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6話 ゲームのクリア要件が謎じゃないですか?

モンスター図鑑


オオコウモリ

体長50cm程のコウモリ。動物に噛みつき、血液をペロペロ舐める。噛まれる場所によっては、出血多量で死亡する。一般人では確実に勝てないが、全身を鎧でガードすれば割と大丈夫。ただし、そんな手間を考えるなら人を雇った方が安上がり。


ゴブリン

体長1m程の人型モンスター。ある程度知能もあり簡単な武器を扱える。身体能力は一般人より優れている。




 私たちは、商人さんの家で昼食を食べながら、依頼についての話を聞いていました。


「いいか坊主、この近くには、採掘のために掘られた洞窟があるんだが……最近、モンスターが湧き出してきてな。冒険者に依頼するしかなくなっちまったんだ。」


「それで、僕たちに採掘を依頼したいということですか?」


「ああ。だが、できればモンスターが湧き出した原因も突き止めてくれないか?もし、その原因を取り除くことができたのなら、報酬として銀貨6枚を追加しよう」


「わかりました。いいでしょう」


「それじゃ、明日の朝に採掘場まで案内しよう。今日は、うちに泊まってくれ」



 依頼の話を終えた私は、部屋に荷物を置き、窓から外を見回してみました。すると、またバフェットさんが外で何かをやっています。私は、部屋を飛び出しました。バフェットさんは、なにやら金属を加熱していました。すぐ近くには、スライムの体液の入った瓶が置かれています。私は、バフェットさんに質問します。


「あの……何やってるんですか? その加熱しているのは何ですか?」


「ああ、これは銅の破片だよ。商人さんからもらったんだ。」


「で、なにをするつもりですか?」


「前にも言ったでしょ、このスライムの体液はメタノールで出来ている可能性が高いって。せっかくだから本当にメタノールかどうか確かめようと思ってね。」


すると、バフェットさんは、加熱した銅をスライムの体液の中に入れてその匂いを嗅ぎ始めました。


「うん……ホルムアルデヒドのにおいがする……間違いなくメタノールだな」


「ホルムアルデヒド?」


「うん。メタノールに加熱した酸化銅を加えるとホルムアルデヒドって物質が出来るんだ。ホルマリンって聞いたことあるでしょ?それだよ。

あ!そうだミカ。このあたりに出現するモンスターって分かるかい?」


「えっと……たしか《オオコウモリ》ですね。あとは、《ゴブリン》とかですね……」


「なるほど、いかにもRPGってかんじだね。で、ミカは倒せるのかい?」


「はい、たくさんいなければ何とかなると思います。それにしてもいよいよ冒険ですね!! なんか、あっという間にこの世界を攻略できちゃうかも」


「いや、僕はそう思わない」


「どうしてですか?」


「ミカ、現実世界ゲームでのソロモンは、どんな物語だったか覚えているかい?」


「えっと……人間の国と魔物の国が争ってて……魔物の国には72人の悪魔が居るって設定ですよね?」


「簡単に言うとそうだね。それで、どうやったらゲームクリアになると思う?」


「72人の悪魔を全員倒すとかですか?」


「いいや、違うよ。」


「え? じゃぁ何ですか?」


現実世界ゲームでは、まだラスボスが実装されていないんだ。この手のオンラインゲームには、よくあるでしょ?」


「じゃぁ、ゲームクリアできないってことですか!?」


「わからない……。でも、現実世界ゲームでは存在していなかった領主やら銅貨やらが存在するんだ。もしかしたら、そこにヒントがあるのかもしれないね。ま、今は出来ることをやろう。僕は、作るものがあるからしばらく作業しているよ」


「そうですか、お疲れ様です」



 次の日の朝、私たちは商人さんに案内され、近くの採掘場に来ていました。商人さんの話では、モンスターが出現するようになったのは、1か月ほど前のことらしく、出現前は活気にあふれていたそうです。ですが、今は人気ひとけがほとんどありません。入り口は、明かりがなく真っ暗です。商人さんは言いました。


