36話 ちょっと寝不足です
次の日から、私とバフェットはそれぞれ屋敷の仕事をしながら、別行動をとることになりました。私と旦那様は、新しい銅貨を生産する準備を、バフェットとミカさんは……一体何をやっているのでしょうか? 私には、よくわかりません。ともかく、私たちは税金として集めた銅貨を回収し、それを材料に新しい銅貨に作り替える準備を始めました。
「マリー君、銅貨はどのくらい回収できたのかね?」
「回収できたのは、おおよそ20万枚です」
「全体の1/5程度といったところか……。これは、町の住人たちにも、交換を依頼するしかないだろうな。とにかく、それぞれの商人に依頼しよう」
「わかりました。準備します」
ここ数日は、目が回るくらい忙しいです。それこそ、屋敷の仕事がおろそかになりそうなほどに。私は、書類棚から、目当ての書類を取り出そうとしました。そのときです。睡眠不足からか視界が暗くなり始めます。そして、旦那様の声が聞こえます。
「マリー君……大丈夫かね? マリー君……」
私は、意識を失いました。
次に私が目を覚ますと、そこは客室のベットの上でした。体を起こすとどこからか声が聞こえてきました。
「無理をしない方がいい」
声のする方を向くと、そこには心配そうな顔をしている旦那様がいました。
「マリー君、ここ最近まともに睡眠もとれていないのだろう。しばらくは休んだ方がいい」
「旦那様、それはいけません。今は一刻も早く」
「いいんだ! 君の体調の方が最優先だ」
「旦那様……………」
旦那様の様子が、どうやらいつもと違います。なぜでしょう、私はただの使用人なのに………
「旦那様、あなたはどうして私に優しくするのですか?」
「どういうことかね?」
「私は、元々貴族でしたけど、今はただの使用人なんですよ?」
「君が貴族だろうが、使用人だろうが関係ないさ。君が君だから大切なのだ」
「どうして、そう思うのですか?」
「それは………………君が……………いや、なんでもない。忘れてくれ」
旦那様は、何を言おうとしたのでしょうか? でも、これ以上質問しても何も出てこなさそうです。
「ところで、バフェットたちは?」
「うむ、彼らは商人たちに、コーヒー採取のための株券を販売しに行ってるみたいだ。順調に準備を進めているようだね。」
「そうですか……旦那様、こんなことで本当に対処できるのでしょうか?」
「それについてだが、バフェット君から次の指示が来たのだよ」
「バフェットから? 今度は何を」
「うむ、詳細は分からないのだが、この領地の財務管理をしている会計士を増やすことを頼まれたよ」
「一体何をするんでしょうか?」
「その時に詳細を伝えてくれるそうだ。とにかく、マリー君が手伝ってくれたおかげで、銅貨の回収は順調に進んでいる。しばらくは、ゆっくりしたらいい」
「……………わかりました」
私は、そう返事をしましたが、この時の私は今後の不安でいっぱいでした。
数日後、私と旦那様は、数人の会計士を集めてバフェットを呼ぶことにしました。旦那様は、バフェットに言います。
「バフェット君、約束通り、商売や財務に詳しい者たちを集めた。これから何をしようというのかね?」
「では、今後のお話をします。まず、この領地では、銅貨50枚で銀貨1枚、銅貨2500枚で金貨1枚に交換できましたね。これは、アントワーヌ領独自の領令によって定められています。間違いありませんね」
「ああ、間違いない」
「つまり、ニセ銅貨が大量に作られてしまうと、簡単に金貨や銀貨が手に入ってしまい、おかしなことになってしまいます。」
「うむ」
「そこで、それを防ぐために、領令の改定を提案したいと思います」
「では、具体的にどうするのかね?」
「銅貨と銀貨、金貨の交換を金本位制から管理通貨制に変更してもらいます」
「管理通貨制? なんだねそれは?」
「銀貨、金貨の交換レートをその時々に応じて、逐一変更してもらいます」
「では、新しく会計士を雇ってほしいと言ったのは……」
「ええ。そのレートを決めるために雇ってもらうわけです」
「しかし……交換レートを定めると言っても……どのようにそれを定めるのかね?」
「簡単な理屈で言えば、例えば銅貨の流通量が2倍に増えたなら、交換レートを2倍にすればいいんです」
