40話 最強の冒険者と対峙します
次の日の朝、僕はいつものように目を覚まして、中庭で木刀を振っていた。仕事前に、マリーとの剣術の練習を行うことが日課になっていたのだ。しかし、その日は、いつまで待ってもマリーは来なかった。
しばらく自主トレをしていると、他の使用人が慌てた様子で声をかけてきた。
「バフェット!! 旦那様が呼んでる!! すぐに来てくれ!!!」
「一体何事ですか? こんな朝早くに」
「……マリーがいなくなった!!!!」
僕は、一瞬その場に凍り付いた。そして、気がついたら木刀を投げ捨て、ラボアジエさんの待つ部屋に向かって全力疾走していた。
僕は、なりふり構わず、部屋の扉を勢いよく開けた。
「ラボアジエさん!!!」
部屋の中は、ぐちゃぐちゃに荒れていた。ラボアジエさんは、文字通り頭を抱えて、何も言わずに固まっていた。
「ラボアジエさん!!一体何が起こったのですか!!?」
僕が質問すると、彼はボソボソとした声で言った。
「マリー君が……屋敷を出て行った……。クランの元に向かったそうだ……彼女の残した手紙にそう書いてあった。」
「そんな……どうして?」
「どうしてだと!? 昨日の会話を聞かれていたに決まっているだろ!!! ……すまない、取り乱してしまった。」
「……………………………ラボアジエさん。」
「何かね?」
「……少し休暇を頂けますか?」
「何をする気かね!?」
「決まってます!! マリーを取り返してきます」
「そんなこと、現段階では不可能だろう!! すこし落ち着きたまえ」
「今、僕にはそれなりの資金があります。なんとかこれを使って、クランの配下に交渉してみます」
「待ちたまえ!!」
そう言い残して、僕は最低限の装備を整えてクラン領に旅立った。無謀なのは、わかっている。でも、もともとの原因は僕にある。ここで、何もしないわけにはいかなかった。
屋敷を出て数分後、僕は町の出口にたどり着いた。僕は、遠くにあるクラン領を見つめながら深呼吸した。
「よし……行くか…………」
町の外に足を一歩踏み入れた瞬間、背後から声が聞こえる。
「バフェットさ~ん!!」
「ミカ!? どうしたんだい?」
ミカは、僕が町の外に出るのに気づき走ってこちらに向かってきた。
「バフェットさん!! 朝起きたら、マリーさんからの手紙が宿に届いてて……クランの元に行って話をしてくるって……」
「……そっか、ミカの所にも来てたんだ。それじゃ、もしかして」
「はい、マリーさんを止めに行こうと思ったんです。バフェットさんもそうですか?」
「うん。そうだよ。止めるのは難しくても交渉は出来るかもしれない。今の僕には、資金もあるしクラン領が所持していない商品だって手に入る。その手の交渉は、経営者だったころにさんざんやってきたからね」
「それなら、安心です!! さっそく行きましょう!!!」
僕とミカは、クラン領へと急いだ。その道中、ミカは僕に質問してきた。
「ところで、バフェットさん。この間、グラバーから金貨を大量に奪い取ったんですよね?」
「そうだね、結構派手にやっちゃったから、さすがに目をつけられちゃったね」
「あの……バフェットさん?」
「なんだい?」
「本当に、交渉できるんですか? もう、クランは意地でも、バフェットさんを……」
僕は、ミカの意見を遮るように言った。
「やるしかないんだ!! マリーは、必ず助ける!!!」
「そうですね! すみません。変な事言いました。必ず助け出しましょう!」
その時だった。ミカは何かの気配に気づき私の前に素早く移動した。
「バフェットさん!! 気を付けて!! 敵の気配です!!」
ここは、だだっ広い草原のど真ん中だ。周囲には、僕とミカ以外誰もいない。僕は、敵の気配なんて全く感じ取れなかった。しかし、確かに敵は居たみたいだった。それは、真上から突然降ってきた。
ドシン!!!!!!