「まずは、このまままっすぐ進むと照明装置を起動させるレバーがある。ひとまずはそこを目指してくれ」


「わかりました。ミカ、行くよ」


バフェットさんは、ランプに火を付け洞窟の奥に向かって歩き始めました。


「あ! 待ってください! 危ないですよ!! ……それにしても、いつの間にランプなんて手に入れたんですか?」


「実は、定期市の時に自分の所持品と物々交換していたんだ。この世界に来るときに、仕事用のカバンを持っていたでしょ? あの中に入ってたメモ帳が交換に使えたんだよ。紙は、この世界では高価だったみたいだからね」


「そうなんですね。それにしても、この採掘場ずいぶんと整備されているみたいですね」


「ああ。領主が整備したらしい。しかも、採掘権さえ持っていれば自由に採掘して良いんだって。」


「でも、それも、みんなの税金で成り立っているんですよね?」


「そうだね。それに、採掘権を得るためにはお金を納める必要があるみたいだしね。」


「やっぱり、アントワーヌ領主ってお金のことしか考えていない悪徳貴族じゃないですか?」


すると、バフェットさんは、私の方を振りむき言いました。


「本当にそう思うのかい?」


「バフェットさんは違うんですか?」


「これだけでは、判断ができない……といったところかな。さて、これがレバーかな?」


 話をしているうちに、照明装置の起動レバーにたどり着きました。バフェットさんがそのレバーを下すと、採掘場内は一気に明るくなりました。それと同時に、天井には無数の黒い影がうごめいています。オオコウモリの大群です。オオコウモリは、明るくなったことに驚いたのでしょうか、私たちに襲い掛かってきます。その数は数百はいるかもしれません。私でも、この数を相手にすることは無理です。


「バフェットさん! 逃げて!!」


すると、バフェットさんは、荷物入れの中から筒状の何かを取り出し、そして火を付け空中に投げました。そして、その筒は……


  ……パァン!!!!!!


凄まじい音を立てて、破裂しました。そしてどういうわけか、オオコウモリは、地面に落下して気絶しています。わけがわかりません。私はバフェットさんに質問しました。


「一体何をしたんですか?」


「ああ、これ? 音爆弾だよ。まさか、こんなに上手くいくとは思わなかったね。メタノールとスカスカ草っていうのあの竹みたいなやつ? ※あれを組み合わせて作ったんだよ。コウモリってのは聴覚を頼りにしている生き物だからね。もしかしたら、音爆弾が効果的なんじゃないかと思ったけど、予想通りだね。」



※音爆弾の作り方


まず竹に空気穴を開けます(この世界に竹は存在しないので、竹にそっくりな形状のスカスカ草を使います。)次に、空気穴から、メタノールを1/3くらい入れます。最後に空気穴に火をつけると……気化したメタノールに引火して筒が破裂します。その際に凄まじい音がします。



私は、緊張がほどけて思わず腰を落としました。そうしているのもつかの間、洞窟奥の方から足音が聞こえます。でも、もう無理です。力が抜けきって動けません。今度こそダメかもしれない! そう思いました。ですが、そこに現れたのは3人組の冒険者でした。冒険者たちは、私たちに声を掛けてきました。


「大丈夫ですか?なんかすごい音がしましたけど……っていうか、これ全部、オオコウモリの死体ですか!?こんな数を、あんたたちは一体!?」


すると、バフェットさんが言いました。


「僕たちも冒険者なんです。鉱石の採掘を依頼されていましてね。」


3人組のうち、剣をもった男が言いました。


「俺たちも採掘の依頼で来ているんですよ。そしたら、急に爆発音がするじゃないですか!? あれをやったのってあんたか?」


「ええ。数が多かったものですから、上級魔法で一掃させてもらいました。驚かせてしまい申し訳ありません」


「そうですか。この奥にはゴブリンも出るって噂です。俺たちは大丈夫でしたけど、気をつけてくださいね」


 そう言い残して、3人組は洞窟の外に去っていきました。その後、私たちは採掘現場で鉱石を掘りまくりました。私は、ひたすら鉱石を取り出し、バフェットさんがひたすら仕分けをしています……ってあれ? なんかおかしくない? なんで私が力仕事しているの!? 私は、バフェットさんに言いました。