「流通量は、どうやって調べるのかね?」
「この領地では、幸いなことに、物品税や販売税が存在しています。銅貨の流通量が増えると、意味もなくお金が増えているわけですから、この税収入が多くなります。その増加分でざっくり流通量を計算できると思います」
「そうか……わかった。ところで、増え続けているニセ銅貨についてはどうするのだね?」
「それは、簡単です。僕が買い取ります」
「なんだと!? それでは、君が損をするだけではないのかね?」
「ところがそうではありません。これは、そのうち分かると思います。それよりも、偽物の銅貨が出回りつつあることは、町の人たちには秘密にしてくださいね。」
「わかった。ともかく、その件は君に任せよう。私たちは、銅貨の領令の改定と、銅貨の回収を行えばよいのだな?」
「ええ……引き続きよろしくお願いします」
それから、数日後、領令の改定が行われました。その一大ニュースからわずか数日で、銅貨の流通量が一気に増え始めました。違法ギルドが、ニセ銅貨を流出させていることは明らかでした。そして、それに伴って、銀貨1枚の交換レートが銅貨50枚から100枚に、しまいには200枚になってしまいました。たった数日間で銅貨の価値が1/4にまで下落してしまったのです。私は、バフェットに質問します。
「バフェット、銅貨の価値が1/4にまで低下しましたね」
「うん、すごい下落してるね」
「ですが、思ったより町が混乱していないです。いったいどうしてですか?」
「だから、言ったじゃないか。あいつらのやってることは、浅はかだって」
「どうして、ここまで影響が小さいのですか?」
「これが管理通貨制にした目的だよ」
「というと?」
「このまま、交換レートを変更しなかったら、違法ギルドに大量の金貨と銀貨が流出していただろうね。それを、銅貨の価値を下げることで防いだんだ。」
そんな会話をしていると、一人の使用人が私たちの元にやってきました。
「マリーさん。お客様がいらしてます」
「そうですか。どなたですか?」
「ミカさんです」
「ミカさんですか? そう言えばここ最近会ってなかったですね」
すると、バフェットが言いました。
「おっ! ってことは戻ってきたってことだね。ミカは屋敷の外にいるのかな?」
「ええ。あなたを待っていますよ」
「わかった。ありがとう」
バフェットはそう言って、屋敷の外に走って向かいました。私も、彼の後を追いかけるのでした。外には、複数のガーゴイルと荷台が並んでいます。これは、もしかして……
ミカさんは私たちを見つけると、走って寄ってきます。
「バフェットさ~~ん!! マリーさ~~ん!! 帰ってきましたよ~~!!」
「おかえりミカ、案外早かったね」
「やっぱり、ガーゴイルは早かったです!!」
「バフェットもしかして」
「うん。ミカに探索に行ってもらってたんだ。それで、ミカ、どうだった?」
「ばっちりです!!」
ミカさんはまぶしい笑顔で言いました。
「それからバフェットさん。こんなものも見つけました!!」
ミカさんは、大きな木の実をバフェットに見せました。すると、バフェットは目を丸くしながら言いました。
「ミカ! よくこれを見つけたね!! これさえあれば……」
ミカさんの持ってきた木の実は一体何なのでしょうか?
【現在経営中の会社の資産】
株数:150
株価:金貨1枚(25万円)
時価総額:3750万円
保有資産
コーヒー豆 800ポンド
金貨 30枚
【個人の資産】
手持ち資産
小麦粉 6000ポンド
株券 7枚(時価総額175万円)
所持金
前話での繰り越し
2,289,900円
株券購入
1,750,000円
計 539,900円
借金 4,260,000円
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった、続きを見たい、なんか金額すげぇんだけど」
と思った方は『いいね』ボタンや
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません。大変励みになります。
オレンジ色の《ブックマーク追加》を押していただけると本当にうれしいです。
よろしくお願いいたします。




