・回復薬1回分・音爆弾2発・ランプ・布袋20枚・火打石1セット・携行用ナイフ1個・保存食3日分
2、損益計算(1話分)
繰越
銅貨15枚
収入
依頼達成 銀貨3枚
支出
保存食代 銀貨1枚
合計
銀貨2枚(10000円分)
銅貨15枚(1500円分)
計 11500円
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