「バフェットさん!! おかしくないですか!? なんで私が力仕事してるんですか!!」


すると、バフェットさんは言いました。


「鉱石の仕分けができるなら代るよ?」


「うっ………………それは………………。っていうか、どんな鉱石があるんですか? 魔晶石とかですか!?」


「魔晶石? たしか、魔力が込められている石だっけ? そんなものは、採れないよ。ほらこれ」


バフェットさんは、そう言うと茶色い鉱石を手渡した。


「これは……何ですか?」


「銅だよ。この採掘場では、銅がたくさんとれるみたいだね。この世界では、結構な値段で売れるんじゃないかな」


「商人さんは、これが欲しかったんですね。ところで、そこに積んである白い石は何ですか?」


「ああこれ? これは持ち帰り用だよ」


「持ち帰り?」


「うん、出来れば使いたくはないけどね……」



 私たちは、採掘した銅を入り口で待機している商人さんのところに持っていきました。商人さんは喜びの表情で私たちにいいました。


「すごいな、お前たち!! さて、とりあえずウチの牧場に運んでくれ、重さを測ってそれに応じて報酬を支払おうじゃないか!!」


 私たちは、銅を商人さんの家に運び、報酬をもらいました。2人合わせて採掘した銅は合計で20ポンド(約9kg)報酬は、40枚をもらいました。それを2人で山分けして20枚ずつ。バフェットさんが言うには、2000円程度の価値があるそうです。洞窟の中に居た時間はせいぜい2時間程度なので、時給1000円程度……危険だった割には、大した報酬ではありません。それでも、初めてお金で報酬を受け取った私はウキウキでした。どうしよう、初めてのお給料だし、買い物しちゃおうかな! すると、バフェットさんが提案をしてきます。


「それじゃ、ミカ。ちょっと外食してみないかい? 初めてでしょ? この世界で外食するの?」


 私は、外食という言葉に心を躍らせ、元気よく返事しました。


「はい! 行きましょう!!」


「でも、その前に……」


「……?」




「露天風呂だー!! やったー!!」


 私たちは、町のはずれにある天然温泉に来ていました。バフェットさんが商人さんから場所を聞いていたみたいです。ここは、火山の近くのようで、硫黄のにおいがします。その温泉は、山の中にあり、簡単な仕切りだけがあります。温泉からは、町全体を見渡せることができ、最高の眺めです。なんて開放的なんでしょうか。私たちは、今までの疲れを温泉で癒します。


「あ~~~~~~~」


思わず声が漏れてしまいます。バフェットさんが壁越しに話しかけてきます。


「どうだい? 初めて仕事を獲得して報酬をもらった気分は?」


「はい、最高です。」


「そりゃそうさ、これはただのお金じゃない。人の役に立って得たお金だからね。お金儲けっていうのはね、他人に自分の価値を与えてもらえる対価なんだよ。どうかな、いいものでしょ?」


「はい。お金儲けって、汚いイメージしかなかったですけど、私の仕事で誰かが助かっているんですね。」


「でもね、世の中にはそうじゃないお金儲けをする人たちもいるんだよ。今回みたいね……」


「……今回? 何のことですか?」


「さて、僕はそろそろ上がるよ。この後ご飯食べに行こう」


「はぁ~幸せ……」



【バフェットさんの経済状況】


1、所持品

・名刺入れと名刺1式・ボールペン1本・冒険者用リュック1個・スマートフォン1台・メタノール500mL瓶×3・回復薬3回分・音爆弾2発・ランプ・布袋20枚・火打石1セット・携行用ナイフ1個


2、現金

 銅貨20枚 2000円分


3、損益計算(1話分)

収入

 銅貨20枚(2000円分)

支出

 なし

合計

 銅貨20枚(2000円分)

最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白かった、続きを見たい、露天風呂覗いてただろ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 鉱山というのは、実のところ危険が付きものなんですよね。現実でも鉱毒やら、そうでなくても高温多湿の劣悪な環境です。まあそれでも一攫千金を夢見て人が集まるわけですが。 [一言] 考えてみれば異…
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