地面が大きくくぼみ、辺りには砂煙が立ち込める。その砂煙の中から、一人の男性が姿を現した。端正な顔立ちをしたその男にミカは言った。
「あなたは、何者です?」
その男は、剣を構えながら言った。
「君のようなカワイイ女の子に話しかけられるとは……ブホホ……。今日は、いい日だな~。ブホ……ブホホ……。失礼、自己紹介を忘れていた………小生の名は、《カゲミツ》と申す」
端正な顔立ちに似合わないカゲミツの言動にミカは鳥肌を立てながら言った。
「き……気持ち悪いですぅ~~!! 何なんですか、この人!?」
「そ……そんな顔で、小生を罵倒するなんて……ごちそうさまです!!……ブホホ」
「いやぁぁぁぁ!!!」
ミカは、完全に嫌がっている。僕は、そんなことなどお構いなしに、カゲミツに質問する。
「で、君は、クランに雇われた冒険者なのかい?」
「雇われた? そうではない。 小生はクランと対等に契約をしているのだよ……ブホホ。ところで、おぬしがバフェット殿か?」
「そうだよ。それで、何しに来たの?」
「もちろん、バフェット殿に話があってここまできたわけだが」
「話?」
「バフェット殿を奴隷として連れていくように、依頼されている……ブヒヒ。それで、アントワーヌ領に向かっていたわけだが……ブホホ、まさかこんな近くにいるとは!」
「う~ん……そうだね。ちょっとそれは嫌かな。ひどい目に遭いそうだし。どうかな? 僕と取引しないかい?」
「取引?」
「僕は、この国を豊かにして、貴族も領民もみんながもっといい暮らしが出来るようにしたいんだ。僕のしていることは、それの一部なんだよ。依頼されている金額の倍のお金を支払う。それで見逃してもらえないかな?」
「ほ~う……なるほど、いくらでも金を出すと?」
「まぁ、金額が高額なら、ちょっと待ってもらうけどね」
「なるほどなるほど………………。小生は、バフェット殿が今まで何をやってきたのか、それは聞いた。会社を立ち上げたりしてるそうじゃないか……ブホホ。さすがは、元経営者といったところか。小生も元々、同じ世界から来たので、バフェット殿に力があることはわかってる」
「なんだ、僕のこと知ってるんだ。どうかな、協力してくれたら、この世界の攻略も可能になると思うんだよね」
「……ブホホ。だが断る!!!」
カゲミツは、剣を振り下ろした。僕らは、剣に全く触れていないにも関わらず、風圧だけで吹き飛ばされてしまった。
「バフェットさん!! 後ろ!!!!」
ミカは、そう叫んだ! しかし、それに気づいたときには、僕の右腕には、カゲミツの剣が刺さっていた。僕の背後でカゲミツは、今までよりもずっと低い声で言う。
「確かに、この世界は攻略したい。だけどな、あんたと手を組む気はない。」
「どうして……?」
カゲミツは冷たい声で言った。
「アンタのやり方は、小生にとって都合が悪い。小生は、この世界では最強だ。アンタのようなやり方じゃ、最強になった意味がない。この世界は、このままでいい!!このまま無双させてもらう。」
それは明らかな交渉決裂だった。もうこちらに、彼を取り込む交渉材料はないだろう。僕は、痛みに耐えながら、貫通した剣を引き抜き、カゲミツと距離をとった。
もう……最後の手段を使うしかない………………。
【経営中の会社の資産】
株数:150
株価:153万円
時価総額:5億3050万円
保有資産
カカオ豆
金貨 2122枚(5億3050万円)
【個人の資産】
手持ち資産
小麦粉 6000ポンド
株券 7枚(時価総額1071万円)
所持金
前話での繰り越し
計 539,900円
借金 4,260,000円
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